【完結】明日結婚式なのですが、新郎のアレの様子がおかしいようです。

さわらにたの

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 いわゆる「股間の剣」をそそり立たせているカーライルを見て唖然としたイヴリアだったが、彼の不安げでありながらもごくごく真面目な様子に「何か理由があるんだわ」と察する。だてに20年来の幼馴染ではないのだ。
 夜更けとはいえ、さすがに父親もまだ起きているかもしれない。実家の玄関から”こんな状態”の彼を招くのもはばかられて、イヴリアはそっと窓を開いて手を差し伸べると、カーライルをこっそり部屋へと招き入れた。

 パチリ、と天井のランプをつける。
 果たして見間違いではなかった。男の中でも長身のカーライル、学者にしてはがっしりとしたその均整の取れた体躯の下――その股間は、勢いよくそそり勃って寝間着のガウンを押し上げ、存在を主張している。

「ええと、ライル……椅子、座る?」
「いや、いい。その………刺激、したくないんだ」
「え、ええ……わかったわ。そう……そうね……?」

 真面目な顔でそう首を振るカーライルに頷いて、イヴリアはとりあえず部屋の隅にある寝台に腰かけた。しかし寝台に座ると、ちょうど立っているカーライルの勃起した陰茎と目が合ってしまう位置になり、なんだか気恥ずかしくて視線を逸らす。

 医術士として隣町の病院で働いているイヴリアは、もちろん男女の営みについて、性的な知識の他に生物学的な視点からの知識も備えている。それに、もう子どもではない。この”ブツ”がどうすればこういう状態になるのかも、もちろん知っていた。
 それでも、さすがに明日花婿となる恋人・カーライルの奇行ともいえる行動の理由には困惑が隠せない。

「それで、その、……”ソレ”は、いったいどうしたの?」

 戸惑うイヴリアの言葉に深くため息を吐き、変わらず真剣な顔でカーライルは言った。

「セシルに”イタズラ”されたんだ。出会いがしらに術をかけられて、それで……このザマだ。ずっと、その、……大きくなって、戻らなくて……。おおかた結婚式を台無しにしたいんだろう……ったく、アイツ!」
  
 セシルとは、カーライルの相棒妖精バディの名だ。キラキラとした金色の羽に、淡い桃色のふわふわとした長い巻き髪がとてもチャーミングな愛らしい女妖精。少しツンケンとした話し方が特徴的な、小生意気でおしゃま、いかにも妖精然とした性格をしている。

『あらあ、イヴ。そのリボン、形は及第点ね。でもあんたの綺麗な髪色じゃ黄色はくすむでしょ? おすすめはこのラベンダー色ね。ほら、このリボンあげるわ、付けなさいよ!』
『その花柄のワンピース、悪くないわね。ああ、でもウエストがマークされてないじゃない! あんた腰の括れも華奢で魅力なんだから、そこを強調しないなんてお馬鹿さんね! ほら、この白いベルトとか合うんじゃないの?』
  
 セシルとの会話は万事この調子だった。イヴリアに対しては褒めているのかけなしているのかわからないような態度をとってくるセシルだけれど、イヴリアは彼女のことが嫌いではなかった。幼いころから母がいなかったせいか、ツンケンしながらも自分を構ってくれるセシルの存在がどこか姉のようで嬉しかったのだ。
 
 でも、こんなイタズラは許せない。
 相棒妖精の多分に漏れず、セシルはカーライルのことが大好きだ。それは知っていたけれど――それでもまさか、自分たちの結婚式前夜にこんなことをしてくるなんて……!

「大きくなって、戻らないって……どういうことなの……?」
「言葉通りだよ、その……君は医術士だからわかると思うけどさ、男のチン……じゃなかった、ええーっと、ココって、その、本当は、こんなにずっと大きくて硬いわけじゃない、だろ? だからその、チン、……ええと、このブツを、自分で静めようとして、擦ったりとかしたんだけど……ダメで。全然その……ええと、アレが、その、白いヤツが出なくて。それで……ずっと、何とかしようとはしてみたんだけど……うまく出せないままで、むしろ大きく、なってきて」
 
 恋人とはいえ、まだカーライルとイヴリアはこのヴァルヴァレリアの掟にのっとり、清い関係だ。手をつないだり、そっと木陰で抱きしめあったことはあっても、キスひとつしたことがない。
 そんな相手にさすがに照れているんだろう、カーライルの言葉はしどろもどろで要領を得なかった。
 けれど、医術士である自分に遠慮なんかしなくてもいいのに、とイヴリアは藍色の理知的な眼差しでそんなカーライルを見つめる。男の陰茎など治療でさんざん見ているし、医術士になる前の実習でも人体の範囲は必須履修項目だ。恥ずかしくなどない、個人的にカーライルの陰茎には興味がある――むしろ興味しかないけれど。

「……つまり、ライルは陰茎に勃起状態を持続する”妖精のイタズラ”をセシルにかけられてしまって、困っているのね。現状としては、いくら自慰をしようとなかなか絶頂に至れなくて射精できず、苦しいし、その勃起状態で興奮が続いているということ?」
「……あ。あぁ……う、うん……、そ、そう、なんだ、……ウッ!?」
「ライル?」
「ご、ごめん……その、君の口から、そういう卑猥な言葉を聞くだけで、その、大きく……なって」
「…………」
 
 別に卑猥な言葉を言っているつもりはないのだけれど、と思いながら、苦しそうなカーライルに追い打ちをかけるのも可哀想で、イヴリアは口をつぐんだ。
 本当に、とんでもない”イタズラ”だ。

 カーライルの陰茎は相変わらずビンビンの臨戦態勢である。説明するために寝台に座るイヴリアの前でローブの合わせを開き、寝間着越しに勃起しているソレを見せているカーライル。
 布越しでもわかるほどにしっかりと聳えているソレは、華奢なイヴリアの手首から肘ほどはありそうなシルエットだ。むろん彼は見せつける気はないのだろうけれど――第三者がこの場面だけみたら、ただの変態だわ……と寝台に座って彼の「股間の剣」を眺めながらイヴリアは思った。

「……例えば、何か違うことを考えて気を紛らわせるとか?」
「それはもうやったんだ。筋トレもしたし、水も被ったし、歌を歌ったり、足踏みしてみたり、……その、思いつくことは試してみたんだけど」
「ええと、……その、大丈夫?」

 はぁ、はぁ、とかすかに息が上がり、頬が紅潮してきたカーライルにイヴリアは首をかしげる。こてん、と小首をかしげれば、さらりと艶やかな薄水色の髪が揺れる。カーテン越しの月光がその美しい白肌を照らしたその瞬間、ウッ、とカーライルは胸元を抑えた。

「正直、大丈夫じゃない……それに、この部屋にきてから、もっとヤバい……」
「ど、どうして?」
「わからない、でも……イヴのその無防備な格好とか、石鹸の匂いとか、揺れる髪とか見てたら、その、すごく痛いし、苦しいし、ヤバい……ホント、痛くて……いい匂い、かわい、ヤバイ、ヤバ、ウッ……」

 だんだん語彙力を失い、辛そうな顔になっていくカーライル。
 何を言っているのかよくわからないけれど、常に快活で朗らかで元気な彼のこんなに弱っている姿を見るのは初めてかもしれないわ、とイヴリアは眉根を寄せて腕を組んだ。腕を組んだせいで、ぎゅ、とイヴリアの胸元の柔らかな膨らみが寄せられて白い簡素な寝間着越しに山を形作り、カーライルはまた眉根を寄せて呻く。
 
「うぁ……ヤバっ」
「よくわからないけれど痛そうね……?」
「正直、い、痛い……爆発する……いや、爆発してくれたほうがいい……っ」
「着替えも大変そうね。ライル、明日はタキシードでしょう?」
「……! いや、イヴ、着替えとかそういうことじゃなくてさ……冷静に考えてみろよ。結婚式の間、ずっと股間をおったたせてる新郎…………ヤバくないか!?」
 
 カーライルの言葉に、イヴリアもハッとする。
 確かに、そうかもしれない。
 しかもこの大きさなら、スラックス越しにハッキリとシルエットが見えてしまうだろう。いや、そもそもファスナーが上がらず股間の窓から「こんにちは」してしまう。
 わたしたちの結婚式は、どうなるの……??
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