パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ

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第一章

第12話 死霊術士、リザードマンのアジトに侵入する

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 冒険者たちは俺の言葉に反応してはいるものの、まるで胡散臭いものを見るかのような目で俺たちを見た。
 彼らは様子を窺っているのか、誰も俺に言葉を返してはくれなかった。

 元々冒険者なんて連中は利己的で協調性のない奴が多いからな。ほとんどの奴は、どうやってこのクエストで自分が旨い汁を吸おうかと考えているのだろう。
 同じ冒険者である俺がこんなことを言うのもあれだけど。
 もちろん気高い志と実力を兼ね備えた立派な冒険者もいるが、逆も然りであり、まさに玉石混淆なのだ。

 これは想像以上に難儀かもしれない……。

 どうすればいいか考えあぐねていると、一人の大柄な男性がこちらに歩み寄ってきた。
 重そうなアイアンプレートを身にまとい、大剣を背負った戦士風の男だ。
 歳は俺より少し上の三十歳くらいかな?
 顎にたくわえた立派な髭が太陽の光を反射している。

「作戦? 君が考えたのかい?」

 男は、その体躯に相応しい重厚感のある声でそう言った。

「ええ。俺と、この魔術師の女の子で考えました」

「ああ、失礼。俺はゴルドー・ノッドロッド。A級冒険者で、一応このクエストのリーダーのようなものを任されてる者だ」

 男は頭をかきながら破顔して言った。
 見た目は厳ついが、怖い人ではないのかもしれない。

 そういやオデットが言っていたな、まとめ役のA級冒険者が一人現場に居ると。
 それがこのゴルドーさんなのだろう。 

「俺はクラウス・アイゼンシュタインといいます」

「あ、あたしは……ゼフィ・カルティナ……」

 ゼフィはハエの霊魂の羽音より小さい声でそう言うと、何故か俺の背中に隠れてしまった。

「お、おい! 何してんだ?」

 俺はゼフィだけに聞こえるひそひそ声で言った。

「い、言ったでしょ、あ、あたし、人見知りだって……」

「なんで俺に対してはあんなに威勢良かったんだよ。別人みたいに大人しくなりやがって」

「それは……なんとなく……」

「俺が舐められてるのはよくわかったよ……」

『まぁまぁ。クラウスさんは話しやすいんですよ、きっと』

 仕方ない。ゼフィはとりあえず置いて話を進めるか。

「ははは。俺は身体がデカいからな! 怖がらせちゃったかな?」

 しかしゴルドーさんはゼフィの失礼な態度を特に意に介するような素振りも見せず、豪快に笑った。

「で、だ……あまり悠長にもしていられない。どんな作戦なのか、聞かせてもらえるかい?」

 かと思うとゴルドーさんは笑いを引っ込め、真剣な表情を作って言った。

「はい。ええとですね……」

 俺はゴルドーさんに作戦の概要を説明した。

「ほう。なるほど……地下へ直接突入して人質を救出、そのまま地下と地上から挟撃か……」

 作戦を吟味するかのように、ゴルドーさんは自らの顎髭を触りながら言う。

「どうですかね?」

「悪くないと思う。いや、それが現在取りうる最良の方法だろうな」

「そ、そうですか!? じゃあ……」

「それが本当に可能なら、の話だよ。地下までの穴なんて本当に開けられるのか?」

 う、やはりその疑問は来るよな。
 しかし、ここまで来たらもう引けない。

「それは実際に見ていただくしかありません。地下への穴を無事に開けることができたら、地上での突入を約束していただけますか?」

「うむ……。開けることができたら、な」

 ゴルドーさんはやはり半信半疑といった様子だ。
 だが、作戦をまったく信じてもらえずに突っぱねられなかったのは幸いだ。
 聞く耳を持ってもらえただけありがたい。

「わかりました。では、早速取り掛かりますので、他の冒険者の方たちに突入の準備をするように言っておいていただけますか? 穴を開けたら大きな音もしますし、敵も何が起きたか気がつくでしょう。時間との勝負になります」

「わかった、話をしてこよう。こちらとしても手をあぐねていたところだからな。君の作戦が成功してくれることを祈るよ」

「よろしくお願いします!」

 よし。
 どうなることか心配だったが、リーダーでA級冒険者のゴルドーさんが話をしてくれるなら他の冒険者も聞き入れてくれることだろう。

 ゴルドーさんが話をしに行っている間、俺たちは見取り図を見ながら穴を開ける場所の見当をつける作業を始めた。
 それがちょうど終わったか否かというところで、ゴルドーさんはこちらに戻ってきた。

「クラウス君。皆の説得は完了だ。後は君次第だ」

「はい。お任せください」

 少し離れたところでゼフィがこちらを見守っている。
 親友が助かるかどうかの局面なのだ。心配だろうな。

 ゼフィの為にも、今日の宿の為にも、この穴開けは絶対に成功させなければいけない。

『ではクラウスさん。身体の操作をお預かりしますね』

「ああ。頼むぞ、リリス」

 身体からふっと力が抜ける。リリスに身体の主導権が渡ったのだ。

 リリスはギルドから借りてきた大槍を両手で持ち、刃を地面に向けた。

『いきます!』

 槍を振りかぶり、凄まじい勢いで地面に突き刺すと、辺りは轟音と共に激しく揺れた。
 まるでドラゴンか何かが着地したときのような揺れ――いや、それ以上だ。

「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「すごい揺れだ!!」

「足元に気をつけろ!!!」

 遠目に様子を見守っていた冒険者たちはあまりの揺れにバランスを崩しているのだが、揺れの中心にいるリリスは物凄い脚力で大地を踏みしめたまま倒れる気配もない。

『クラウスさん。穴開きましたよ』

 揺ればかりに頭が行っていた俺に、リリスが声をかけてきた。

 彼女の言うとおり視界の先には深い穴がポッカリと開いている。

「マジか……」

 目の前に開いた大きな穴を前に、俺は驚嘆した。
 そりゃリリスならできると思って提案したのは俺だけど、やっぱり実際にこんな大技を目の当たりにすると驚きを隠せない。

 そして更に驚いたのは、穴を開けるのに使った槍が無事であることだ。
 右手には刃こぼれ一つない槍が太陽の光を受けて輝いていた。ギルドで借りた安物でこんなことができるものなのか。
 単純な膂力だけではなく、リリスの技術の高さをも再認識させられた。

「う、ウソ……本当にやっちゃった……」

「き、君……ななななな何者なんだ!?」 

 ゼフィとゴルドーさんが駆け寄ってくる。

「こんなの、魔法でも無理なのに。凄い、こんなに深く……!」

 屈んで穴を覗き込むゼフィ。

「君みたいな凄い男が同じギルドに居たなんてな! 驚いたよ! ははは!」

 あ、そうか……。
 ゴルドーさんや他の冒険者から見れば、リリスではなく俺が穴を開けたように見えるのか。

「いえ、これは俺の力ではなく……」

「な~に言ってるんだ! 君のとんでもない馬鹿力の結果じゃないか! がっはっは!」

 豪快に笑いながら俺の肩をバンバン叩くゴルドーさん。

『クラウスさん、あまり話をしている暇はありません。そろそろ地下に突入しますね!』

 そうだ。今の轟音と揺れでリザードマンたちが異変に気がつくのも時間の問題だ。

「ゴルドーさん。俺はこれから地下に下りて人質を救出、そのまま敵に奇襲をかけます。作戦通り、地上はお任せします!」

「おぉ! 任せてくれ! 心配は要らないかもしれないが、君もどうか無事でな!」

「はい! ……ゼフィも、無事でな! クエストが終わったら皆で飯でも食おう!」

 ゼフィを元気づける意味合いも込めて、俺は言った。

『あ、それいいですね! よーし、わたし、頑張っちゃいますよ!』

「う、うん! あたしの親友のこと、よろしくね!」

 地上をゼフィとゴルドーさんに任せ、リリスは地面を蹴り、穴の中へ入った。

「う、うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 落ちるぅぅぅぅ!!!」

『落ちるって、実際落ちてるんですよ、クラウスさん』

 俺はたまらず叫んだ。
 だってこれ……怖すぎだろ。
 身体が地面を離れるってのはこうも恐ろしいものなのか。
 落ちながら、俺はこんな作戦を考えた自分を呪った。 

 永遠にも思える数秒の後、俺の身体は着地した。

『あまり空気の良くないじめじめした場所ですね。デスマウンテンを思い出します』

 下りた先は牢獄のような場所だった。
 俺たちの予想は的中しており、まさにこの大部屋は人質が集められた人質ルームであった。

 薄暗い室内に十数人が縄で縛られて床に転がっている。

『まずは状況を確認します』

 そう言ってリリスが俺の頭部を動かし、室内の様子を見回す。
 その視界を共有している俺も、リリスと共に周囲を確認する。

 すると、俺の意識はある一点に釘付けになった。
 その瞬間、俺の心臓はどくんどくんと鼓動を速め、全身に冷水をぶっかけられたような心地さえした。

 何故、ここに……?

『クラウスさん? どうしたんですか?』

 俺の異変に気がついたのか、リリスが声をかけてくる。
 だが俺はそれに答える余裕もないほど狼狽していた。

 俺が驚いたのは……いるはずのない人間が、この部屋にいたからだ。 
 この部屋に捕らえらえた人質の中に、俺がよく見知った顔があったからだ。

「クラウス!?」

「どうしてあんたがここに……!?」

「な、何でお前が落ちてくるんだよ!?」

 そう――この部屋には、俺をデスマウンテンで捨てた勇者パーティーのジョーキットたちが捕らえられていたのだ。

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