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砂漠の国
第七章第10話 会談(前編)
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それからの道中はほぼルーちゃんとマシロちゃんのコンビの独壇場だった。
といっても私が結界で全員を守り、その中からマシロちゃんが風の刃を飛ばして断続的に襲ってくるイエローテールスコルピを次々と打ち倒していくといういつもの戦い方をしただけだけれど。
あ、ちなみにアイロールでの失敗があるので今回は地面にも結界を張って地中からの攻撃にも対応できるようにしている。もう同じやり方でピンチになるのはごめんだからね。
さて、そんなこんなで砂漠を 4 日ほどかけて横断した私たちはイエロープラネット首長国連邦の首都エイブラへとやってきた。
ここは砂漠の国でありながら川が流れており、乾燥してはいるものの大規模な畑もあり比較的肥沃な土地のようだ。
ちなみにこの川は北にある山脈から流れてきている。その山々は天空山脈にも連なる大山脈の一部でこの大陸を南北に分断しているそうだ。地理的にはこの山脈の北に三日月泉のあるあの砂漠があるらしい。
そんな場所に位置するエイブラだが、首都というだけあって高さ 7 ~ 8 メートルはあろうかという巨大な城壁に囲まれた城塞都市だ。
私たちが今通っているこの広いメインストリートの両側の建物はイザールのように土レンガではなく石造りのしっかりとした建物で、まるで計画されたかのように統一されたデザインの建物が整然と立ち並んでいる。街路樹も等間隔に植えられていて、良く計画された都市であることが見て取れる。
既に私たちが来ることは知らされていたのか、私たちを出迎える市民がメインストリートの端で歓迎をしてくれているのだが……。
全員腹ばいでこちらを見ているのは何とも不気味な光景だ。
いや、大歓迎で小旗を振ってほしいとか、そういう話ではないんだけど、こう、ほら。
普通にしてほしいと思うのは私だけではないと思う。
そんな不思議な光景を屋根のない馬車――この町に入る前に乗り換えたのだ――から手を振りながら眺めるというのは何ともシュールで居心地がすこぶる悪い。
あまりの居心地の悪さから、私たちは口も開かず無言のまま馬車に揺られて通りを進むのだった。
****
そんなこんなで町の中心にある美しい宮殿にやってきた。この宮殿は中央の巨大な広場を囲むように整然とした大理石の三階建ての建物が並んでおり、その奥には玉ねぎ型のドームがある神殿と一体となっている。その神殿は美しい青色をしており、近づいてみると青のタイルを基調としてエメラルドグリーンや黄色、白などの色々な色で細かく幾何学模様の細工が施されている。
いや、これはすごい。圧巻だ。
「さ、聖女様。こちらへ」
私がしばし見とれていると案内の人に促されたので建物の中へと入る。
建物の内部も同じようにタイルで細かい装飾が施されており、とても厳かな雰囲気を漂わせている。
そんな厳かな雰囲気の中、豪華な格好をした人たちが私たちを出迎えてくれた。もちろん、例の地面にビタンのお祈りでだ。
それから一連の流れをやった後に自己紹介をされた。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様。我らがイエロープラネット首長国連邦へようこそお越しいただきました。私はこのイエロープラネット首長国連邦の大統領を務めておりますシャリーフ、こちらはエイブラ首長のマタルでございます」
「はじめまして、フィーネ・アルジェンタータです。こちらから順にクリスティーナ、シズク・ミエシロ、ルミアです」
「これはこれは。神に感謝いたします」
なるほど。この国は大統領もこのお祈りのポーズを私にやるのか。という事は、ブルースター的な感じなのかな?
それから私たちは大統領に連れられて宮殿の中を案内され、そして会談を行うとされる部屋へと案内された。
「さ、聖女様。どうぞおかけになってください」
「ありがとうございます」
私が大統領に促されて腰かけると早速会談が始まった。
「まずは、こちらの親書をお渡しします。これはホワイトムーン王国の国王よりシャリーフ大統領にとお預かりしたものです」
私は収納から封筒を取り出して大統領に差し出す。
「ありがとうございます」
その封筒を恭しく受け取ると、すぐに開封して中身を確認した。大統領の顔がすぐに険しくなる。
「聖女様。ブラックレインボー帝国の件、まことでしょうか? あの国がこのようなことをするとは……」
「残念ながら事実です。ブラックレインボー帝国は死なない兵と魔物を使役してホワイトムーン王国を攻撃してきました。貴国にも侵略の手が伸びる可能性がありますので私がこうして使者として親書を運んでまいりました」
「左様ですか。その死なない兵に対抗する術を聖女様が我々に授けて下さると?」
「はい。このまま人々が殺されるのを黙ってみているわけにはいきませんから」
「感謝いたします。さすがは聖女様でらっしゃいますな」
「いえ。仕事ですし、適正な対価は頂くつもりですからお気遣いなく」
「……左様でございますか」
どうやらこの表情を見るに、タダでやってもらえると思っていたらしい。
「分かりました。ところで聖女様。ブラックレインボー帝国は何故そのような事を?」
「それは私たちも分かりません。あ、でも確かサラさんのお兄さんがクーデーター? を起こして皇帝になったって言っていましたね。ねぇ、サラさん?」
私が不用意にそう発言したことで部屋の中に緊張が走ったのだった。
================
新作「テイマー少女の逃亡日記」の連載を 12/05 より開始しております。物語も進み、かわいい従魔が仲間に加わっています。
アプリの方は目次に戻って頂き著者近況からの作品一覧より、ブラウザの方は下のリンクよりどうぞご覧ください。
といっても私が結界で全員を守り、その中からマシロちゃんが風の刃を飛ばして断続的に襲ってくるイエローテールスコルピを次々と打ち倒していくといういつもの戦い方をしただけだけれど。
あ、ちなみにアイロールでの失敗があるので今回は地面にも結界を張って地中からの攻撃にも対応できるようにしている。もう同じやり方でピンチになるのはごめんだからね。
さて、そんなこんなで砂漠を 4 日ほどかけて横断した私たちはイエロープラネット首長国連邦の首都エイブラへとやってきた。
ここは砂漠の国でありながら川が流れており、乾燥してはいるものの大規模な畑もあり比較的肥沃な土地のようだ。
ちなみにこの川は北にある山脈から流れてきている。その山々は天空山脈にも連なる大山脈の一部でこの大陸を南北に分断しているそうだ。地理的にはこの山脈の北に三日月泉のあるあの砂漠があるらしい。
そんな場所に位置するエイブラだが、首都というだけあって高さ 7 ~ 8 メートルはあろうかという巨大な城壁に囲まれた城塞都市だ。
私たちが今通っているこの広いメインストリートの両側の建物はイザールのように土レンガではなく石造りのしっかりとした建物で、まるで計画されたかのように統一されたデザインの建物が整然と立ち並んでいる。街路樹も等間隔に植えられていて、良く計画された都市であることが見て取れる。
既に私たちが来ることは知らされていたのか、私たちを出迎える市民がメインストリートの端で歓迎をしてくれているのだが……。
全員腹ばいでこちらを見ているのは何とも不気味な光景だ。
いや、大歓迎で小旗を振ってほしいとか、そういう話ではないんだけど、こう、ほら。
普通にしてほしいと思うのは私だけではないと思う。
そんな不思議な光景を屋根のない馬車――この町に入る前に乗り換えたのだ――から手を振りながら眺めるというのは何ともシュールで居心地がすこぶる悪い。
あまりの居心地の悪さから、私たちは口も開かず無言のまま馬車に揺られて通りを進むのだった。
****
そんなこんなで町の中心にある美しい宮殿にやってきた。この宮殿は中央の巨大な広場を囲むように整然とした大理石の三階建ての建物が並んでおり、その奥には玉ねぎ型のドームがある神殿と一体となっている。その神殿は美しい青色をしており、近づいてみると青のタイルを基調としてエメラルドグリーンや黄色、白などの色々な色で細かく幾何学模様の細工が施されている。
いや、これはすごい。圧巻だ。
「さ、聖女様。こちらへ」
私がしばし見とれていると案内の人に促されたので建物の中へと入る。
建物の内部も同じようにタイルで細かい装飾が施されており、とても厳かな雰囲気を漂わせている。
そんな厳かな雰囲気の中、豪華な格好をした人たちが私たちを出迎えてくれた。もちろん、例の地面にビタンのお祈りでだ。
それから一連の流れをやった後に自己紹介をされた。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様。我らがイエロープラネット首長国連邦へようこそお越しいただきました。私はこのイエロープラネット首長国連邦の大統領を務めておりますシャリーフ、こちらはエイブラ首長のマタルでございます」
「はじめまして、フィーネ・アルジェンタータです。こちらから順にクリスティーナ、シズク・ミエシロ、ルミアです」
「これはこれは。神に感謝いたします」
なるほど。この国は大統領もこのお祈りのポーズを私にやるのか。という事は、ブルースター的な感じなのかな?
それから私たちは大統領に連れられて宮殿の中を案内され、そして会談を行うとされる部屋へと案内された。
「さ、聖女様。どうぞおかけになってください」
「ありがとうございます」
私が大統領に促されて腰かけると早速会談が始まった。
「まずは、こちらの親書をお渡しします。これはホワイトムーン王国の国王よりシャリーフ大統領にとお預かりしたものです」
私は収納から封筒を取り出して大統領に差し出す。
「ありがとうございます」
その封筒を恭しく受け取ると、すぐに開封して中身を確認した。大統領の顔がすぐに険しくなる。
「聖女様。ブラックレインボー帝国の件、まことでしょうか? あの国がこのようなことをするとは……」
「残念ながら事実です。ブラックレインボー帝国は死なない兵と魔物を使役してホワイトムーン王国を攻撃してきました。貴国にも侵略の手が伸びる可能性がありますので私がこうして使者として親書を運んでまいりました」
「左様ですか。その死なない兵に対抗する術を聖女様が我々に授けて下さると?」
「はい。このまま人々が殺されるのを黙ってみているわけにはいきませんから」
「感謝いたします。さすがは聖女様でらっしゃいますな」
「いえ。仕事ですし、適正な対価は頂くつもりですからお気遣いなく」
「……左様でございますか」
どうやらこの表情を見るに、タダでやってもらえると思っていたらしい。
「分かりました。ところで聖女様。ブラックレインボー帝国は何故そのような事を?」
「それは私たちも分かりません。あ、でも確かサラさんのお兄さんがクーデーター? を起こして皇帝になったって言っていましたね。ねぇ、サラさん?」
私が不用意にそう発言したことで部屋の中に緊張が走ったのだった。
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