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02 急襲
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今度こそ、ダメだと思った。
わたしの純潔はここまでだと覚悟した。
珍しく、父が自分で買い物に出かけたと思ったら、入れ替わりに男が入ってきたのだ。
身なりはそれなりだが、細く鋭い目をした、悪魔のような黒い服の男だった。
「ひっ! あなた、誰ですか!」
「おれが誰かは関係ないさ。
おまえはアイリーンだろう?
借金のカタに、抱いてやりにきたぜ」
「借金……」
あれほどわたしで稼いだのに、父には借金があった。
政略結婚ができなくなるので爵位こそ手離しはしないが、代わりに、屋敷の維持や貴族としての生活にお金がかかる。
それに、わたしを嫁がせようとするたびに相手が騎士団長の手にかけられるので、さすがに噂が広まって、未成年のわたしを売ることが難しくなっていた。
だから、手っ取り早く、借金取りに抱かせることにしたのだろう。
いつものような結婚の段取りもなかったのだから、エリオット様も動きを察知できようはずがない。
わたしは覚悟するしかなかった。
「服を脱ぐから、待って」
「いやそのままでいい。
そのまま犯すのがおれの趣味なんだ」
最後の時間稼ぎすらできない。
男はわたしの腕をつかみ、わたしの部屋に案内させるとベッドに押し倒した。
「この瞬間がたまらないぜ。
おれが高利貸しをやっているのは金のためじゃなくて、こうして馬鹿の娘をひん剥くためかもしれんなあ!」
「や、やめて……」
わたしの下着を無理やり脱がし、脚を押し広げる。
男の下半身があらわになり、醜く脈打つソレが、わたしの脚のあいだを目掛けて近づけられる。
「ひっ……いや……ッ」
が、ソレがわたしに入ってくることはなかった。
高利貸しの男は、背後から首根っこを掴まれていたのだ。
「ぐが……だ、誰だ!?」
「騎士団長のエリオットだ。
違法な高利貸し、および暴行未遂!」
未遂、というところを彼は強調する。
わたしは、自分の純潔がまた彼に守られたことを知った。
今回、エリオット様はすぐには斬らなかった。
男を屋敷の庭まで引っ張って行き、
「子ども部屋を血で汚すわけにはいかない。
さあ、ここでおれが裁いてやる。
祈れ――」
泣いて命乞いをする男を無慈悲に断罪した。
その死体は部下の騎士たちに命じて運ばせ、わたしの屋敷にはすぐにまた平穏が戻った。
わたしはお礼を言ったあとで、思いきって彼に質問をしてみる。
「エリオット様……どうしてわかったのですか?
わたしのことをいつも見てくれている、なんてことはないと思いますけど」
「あの高利貸しを追っていたのさ。
子どもが余計なことを気にしなくていい」
また、子ども扱い。
感謝しながらも、そこは納得いかなかった。
「安心して寝るがいい。
子どもの安全はおれたちが守る」
「……はい、ありがとうございました」
結局、目を合わせてくれなかった。
彼はわたしの英雄で、とても素敵だけれど、わたしのことは街の子どものひとりとしか思っていない。
でももうすぐ、わたしも16歳になる。
子どもではなくなってしまう。
もしかしたら、彼が守るべき対象ではなくなるのかもしれない。
そう考えると、とても寂しくなった。
わたしの純潔はここまでだと覚悟した。
珍しく、父が自分で買い物に出かけたと思ったら、入れ替わりに男が入ってきたのだ。
身なりはそれなりだが、細く鋭い目をした、悪魔のような黒い服の男だった。
「ひっ! あなた、誰ですか!」
「おれが誰かは関係ないさ。
おまえはアイリーンだろう?
借金のカタに、抱いてやりにきたぜ」
「借金……」
あれほどわたしで稼いだのに、父には借金があった。
政略結婚ができなくなるので爵位こそ手離しはしないが、代わりに、屋敷の維持や貴族としての生活にお金がかかる。
それに、わたしを嫁がせようとするたびに相手が騎士団長の手にかけられるので、さすがに噂が広まって、未成年のわたしを売ることが難しくなっていた。
だから、手っ取り早く、借金取りに抱かせることにしたのだろう。
いつものような結婚の段取りもなかったのだから、エリオット様も動きを察知できようはずがない。
わたしは覚悟するしかなかった。
「服を脱ぐから、待って」
「いやそのままでいい。
そのまま犯すのがおれの趣味なんだ」
最後の時間稼ぎすらできない。
男はわたしの腕をつかみ、わたしの部屋に案内させるとベッドに押し倒した。
「この瞬間がたまらないぜ。
おれが高利貸しをやっているのは金のためじゃなくて、こうして馬鹿の娘をひん剥くためかもしれんなあ!」
「や、やめて……」
わたしの下着を無理やり脱がし、脚を押し広げる。
男の下半身があらわになり、醜く脈打つソレが、わたしの脚のあいだを目掛けて近づけられる。
「ひっ……いや……ッ」
が、ソレがわたしに入ってくることはなかった。
高利貸しの男は、背後から首根っこを掴まれていたのだ。
「ぐが……だ、誰だ!?」
「騎士団長のエリオットだ。
違法な高利貸し、および暴行未遂!」
未遂、というところを彼は強調する。
わたしは、自分の純潔がまた彼に守られたことを知った。
今回、エリオット様はすぐには斬らなかった。
男を屋敷の庭まで引っ張って行き、
「子ども部屋を血で汚すわけにはいかない。
さあ、ここでおれが裁いてやる。
祈れ――」
泣いて命乞いをする男を無慈悲に断罪した。
その死体は部下の騎士たちに命じて運ばせ、わたしの屋敷にはすぐにまた平穏が戻った。
わたしはお礼を言ったあとで、思いきって彼に質問をしてみる。
「エリオット様……どうしてわかったのですか?
わたしのことをいつも見てくれている、なんてことはないと思いますけど」
「あの高利貸しを追っていたのさ。
子どもが余計なことを気にしなくていい」
また、子ども扱い。
感謝しながらも、そこは納得いかなかった。
「安心して寝るがいい。
子どもの安全はおれたちが守る」
「……はい、ありがとうございました」
結局、目を合わせてくれなかった。
彼はわたしの英雄で、とても素敵だけれど、わたしのことは街の子どものひとりとしか思っていない。
でももうすぐ、わたしも16歳になる。
子どもではなくなってしまう。
もしかしたら、彼が守るべき対象ではなくなるのかもしれない。
そう考えると、とても寂しくなった。
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