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第二章 言葉が届かない距離
微笑むたび、わたしは消えてゆく
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ユウは、よく笑うようになった。
ナツミがいたころよりも、
ずっとやわらかく、
ずっと自然に。
たぶん、あの人なりに、
なにかを受け入れたのだと思う。
過ぎたことを、
変えられないことを、
心のどこかに置いて、
それでも前に進もうとしているのだろう。
わたしは、
その笑顔を見るたびに、
少しずつ、消えていく気がする。
それは嫉妬でも、
悲しみでもない。
ただ、
その笑顔の中に、
わたしがいない気がするだけ。
ユウはわたしを見て笑うけれど、
その目の奥にあるものが、
どこか、別の景色を映しているように思えてしまう。
わたしがそう感じるのは、
きっと、わたしのせいだ。
信じきれないわたし。
疑ってしまうわたし。
でも――
そうなるように、
仕組まれてしまった気がするのだ。
あのとき、
選ばれなかったこと。
わたしが、
「あなたを選んでくれた人ではなかった」こと。
いま、
傍にいるのはわたしなのに。
何も変えられないまま、
わたしはただ、
そこにいるだけ。
だから、
微笑むユウを見るたびに、
わたしは、
すこしずつ、音もなく消えてゆく。
まるで、
あの笑顔に耐えきれなかった空気が、
わたしの姿を、
薄くしていくみたいに。
ナツミがいたころよりも、
ずっとやわらかく、
ずっと自然に。
たぶん、あの人なりに、
なにかを受け入れたのだと思う。
過ぎたことを、
変えられないことを、
心のどこかに置いて、
それでも前に進もうとしているのだろう。
わたしは、
その笑顔を見るたびに、
少しずつ、消えていく気がする。
それは嫉妬でも、
悲しみでもない。
ただ、
その笑顔の中に、
わたしがいない気がするだけ。
ユウはわたしを見て笑うけれど、
その目の奥にあるものが、
どこか、別の景色を映しているように思えてしまう。
わたしがそう感じるのは、
きっと、わたしのせいだ。
信じきれないわたし。
疑ってしまうわたし。
でも――
そうなるように、
仕組まれてしまった気がするのだ。
あのとき、
選ばれなかったこと。
わたしが、
「あなたを選んでくれた人ではなかった」こと。
いま、
傍にいるのはわたしなのに。
何も変えられないまま、
わたしはただ、
そこにいるだけ。
だから、
微笑むユウを見るたびに、
わたしは、
すこしずつ、音もなく消えてゆく。
まるで、
あの笑顔に耐えきれなかった空気が、
わたしの姿を、
薄くしていくみたいに。
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