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#2 Life is strange 〜そりゃ人生は不思議だがお前に言われたくなかった(2)
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「ねえねえ。もしさ、環境がいきなり少しだけ変わったらどうする?ううん、戸籍をいじって別人になるとか、ステンレス製の車で若い頃のママに会うとか、そこまで面倒くさい違いじゃないの。例えばそうだな…家族や親友は変わんないけど、ほんの数人の人間関係が少し違うだけなの。その程度なんだけど、人間はさ、果たしてどうなると思う…?」
吐き気がするほど明瞭な既視感。数日前、スタジオで聞いた声と言葉はこれだったのか。この女の子、本当に何者なんだ?
「待て、まったくわからん。なぜそんな実験を?なぜ俺?」
慌てる貴明。さらに、あの夜の体験を全部見られていたかもしれないと思うと、急速に恥ずかしさが増大する。
「神はときどき、見返りもないのに無駄に一所懸命に生きたり、報われないのに馬鹿みたいに人を愛したりする愚鈍な人間…まあ大半の人間がそうなんだけど、そういう人間を試すことがあるのよね。目的がイマイチわからないし、正直私も悪趣味とは思うけど、神が選んだ人間ってのがさあ、これまたいい仕事するんだわ実際。こないだのお前と紗英のも楽しく見物、いや視察させてもらって…」
「…悪魔だ」
「お?」
「黙って聞いてれば、人をなんだと思ってんだ。そんなん神じゃねえ悪魔だ。ならお前は使い魔かー!」
「本当に失敬な男だなー、バチが当たるよ?」
「バチなら、お前に会ったことも含めてもう当たりまくりだよ!これ以上ねえだろ。ふははは!」
ドア。オーディナリー・ワールド。アザーサイド。神。ゲート。この数十分で山盛りに出てきた不条理ワードをまとめながら、貴明は無理矢理にも落ち着くべく、残りの冷めたコーヒーを一気に流し込む。荒唐無稽な梨杏の話に、あえて前のめりになる。
「アザーサイドはねえ、人間の真の欲求を映し出す世界なんだよ」
「わかった。不思議な体験をしたのは確かだし、この際だから全乗っかりしてやるよ。いわゆるパラレルワールドとかドッペルゲンガーみたいなやつ?もう1人の俺がいるとか?」
「いやお前はお前、基本1人だね。ドアで行き来してるだけだから、アザーサイドに行ってる間はオーディナリー・ワールドにはいなくなる。基本的には自分視点だよ」
「なるほど、それでみんなは俺を探してたのか。納得…いや待ておかしいぞ?じゃあ紗英は?あんなに素直で俺に優しい紗英なんて、見たことなかったぞ」
「そこが、本人以外はほぼ同じだけど、少しだけ環境が変わる部分なの。私には仕組みはわかんない。本当にパラレルワールドなのかもしれないし、エクスペリエンストの脳内だけで起きることかもしれないの」
「それ。さっきから普通に言ってるけどさ、そもそもそのエクスペリエンストって何?ジミヘン以外で」
「経験者。ゲートを行き来できる資格を得た者のことさ。誰もがなれるわけじゃないのよ。あみだ…いえ厳正な審査を経たあなただけが…」
「んな資格いらんわ!で、それになる条件って?」
「わかんない。純粋とか一途とか、いわゆる『馬鹿』が条件というのはあるらしいけど、結局は神が選んじゃうからね。サイコ…いや厳正な審査で」
「人の人生をあみだくじやチンチロリンで…やっぱ絶対に神じゃねえよそいつ」
「ただね。悪用しようと思えば窃盗で殺人でも余裕で完全犯罪ができちゃうから、生まれながらの悪人にはこの力は与えないんだ。それも含めて、試されてるって思っていいよ」
この段になって、周囲からの視線が少々痛くなってきた。第三者的には、自分がいたいけな女の子を詰問してるように見えるのかもしれない。これはイカン空気であると感じ取った貴明は、
「ここじゃそろそろアレだし、とりあえず俺の部屋で話してくれないか?」
梨杏は待ってましたとばかりに悪い顔で、
「いやー/連れてかれるー/性奴隷ー(棒読み)」
「やめ、阿呆なのかー!それはさすがにヤバイっ」
隣の女性グループが、危険物を遠巻きに見るときの視線でこっちを見ている。聞くに堪えない内容らしきヒソヒソ声を背に、2人は足早に駅を出た。
吐き気がするほど明瞭な既視感。数日前、スタジオで聞いた声と言葉はこれだったのか。この女の子、本当に何者なんだ?
「待て、まったくわからん。なぜそんな実験を?なぜ俺?」
慌てる貴明。さらに、あの夜の体験を全部見られていたかもしれないと思うと、急速に恥ずかしさが増大する。
「神はときどき、見返りもないのに無駄に一所懸命に生きたり、報われないのに馬鹿みたいに人を愛したりする愚鈍な人間…まあ大半の人間がそうなんだけど、そういう人間を試すことがあるのよね。目的がイマイチわからないし、正直私も悪趣味とは思うけど、神が選んだ人間ってのがさあ、これまたいい仕事するんだわ実際。こないだのお前と紗英のも楽しく見物、いや視察させてもらって…」
「…悪魔だ」
「お?」
「黙って聞いてれば、人をなんだと思ってんだ。そんなん神じゃねえ悪魔だ。ならお前は使い魔かー!」
「本当に失敬な男だなー、バチが当たるよ?」
「バチなら、お前に会ったことも含めてもう当たりまくりだよ!これ以上ねえだろ。ふははは!」
ドア。オーディナリー・ワールド。アザーサイド。神。ゲート。この数十分で山盛りに出てきた不条理ワードをまとめながら、貴明は無理矢理にも落ち着くべく、残りの冷めたコーヒーを一気に流し込む。荒唐無稽な梨杏の話に、あえて前のめりになる。
「アザーサイドはねえ、人間の真の欲求を映し出す世界なんだよ」
「わかった。不思議な体験をしたのは確かだし、この際だから全乗っかりしてやるよ。いわゆるパラレルワールドとかドッペルゲンガーみたいなやつ?もう1人の俺がいるとか?」
「いやお前はお前、基本1人だね。ドアで行き来してるだけだから、アザーサイドに行ってる間はオーディナリー・ワールドにはいなくなる。基本的には自分視点だよ」
「なるほど、それでみんなは俺を探してたのか。納得…いや待ておかしいぞ?じゃあ紗英は?あんなに素直で俺に優しい紗英なんて、見たことなかったぞ」
「そこが、本人以外はほぼ同じだけど、少しだけ環境が変わる部分なの。私には仕組みはわかんない。本当にパラレルワールドなのかもしれないし、エクスペリエンストの脳内だけで起きることかもしれないの」
「それ。さっきから普通に言ってるけどさ、そもそもそのエクスペリエンストって何?ジミヘン以外で」
「経験者。ゲートを行き来できる資格を得た者のことさ。誰もがなれるわけじゃないのよ。あみだ…いえ厳正な審査を経たあなただけが…」
「んな資格いらんわ!で、それになる条件って?」
「わかんない。純粋とか一途とか、いわゆる『馬鹿』が条件というのはあるらしいけど、結局は神が選んじゃうからね。サイコ…いや厳正な審査で」
「人の人生をあみだくじやチンチロリンで…やっぱ絶対に神じゃねえよそいつ」
「ただね。悪用しようと思えば窃盗で殺人でも余裕で完全犯罪ができちゃうから、生まれながらの悪人にはこの力は与えないんだ。それも含めて、試されてるって思っていいよ」
この段になって、周囲からの視線が少々痛くなってきた。第三者的には、自分がいたいけな女の子を詰問してるように見えるのかもしれない。これはイカン空気であると感じ取った貴明は、
「ここじゃそろそろアレだし、とりあえず俺の部屋で話してくれないか?」
梨杏は待ってましたとばかりに悪い顔で、
「いやー/連れてかれるー/性奴隷ー(棒読み)」
「やめ、阿呆なのかー!それはさすがにヤバイっ」
隣の女性グループが、危険物を遠巻きに見るときの視線でこっちを見ている。聞くに堪えない内容らしきヒソヒソ声を背に、2人は足早に駅を出た。
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