【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca

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第11話:なんで王子がわたしなんかに……

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「プリンス先輩……プリンス王子?」
「プリンスと呼んでほしい。
 王子をつけると意味がかぶってしまうから」
「あ、はい」

 名前に自覚はあるらしい。
 そうなると俄然、王となったときにどうするのかが気になるけど……。

「ちなみに即位したらキングの名を継ぐ。
 そういう慣わしだ。
 唯一無二の名前であり、そして立場を表している」
「そうなんですか」

 説明してくれてありがとうございます。
 おかげで会話に集中できそう。

「えっと、プリンスのスキルは壁抜けですか?
 便利そうですね」
「いいや、そんなちんけなものではない。
 私の《ラッキー・スター》は、確率操作だ」
「確率……?」

 首をひねるわたしに、プリンスは「こういうこと」と言って懐から金貨を取り出し、十枚くらいを床に落とした。
 チャリンチャリンとうるさい音が鳴り響くかと思いきや、そんなことはまるでない。

「……は?」

 見ると、金貨はすべて床に立っていた。
 表でも裏でもなく、縦だ。

「このように私は、起こる可能性がわずかでもあることなら、起こすことができる。
 そらっ」

 金貨をまとめて蹴ると、それらは壁のあちこちを跳ね返って、再びプリンスの手のひらに戻ってきた。
 床に金貨を落とせば、千回に一回くらいはそのまま立つことがあるかもしれない。
 床の金貨を蹴れば、一万回に一回くらいは偶然跳ね返って手元に戻るかもしれない。

 それを彼は、すべての金貨で意図的にやった。
 確率を操ったのだ。

「すごいスキル……。
 あれ? でも、壁抜けは?
 起こらないことを起こしていませんか?」
「いいや、起こる。
 壁も人間もごく小さい粒子の集まりだから、たまたまお互いがお互いの隙間を通ったというだけなんだ。
 トンネル効果という物理現象だ」
「はあ」

 はあ、としか言いようがない。
 そんな理解を超えた低確率なことまで起こせるなら、もはや起こせないことなどひとつもなさそう。
 絶体絶命のピンチも必ず切り抜けられるどころか、ピンチすら訪れない人生。
 戦いに勝つまえに、戦わずして勝つ手段をきっと掴みとってしまうだろう。

 強いとかじゃなくて、すごい。
 偉大と言ってもいい。
 あなたはもう、存在そのものが国の宝だ。
 よっ、プリンス!

「そのきらきらも、レアな物理現象なんですね。
 きれいです」
「いや、これはただ私が美しいだけだ。
 美しすぎて輝いて見えるということだね」

 そう言って笑う彼は、新聞で見るよりも遥かにイケメンだ。
 モブのわたしには眩しすぎる。
 というか、近くに来られるだけで全校生徒に注目されるから、できれば早めに立ち去ってほしい。

 が、彼はさらにわたしに近づいてきた。
 そして、魔法障壁のなかに手を入れる。

「え、これも突破するんですか?」
「できないことなどひとつもない。
 私に対しては、あらゆる防御は無意味となる。
 つまり――」
「ふあ?」

 彼は両手で、わたしの手を包み込んで言う。

「私たちを遮るものは、なにもない。
 私は今度、将来の結婚相手を決める婚約パーティを開催する。
 モブリン、きみも出席してくれるね?
 もちろん筆頭候補だ」
「どどどどど」

 どうしてわたしが候補なわけ?
 しかも筆頭。
 ただのモブだって言っているのに!
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