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「数時間の前倒しは、ゆるされるんじゃないかしら……?」
「え?」
ぽつりと静かな部屋に、イヴリアの冷静な声が響いた。
「さっき……その、私の手が触れただけで射精できたじゃない? そもそも勃起は射精すれば収まるのだから、わたしが手を貸して射精に至れるのなら、わたしがいっぱい手伝えば、どう、かしら?」
そう一息に言ってのけるイヴリアの頬も、ほんのり赤い。そのままカーライルの股間に再び手を伸ばすイヴリアに、カーライルはぶんぶんと首を振った。
「ダメだよ、イヴ! 結婚前の性的交渉は禁じられてるだろ?」
「でも、わたしたち、今日の数時間後には夫婦よ? 数時間程度なんて、この先の夫婦生活を考えれば誤差だわ、許されるべきよ」
「そう、……かな?」
「結婚式はもう今日よ、厳密には同日なのだから大丈夫に決まってるわ。それにわたしは医術士、これは治療の一種だわ。ねえ、そう思わない?」
「治療……」
ここまできて、引けるわけがない。ようやく解決の糸口をみつけたのだ。
自分ってあんがい強引でたくましいのね、と思いながら、イヴリアはそう無茶な理論をまくし立てると、床にすわるカーライルににじり寄った。
愛らしい小首をかしげ、その藍色の瞳を瞬かせる。
そして一度、コクリと頷いた。
「わたしに任せて、ライル」
****
天井の灯りを消して、ふたりで寝台に上がる。
ひとり用の小さな寝台は、ふたり分の重みに抗議するようにギシリと薄闇に鈍い音を響かせた。
月光だけが射しこむ、静かな部屋。心臓の音が互いに伝わってきそうなほどの緊張感だ。
羽織っていた深緑のローブを脱ぎ、紺のガウンだけになったカーライルが寝台の上で仰向けに寝転ぶ。少しだけ緊張したようなその表情、けれど陽色の瞳の奥には炎のような欲が灯っていた。
(ライル……頬が赤いわ。でも――わたしだって……)
ドクン、とイヴリアの心臓が一度脈打つ。体全体が熱くなってくるのが自分でもわかって、イヴリアは唇を少しだけ噛みしめると目を伏せた。
ライルが、好き。そう強く思う。昔から、大好きでたまらなかった。ううん、好きだと自覚するよりも先に、ずっと一緒にいる相手だと思っていたのよね、とイヴリアは思う。
本当に昔から、ずっと、ずっと、他の男なんて好きになるどころか興味をもったことだって一度もない。今までのイヴリアの人生は、すべて彼と共にあった。
「イヴ」と自分を呼ぶ優しい声。癖のある鳶色の髪。この陽色の瞳が、ずっと隣で自分を見てくれていたのを知っている。だってわたしの藍色も、ずっと彼を見続けていたんだから。
「……脱がせるわ……、っ!」
「え?」
ぽつりと静かな部屋に、イヴリアの冷静な声が響いた。
「さっき……その、私の手が触れただけで射精できたじゃない? そもそも勃起は射精すれば収まるのだから、わたしが手を貸して射精に至れるのなら、わたしがいっぱい手伝えば、どう、かしら?」
そう一息に言ってのけるイヴリアの頬も、ほんのり赤い。そのままカーライルの股間に再び手を伸ばすイヴリアに、カーライルはぶんぶんと首を振った。
「ダメだよ、イヴ! 結婚前の性的交渉は禁じられてるだろ?」
「でも、わたしたち、今日の数時間後には夫婦よ? 数時間程度なんて、この先の夫婦生活を考えれば誤差だわ、許されるべきよ」
「そう、……かな?」
「結婚式はもう今日よ、厳密には同日なのだから大丈夫に決まってるわ。それにわたしは医術士、これは治療の一種だわ。ねえ、そう思わない?」
「治療……」
ここまできて、引けるわけがない。ようやく解決の糸口をみつけたのだ。
自分ってあんがい強引でたくましいのね、と思いながら、イヴリアはそう無茶な理論をまくし立てると、床にすわるカーライルににじり寄った。
愛らしい小首をかしげ、その藍色の瞳を瞬かせる。
そして一度、コクリと頷いた。
「わたしに任せて、ライル」
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天井の灯りを消して、ふたりで寝台に上がる。
ひとり用の小さな寝台は、ふたり分の重みに抗議するようにギシリと薄闇に鈍い音を響かせた。
月光だけが射しこむ、静かな部屋。心臓の音が互いに伝わってきそうなほどの緊張感だ。
羽織っていた深緑のローブを脱ぎ、紺のガウンだけになったカーライルが寝台の上で仰向けに寝転ぶ。少しだけ緊張したようなその表情、けれど陽色の瞳の奥には炎のような欲が灯っていた。
(ライル……頬が赤いわ。でも――わたしだって……)
ドクン、とイヴリアの心臓が一度脈打つ。体全体が熱くなってくるのが自分でもわかって、イヴリアは唇を少しだけ噛みしめると目を伏せた。
ライルが、好き。そう強く思う。昔から、大好きでたまらなかった。ううん、好きだと自覚するよりも先に、ずっと一緒にいる相手だと思っていたのよね、とイヴリアは思う。
本当に昔から、ずっと、ずっと、他の男なんて好きになるどころか興味をもったことだって一度もない。今までのイヴリアの人生は、すべて彼と共にあった。
「イヴ」と自分を呼ぶ優しい声。癖のある鳶色の髪。この陽色の瞳が、ずっと隣で自分を見てくれていたのを知っている。だってわたしの藍色も、ずっと彼を見続けていたんだから。
「……脱がせるわ……、っ!」
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