【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca

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第18話:怒りのコトダマ

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「やっべ、ヤクザのカチ込みだ。
 み、みんな応戦しろ!」
「てめえはまず『黙れ』。
 そして地べたに『正座しろ』。」
「う、ぐ」

 空中にいたレッドが突然落下し、教室の床にぴしっと正座する。
 口も利けなくなっているようだ。

 教師はそんな彼にゆっくりと歩み寄り、不敵に笑って言う。

「スキルの使用も『禁止』だ。
 『泣くな』、ただひたすら『反省しろ』。
 そして今後、オレへの絶対服従を――」
「待って待って、先生待って!」
「……あぁ?」

 大慌てで止めたわたしを、教師はじろりと見た。
 こ、こわ……。
 死ねって言われたらスキルがなくても死んじゃいそう。

 ううん、でも、レッドを助けないと。

「先生ごめんなさい。
 レッドを引き留めたのはわたしなんです。
 わたしがプリンスと婚約しないで済む方法をみんなで考えていて……。
 だからレッドに罰を与えないでください」
「ほう、代わりにおまえが受けると。
 オレは女子供が相手でも、容赦はしないんだがなあ。
 どんな不祥事でも揉み消せて楽しいから、教師をやってるんだ」
「うう……」

 ひるんだわたしと教師のあいだに、マッスリーヌが無言で立つ。
 守ってくれるのは嬉しいけど、どう考えても彼女のスキルでは彼には敵わない。

「ふん、メイドふぜいが俺に盾つくか。
 しょうもない。
 まずはおまえが――」

 教師の言葉は、そこまでしか聞こえなかった。
 彼の頭の周囲に、ぐるぐると竜巻が発生している。

「ふっ、発声がトリガーなら妨害はたやすい。
 俺の《ウィンド》を食らって、はたして声がここまで届くかな?」
「ゼファー!」

 彼がスキルで局所的に気候を操って、教師の声が聞こえないようにしてくれたのだ。
 三枚目とか言っちゃってごめん。
 やっぱりあんたも主人公クラスのスキル持ちだわ。

「……ただ、教師に危害を加えると進学に影響が出そうで。
 誰かこのあと、どうやって場を収めるか考えてくれないかな」

 ああ、結局ゼファーはゼファーだった。
 わたしもみんなもずっこけた。

 と、ターコがそこで前に出る。

「しゃーねえな。
 アタシがどうにかしてやるよ。
 ほら、これでどうだ」

 言って、教師の周りにギャングのボスのような調度品を出した。
 立派なソファに豪華なテーブル、そこには葉巻やフルーツの盛り合わせ、なにやら高そうなお酒も置いてある。
 本当ならペルシャ猫や美女も出しておきたいところだろう。

 ゼファーが竜巻を消すと、リリィがさっと近寄り、教師をソファに座らせてお酌をする。

「コトダマ先生、ささ、おひとつどうぞ。
 みんなからのせめてものお詫びです」
「……ああ」

 教師はコトダマという名前らしい。
 リリィから勧められた酒を一気にあおると、ぷはっと息を吐いて足を組んだ。

「まあいい、ターコとリリィに免じて許してやる。
 そら、レッドも『解除』だ」

 正座から解き放たれたレッドが、へにゃりとそのまま床に崩れた。
 軽く手を挙げてターコに礼を言っているから、まあ大丈夫そう。

 コトダマはそのまま水のようなペースで酒を飲み、しだいに上機嫌になってゆく。

「おい、モブリン。
 おまえ、さっきなにか言っていたな。
 プリンスと婚約したい……じゃなくて、婚約しないで済む方法か?
 なんだか面白そうな話じゃねえか。
 先生もあいつは気に食わなかったんだ」

 わたしのほうを顎でしゃくり、「一枚噛ませろ」と言ってきた。
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