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砂漠の国
第七章第9話 砂漠の戦士たち
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「姉さま、すごいですねっ。一面まっ黄色ですっ」
ラクダに乗ったルーちゃんが歓声をあげており、私はそれに小さく頷いて応える。
ルーちゃんの言う通り、イエロープラネットの名前に相応しい黄色いサラサラとした砂の砂漠が見渡す限り続いている。
砂漠と言えば熱い、というイメージがあるが今の季節は冬だ。さすがに冬ともなればそこまで灼熱地獄という事にはならないようで、昼間であれば乾燥してはいるものの過ごしやすい気温なのは助かる。
夜も寒くはなるがレッドスカイ帝国へ行くときに通った砂漠ほどは冷えることもなく、旅としては順調だ。
私たちはカミルさんの用意してくれたラクダに乗って砂漠をゆっくりと進んでいる。
私たちの砂漠横断隊は、私たちのラクダを引いてくれるサポートの人が 5 名、さらに私たちの周りを固めて護衛してくれる戦士たちがおよそ 300 名、更にサポート専門の人達 20 名ほどからなる大所帯だ。
やや過剰とも思える陣容ではあるが、ここイエロープラネットでも魔物の襲撃頻度が増えているそうで、私たちの身に何かあってはいけないとこれほどの人員を割いてくれたのだ。
「聖女様、前方にイエローテールスコルピの群れがおります。駆除して参りますのでこちらでお待ちください」
私にそう伝えてきたのは、護衛をしてくれている戦士のリーダー格のナヒドさんだ。
「そうですか。ありがとうございます。どうぞお気をつけて」
「ははっ」
そう言って見送ったが、そのイエローテールスコルピというのは初めて聞く名前だ。
「フィーネ様、イエローテールスコルピというのは、ここプラネタ砂漠に生息するサソリの魔物です。この砂漠の砂と同じ色の外殻を持っているため発見が困難なことに加え、尻尾に非常に強力な毒を持っているとても厄介な魔物です」
私の表情を察してクリスさんが解説をしてくれる。
「なるほど……。私たちも戦わなくて大丈夫ですかね?」
「大丈夫でござるよ。カミル殿が自信を持ってつけてくれた精鋭部隊でござるよ? きっと砂地の戦いには慣れているはずでござるゆえ、拙者たちは戦い方をよく見ておくのが良いでござるよ」
「そうですか……」
だと良いのだけれど。
一応、念のために解毒魔法や治癒魔法は使うつもりでいることにしよう。
そう思いながら数十メートル先のナヒドさん達を眺めていると戦闘が始まった。
ナヒドさん率いる戦士たちが一糸乱れぬ隊列を組んで突撃していく。
そして先頭の人が曲剣を抜くと砂と同化していて見えにくいサソリの尻尾の攻撃を躱して華麗に切り捨てる……と、思いきや見事にそのままブスリと尻尾にその腹を刺された。
「あ……」
「神は偉大なりぃぃぃぃーーー!」
刺された男はそう叫ぶと尻尾を抱えてそのまま倒れると、その隙に隣の戦士がサソリを切り捨てた。
私は唖然として固まってしまった。そして慌てて辺りに視線を向ける。
すると同じような光景があちこちで繰り広げられているではないか!
ええと、これはどういうこと?
って、違う! 助けなきゃ!
「解毒! 治癒!」
私は戦士たちが刺される度に次々と遠隔で解毒魔法と治癒魔法をかけていく。
うん。意外とこれだけ距離があっても普通に使えるものだ。
手応えはちゃんとあるが、急いでやったので少しばかりかかりが悪そうな気もするので後でかけ直しておいてあげよう。
そうこうしているうちにこの黄色いサソリの群れは撃退されたのだった。
そして戦闘から戻ってきた戦士たちが私の前に腹ばいになって寝そべって祈りの言葉を口にしている。
「「「「神は偉大なり! 神は偉大なり! 聖女は神の使徒なり! 聖女の救済に感謝を!」」」」
いや、救済というか、なんというか……。
君たちのそれ、自爆特攻だったよね?
「ええと、神はあなた方を赦します」
「「「「おおおお」」」」
私が何とか作法を思い出して口上を述べると、彼らは涙を流している。
いや、何の宗教? あ、いや、この国の宗教なんだろうけど……。
「あの、ナヒドさん?」
「ははっ。何でございましょうか?」
「もしかしてこんなに大人数で来たのって、今の戦い方が理由だったりします?」
「おお! さすがは聖女様でらっしゃいますな。イエローテールスコルピは危険でございますから、あのように戦士が勇敢に命を懸けて戦う必要があるのでございます」
「ええぇ」
「これは……酷いでござるな……」
シズクさんがドン引きした様子でボソッとそう呟いたのを私の耳は聞き逃さなかったのだった。
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「姉さま、すごいですねっ。一面まっ黄色ですっ」
ラクダに乗ったルーちゃんが歓声をあげており、私はそれに小さく頷いて応える。
ルーちゃんの言う通り、イエロープラネットの名前に相応しい黄色いサラサラとした砂の砂漠が見渡す限り続いている。
砂漠と言えば熱い、というイメージがあるが今の季節は冬だ。さすがに冬ともなればそこまで灼熱地獄という事にはならないようで、昼間であれば乾燥してはいるものの過ごしやすい気温なのは助かる。
夜も寒くはなるがレッドスカイ帝国へ行くときに通った砂漠ほどは冷えることもなく、旅としては順調だ。
私たちはカミルさんの用意してくれたラクダに乗って砂漠をゆっくりと進んでいる。
私たちの砂漠横断隊は、私たちのラクダを引いてくれるサポートの人が 5 名、さらに私たちの周りを固めて護衛してくれる戦士たちがおよそ 300 名、更にサポート専門の人達 20 名ほどからなる大所帯だ。
やや過剰とも思える陣容ではあるが、ここイエロープラネットでも魔物の襲撃頻度が増えているそうで、私たちの身に何かあってはいけないとこれほどの人員を割いてくれたのだ。
「聖女様、前方にイエローテールスコルピの群れがおります。駆除して参りますのでこちらでお待ちください」
私にそう伝えてきたのは、護衛をしてくれている戦士のリーダー格のナヒドさんだ。
「そうですか。ありがとうございます。どうぞお気をつけて」
「ははっ」
そう言って見送ったが、そのイエローテールスコルピというのは初めて聞く名前だ。
「フィーネ様、イエローテールスコルピというのは、ここプラネタ砂漠に生息するサソリの魔物です。この砂漠の砂と同じ色の外殻を持っているため発見が困難なことに加え、尻尾に非常に強力な毒を持っているとても厄介な魔物です」
私の表情を察してクリスさんが解説をしてくれる。
「なるほど……。私たちも戦わなくて大丈夫ですかね?」
「大丈夫でござるよ。カミル殿が自信を持ってつけてくれた精鋭部隊でござるよ? きっと砂地の戦いには慣れているはずでござるゆえ、拙者たちは戦い方をよく見ておくのが良いでござるよ」
「そうですか……」
だと良いのだけれど。
一応、念のために解毒魔法や治癒魔法は使うつもりでいることにしよう。
そう思いながら数十メートル先のナヒドさん達を眺めていると戦闘が始まった。
ナヒドさん率いる戦士たちが一糸乱れぬ隊列を組んで突撃していく。
そして先頭の人が曲剣を抜くと砂と同化していて見えにくいサソリの尻尾の攻撃を躱して華麗に切り捨てる……と、思いきや見事にそのままブスリと尻尾にその腹を刺された。
「あ……」
「神は偉大なりぃぃぃぃーーー!」
刺された男はそう叫ぶと尻尾を抱えてそのまま倒れると、その隙に隣の戦士がサソリを切り捨てた。
私は唖然として固まってしまった。そして慌てて辺りに視線を向ける。
すると同じような光景があちこちで繰り広げられているではないか!
ええと、これはどういうこと?
って、違う! 助けなきゃ!
「解毒! 治癒!」
私は戦士たちが刺される度に次々と遠隔で解毒魔法と治癒魔法をかけていく。
うん。意外とこれだけ距離があっても普通に使えるものだ。
手応えはちゃんとあるが、急いでやったので少しばかりかかりが悪そうな気もするので後でかけ直しておいてあげよう。
そうこうしているうちにこの黄色いサソリの群れは撃退されたのだった。
そして戦闘から戻ってきた戦士たちが私の前に腹ばいになって寝そべって祈りの言葉を口にしている。
「「「「神は偉大なり! 神は偉大なり! 聖女は神の使徒なり! 聖女の救済に感謝を!」」」」
いや、救済というか、なんというか……。
君たちのそれ、自爆特攻だったよね?
「ええと、神はあなた方を赦します」
「「「「おおおお」」」」
私が何とか作法を思い出して口上を述べると、彼らは涙を流している。
いや、何の宗教? あ、いや、この国の宗教なんだろうけど……。
「あの、ナヒドさん?」
「ははっ。何でございましょうか?」
「もしかしてこんなに大人数で来たのって、今の戦い方が理由だったりします?」
「おお! さすがは聖女様でらっしゃいますな。イエローテールスコルピは危険でございますから、あのように戦士が勇敢に命を懸けて戦う必要があるのでございます」
「ええぇ」
「これは……酷いでござるな……」
シズクさんがドン引きした様子でボソッとそう呟いたのを私の耳は聞き逃さなかったのだった。
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