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07 早すぎた失態
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隣町リーカに到着したのは、予定より早い夕方だった。
いつもなら日が暮れたころに到着するところを、オルガと手を繋いで歩いたおかげで、私もすいすい歩くことができた。
遠くの山に沈みかけている夕陽を見ながら、オルガは腕を組んでなにやら考え込んでいる。
「ここで取るべき最善の行動はもうわかってるんだけど……。
早く着いたぶんをどうするか……。
大事にいきたいと思った矢先に、場当たり的なことをするのもあれよね……」
「そんなに悩むことなんですか?
ジャマル様は、たぶんまだ私の手紙を読んだばかりだと思うんですけど」
「あまい!」
オルガは仁王立ちで私を指さす。
夕焼けをバックに外套が風にはためいて、なかなか絵になる姿だ。
「あなたは王太子のことが好きなわりに、過小評価しているわ。
手紙を送らないと追っ手がくるとわたくしは言ったけど、手紙を送ったから彼がなにもしないとは言ってない。
事件性がないと見て油断するにしても、各地にいる彼の『眼』は、あなたを発見するたびに彼に情報を送るんだから」
「情報を、送る」
オウム返しする私に彼女はうなずく。
「彼の考えはこうよ。
――どうやら妨害に遭ったわけではないようだが、婚約者が結婚に二の足を踏んでいるらしい。
マリッジブルーというやつだろう。
こればかりは自分が押しても逆効果になる。
幸いまだ一週間あるので数日は情報収集に努めて、それからできるだけロマンチックな方法でもう一度求婚しよう」
「うわあ……やっぱり素敵!
どんな方法でプロポーズしてくれるのかしら」
「させないんだってば」
そうでした。
でも、そうやって私のことで頭を悩ませてくれるジャマル様のことを想像すると、胸のあたりがキュッと苦しくなってくる。
やっぱり彼のことが大好きだ。
彼のことを思うだけで心がじんわり温かくなるし、彼が私のことを思ってくれているかもと考えるだけで、いますぐその胸に飛び込んでいきたくなる。
「オルガ~」
「はいはい、思い出させてごめんなさいね。
わたくしの命なんてどうでもいいと思ったら、戻って結婚してもいいのよ?
そのときはわたくしも式に出てあげるから、客席のほうを見ていればきっとわたくしの死ぬところをばっちり見られるわ」
「いじわる」
私がむくれて見せると、オルガが「ごめんごめん」とほほ笑む。
それがまた絵になっているんだから腹立たしい。
「いじわる美人占い師。
いじわる、美人、脚長、美白、天才占い師~!」
「あーもう、いちいち可愛いんだから。
王太子の代わりにわたくしが結婚してあげたいくらいだわ」
友達といえる関係かどうかはわからないけど、私はすっかりオルガと打ち解けていた。
そして、そんな彼女と旅をすることに、どこか浮かれていたのだ。
きっとオルガのほうもそうだったのだと思う。
私も彼女も、もっと声をひそめるべきだった。
「……王太子と、結婚だと?」
私たちが泊まろうと思っていた宿屋の扉から、数人の黒っぽい服を着た集団が現れた。
そのなかのひとりが、痩せた頬を引きつらせて、私たちのことを見つめていた。
いつもなら日が暮れたころに到着するところを、オルガと手を繋いで歩いたおかげで、私もすいすい歩くことができた。
遠くの山に沈みかけている夕陽を見ながら、オルガは腕を組んでなにやら考え込んでいる。
「ここで取るべき最善の行動はもうわかってるんだけど……。
早く着いたぶんをどうするか……。
大事にいきたいと思った矢先に、場当たり的なことをするのもあれよね……」
「そんなに悩むことなんですか?
ジャマル様は、たぶんまだ私の手紙を読んだばかりだと思うんですけど」
「あまい!」
オルガは仁王立ちで私を指さす。
夕焼けをバックに外套が風にはためいて、なかなか絵になる姿だ。
「あなたは王太子のことが好きなわりに、過小評価しているわ。
手紙を送らないと追っ手がくるとわたくしは言ったけど、手紙を送ったから彼がなにもしないとは言ってない。
事件性がないと見て油断するにしても、各地にいる彼の『眼』は、あなたを発見するたびに彼に情報を送るんだから」
「情報を、送る」
オウム返しする私に彼女はうなずく。
「彼の考えはこうよ。
――どうやら妨害に遭ったわけではないようだが、婚約者が結婚に二の足を踏んでいるらしい。
マリッジブルーというやつだろう。
こればかりは自分が押しても逆効果になる。
幸いまだ一週間あるので数日は情報収集に努めて、それからできるだけロマンチックな方法でもう一度求婚しよう」
「うわあ……やっぱり素敵!
どんな方法でプロポーズしてくれるのかしら」
「させないんだってば」
そうでした。
でも、そうやって私のことで頭を悩ませてくれるジャマル様のことを想像すると、胸のあたりがキュッと苦しくなってくる。
やっぱり彼のことが大好きだ。
彼のことを思うだけで心がじんわり温かくなるし、彼が私のことを思ってくれているかもと考えるだけで、いますぐその胸に飛び込んでいきたくなる。
「オルガ~」
「はいはい、思い出させてごめんなさいね。
わたくしの命なんてどうでもいいと思ったら、戻って結婚してもいいのよ?
そのときはわたくしも式に出てあげるから、客席のほうを見ていればきっとわたくしの死ぬところをばっちり見られるわ」
「いじわる」
私がむくれて見せると、オルガが「ごめんごめん」とほほ笑む。
それがまた絵になっているんだから腹立たしい。
「いじわる美人占い師。
いじわる、美人、脚長、美白、天才占い師~!」
「あーもう、いちいち可愛いんだから。
王太子の代わりにわたくしが結婚してあげたいくらいだわ」
友達といえる関係かどうかはわからないけど、私はすっかりオルガと打ち解けていた。
そして、そんな彼女と旅をすることに、どこか浮かれていたのだ。
きっとオルガのほうもそうだったのだと思う。
私も彼女も、もっと声をひそめるべきだった。
「……王太子と、結婚だと?」
私たちが泊まろうと思っていた宿屋の扉から、数人の黒っぽい服を着た集団が現れた。
そのなかのひとりが、痩せた頬を引きつらせて、私たちのことを見つめていた。
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