【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca

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第17話:わたしとわたし

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「アタシの《クリエイト》で、モブリンをもうひとり創る。
 そいつを婚約パーティに送り出す。
 今いるモブリンは指名されない。
 はい勝利!」

 ターコは勢いよくまくし立てて、みんなから距離を取る。
 ゼファーが入っているダルマの横に立ち、みずからもうひとつのダルマとなった。

「ちょっと、ちょっと!」

 わたしが慌てて駆け寄ると、誰かがスキルでターコダルマの頭の部分を消してくれた。
 消滅したのはダルマだけで、中のターコはバツが悪そうに笑っている。

「へへへ……」
「もうっ、なに勝手にひとりで却下してるの。
 自信はあったんでしょう?
 ちゃんと詳しく説明してくれないとわからないわ」
「しゃべってるうちに、『これはなしだ』と思えてきて。
 だって、モブリンの代わりにモブリンを差し出すんだぜ?
 なにも解決していないとも言える」

 うーん?
 わたしの代わりの、わたし。
 ようするに、偽者のわたしを身代わりにするということだと思うけど。

「偽者と婚約したとわかったら、プリンスが怒るってこと?
 そのあと結局、本物のわたしと婚約しなおすから意味がないのかしら」
「あー、いや、違うんだ。
 アタシのスキルは偽者を創るわけじゃない。
 本当の、本物のモブリンをもうひとり創り出すことができる。
 今のモブリンとの差は一切ない」
「はい?」

 本物のわたしがもうひとり?

「そんなの神様だわ」
「ああ、アタシの《クリエイト》は神スキルだ。
 無から生き物を創り出すことができる。
 もうひとりのモブリンを創ったら、そいつはあんたと同じように感情も記憶も思考もあるから、プリンスにとってはどっちと婚約しても同じこと。
 そしてそれは、婚約するほうのモブリンにとっても、同じ。
 勝ち確とも言えるが、負け確とも言える。
 だから意味なし」
「うーん……」

 それはたしかに解決策ではない気がする。
 そもそもわたしがふたりに増えるって、戸籍とかで困りそうだし。

「ターコのスキルって、創ったものを消すことはできないんだよね?」
「ああ、そうだよ。
 だからいつも、消すスキルを持ったやつと一緒にいるときだけ使ってる。
 さっきの金属バットも消してもらったし。
 生き物は……基本的には創らないようにしているね」
「だったら、こんな作戦は絶対にやらない。
 プリンスと婚約したい気持ちを持ったわたしを創ったらどうかな、と思ったけど、それもなしね」

 わたしの複製ではなく、アレンジを加えるという案だ。
 自分の脳を改造するみたいで、口に出すだけでも怖気が走った。

「あいよ、了解。
 まあそもそも、アタシの能力って元と違うものは創れないんだ。
 神スキルって言ったが、あれは嘘。
 オリジナルを生みだせるっていうのは本当にすごいことだよ。
 だからこそ、アタシはデザイナーに憧れてるんだけどね」

 そう言って青髪をぽりぽり掻いているターコは、イケメン女子なのにやたらと可愛い。
 消すスキルで彼女をサポートしているクラスメイトは、きっとターコ萌えの女子だと思う。

「ふっ……万策尽きた、か」

 ダルマを消してもらったゼファーが、なぜかひとりで格好つけている。
 いくら銀髪ロン毛が風になびいていても、もう三枚目キャラでいくしかないだろうに。

 と、そのとき。

「おいレッド、てめえいつになったら職員室に来るんだ!
 オレのスキルで命令されないと、こんなことすらできないのか?」

 ヤクザ……いや、わたしたちの担任教師が教室に入ってきた。
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