【完結・番外編】娼館育ちのヴィオレッタは、淫らな魔術師様のお気に入り

さわらにたの

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「おいおい。こりゃまたひでぇ顔」
「ジャン……? ちょっと、魔力で勝手に開けないで」
「はいはいっと。……俺でごめんな、ヴィオ。ニコラスさんじゃなくて」

 ニヤリと笑って、いつも通り軽口をたたくジャンシャール。
 普段無造作に流されている長い銀髪は、今日はきっちりと結って背中で編み込まれていた。

「そんなこと言ってないじゃない」
「目がそう言ってるぜ? それに、受付嬢がそんなゲッソリ顔じゃ、来た客全員逃げちまうぞ?」
「放っておいて。まだ開店前、部外者は立ち入り禁止よ。出て行って」
「家族だろ、身内だ。すぐ行くから、まぁ付き合えよ」

 そう言って、ジャンシャールはカウンターに頬杖をついた。

「……ジャン、今日はなんだかきっちりしてるわね」
「誰かさんのせいで、堅苦しい国家魔術師会議に出ずっぱりだったからな」
「会議……?」

 ジャンシャールはヴィオレッタの言葉に口の端を上げた。

「ニコラスさんだよ。中央で大変なことになっててな……」
「ニコ様に何かあったの!?」
「そんな顔すんなよ、大丈夫だって。別に死ぬとかそういうことじゃねえから。うまくいけば、ずっとゴズに残れそうだぜ?」
「残る?」

 その言葉に、ヴィオレッタの胸が小さく跳ねた。

「……でも、公王様から親書がきてたんじゃないの? 中央に戻れって……」
「ああ。でもニコラスさん、親書突き返したんだよ。中央に帰りません、って」
「帰りませんって……そんな……だ、大丈夫なの……?」
「大丈夫なわけねぇだろ」

 口ではそう言いながら、ジャンシャールは心底楽しそうに笑っていた。
 
「正直、中央も俺たちもニコラスさんがあんな返事するとは思ってなかったからな。発狂してる貴族院のジジイどもは見ものだったぜ。んで中央では、国家魔術師の代表呼び出して、会議、会議、また会議ってワケ」

 ジャンシャールの話によると、ニコラスはゴズ周辺の魔物の凶暴性、そして自分の赴任してからの戦績結果をまとめ――要するに「自分以外にこんな危険な場所は守れないし、ゴズを守らないと中央公都の皆さんの生活も大変なことになってしまうのでずっとここにいます」という主張を、公王、そして中央の国家魔術師、さらに貴族院のお偉いさんたちへと突きつけたらしい。

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