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滅びの神託
第十章第18話 聖女様は忘れない
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翌日の早朝に起床した私たちは朝食を済ませると、グウェナエルさんの屋敷の入口へとやってきた。そこにはすでに今回の魔物退治に同行してくれるらしい騎士団の皆さんが集まっている。
「聖女様。おはようございます」
「おはようございます」
集まっていた騎士たちの中から一人の男性が歩み出てきた。かなり豪華な鎧を着ているこの人とはどこかで会ったような気がするぞ?
ええと……あ! そうだ! こういうときこそ【人物鑑定】の出番じゃないかな?
そう考えた私は早速目の前の男性に【人物鑑定】を使ってみた。
ええと、なになに?
『第五騎士団の団長。会ったのは一昨年の秋、ホワイトムーン王国王都の王城の会議室にて一度のみ』
あ! そうだった! アルフォンソが攻めてきたときに、騎士団の団長さんたちと会ったあのときにいた人だ!
「ええと、お久しぶりですね。団長さん」
「おお! まさか覚えていただけていたとは! その節は自己紹介すらできずに申し訳ございませんでした」
「いえ。緊急事態でしたから」
王様がかなり急いで会議を進めていたので特に自己紹介をする間もなく終わってしまったのだ。あの時は役職がわかれば良かったし、それに第五騎士団から兵力を回すという話にもならなかったので特に会話もしていない。
「恐縮でございます。私は第五騎士団の団長を拝命しておりますエンゾ・カポトリアスと申します」
「フィーネ・アルジェンタータです。よろしくお願いいたします」
「ははっ!」
エンゾさんは何やら感心した様子だ。どうやら会話すらしていないにもかかわらず私がエンゾさんを認識していたことに感動しているらしい。
だがそもそも覚えていたわけではなく、【人物鑑定】のスキルでカンニングをしているだけなわけだが……。
「それにしても、やはり聖女様は一度会った者のことは決して忘れないという伝承は本当だったのですね!」
「そうなんですか?」
「はい。大変有名な伝承でございます。歴代の聖女様はたとえどれほど些細なことでも一度お会いした者のことは決してお忘れにならず、何十年と経った後でも一目見ただけでその相手の名前をピタリと言い当てるのだそうです」
「そ、そうだったんですね……」
ええと、もしかして歴代聖女は全員この【人物鑑定】を持っていたってこと?
ということはもしかすると、聖女が一度会った人を忘れないようにと与えられるスキルなのかもしれない。何しろ、聖女はみんなの希望を背負った存在だからね。遥か昔に一度会っただけの聖女様が自分の名前を覚えていたら、そりゃあみんな感動するだろう。
いや、うん。たしかに希望のようなものを持ちそうな気はするけれど、それってどうなんだろう。何の解決にもなっていないような?
って、そうか。聖女は偶像だもんね。何か役割が求められているわけではないのだから、なんとなく希望が持てればそれでいいのかもしれない。
よし。このスキルはしっかりと使い込んでいくことにしよう。便利だしね。
「きっとこれも神にご加護をいただいているからなのでしょうな。神に感謝を!」
そう言ってエンゾさんはいきなりブーンからのジャンピング土下座を決めてみせた。
おおっと。突然で驚いたが、これはかなりの演技だった。姿勢もキレも申し分ないし、これは8点をあげてもいい気がする。ただ、私の目の前であるということもあるのかもしれないが、やや遠慮があったように見受けられた。というのも、全体の演技の完成度は高かったにもかかわらずジャンプの迫力がいまいちだったのだ。次回はぜひともジャンプにも全力で取り組み、より完成度の高い演技を目指してほしいところだ。
などと考えていることはおくびにも出さず、いつもの魔法の言葉でエンゾさんを起こしてあげた。そんなことよりも、魔物退治の予定を知りたい。
「それで、団長さん。サマルカの周辺の状況はどうなんですか?」
私がそう尋ねると、エンゾさんはすぐに真顔となった。
「はい。正直に申し上げまして、芳しくないというのが現状です。第五騎士団総出で魔物どもの掃討に当たることでどうにか均衡を保ってはおりますものの、ギリギリの状況です。これ以上魔物の数が増えれば、どこかを諦めるという選択肢も検討する必要が出てくるでしょう」
「そんなにですか……」
どうやらここはセムノスとは違ってかなり大変な状況のようだ。それでも南部地域と違ってなんとかなっているのは、やはり戦争による被害を受けなかったおかげだろうか。
「わかりました。では、なるべく多くの魔物たちのいる場所へと連れていってください。私も魔物を早く浄化してあげたいですから」
「ははっ!」
エンゾさんはそう言って再びブーンからのジャンピング土下座を決めたのだった。
うん。さっきと一緒で8点かな。
「聖女様。おはようございます」
「おはようございます」
集まっていた騎士たちの中から一人の男性が歩み出てきた。かなり豪華な鎧を着ているこの人とはどこかで会ったような気がするぞ?
ええと……あ! そうだ! こういうときこそ【人物鑑定】の出番じゃないかな?
そう考えた私は早速目の前の男性に【人物鑑定】を使ってみた。
ええと、なになに?
『第五騎士団の団長。会ったのは一昨年の秋、ホワイトムーン王国王都の王城の会議室にて一度のみ』
あ! そうだった! アルフォンソが攻めてきたときに、騎士団の団長さんたちと会ったあのときにいた人だ!
「ええと、お久しぶりですね。団長さん」
「おお! まさか覚えていただけていたとは! その節は自己紹介すらできずに申し訳ございませんでした」
「いえ。緊急事態でしたから」
王様がかなり急いで会議を進めていたので特に自己紹介をする間もなく終わってしまったのだ。あの時は役職がわかれば良かったし、それに第五騎士団から兵力を回すという話にもならなかったので特に会話もしていない。
「恐縮でございます。私は第五騎士団の団長を拝命しておりますエンゾ・カポトリアスと申します」
「フィーネ・アルジェンタータです。よろしくお願いいたします」
「ははっ!」
エンゾさんは何やら感心した様子だ。どうやら会話すらしていないにもかかわらず私がエンゾさんを認識していたことに感動しているらしい。
だがそもそも覚えていたわけではなく、【人物鑑定】のスキルでカンニングをしているだけなわけだが……。
「それにしても、やはり聖女様は一度会った者のことは決して忘れないという伝承は本当だったのですね!」
「そうなんですか?」
「はい。大変有名な伝承でございます。歴代の聖女様はたとえどれほど些細なことでも一度お会いした者のことは決してお忘れにならず、何十年と経った後でも一目見ただけでその相手の名前をピタリと言い当てるのだそうです」
「そ、そうだったんですね……」
ええと、もしかして歴代聖女は全員この【人物鑑定】を持っていたってこと?
ということはもしかすると、聖女が一度会った人を忘れないようにと与えられるスキルなのかもしれない。何しろ、聖女はみんなの希望を背負った存在だからね。遥か昔に一度会っただけの聖女様が自分の名前を覚えていたら、そりゃあみんな感動するだろう。
いや、うん。たしかに希望のようなものを持ちそうな気はするけれど、それってどうなんだろう。何の解決にもなっていないような?
って、そうか。聖女は偶像だもんね。何か役割が求められているわけではないのだから、なんとなく希望が持てればそれでいいのかもしれない。
よし。このスキルはしっかりと使い込んでいくことにしよう。便利だしね。
「きっとこれも神にご加護をいただいているからなのでしょうな。神に感謝を!」
そう言ってエンゾさんはいきなりブーンからのジャンピング土下座を決めてみせた。
おおっと。突然で驚いたが、これはかなりの演技だった。姿勢もキレも申し分ないし、これは8点をあげてもいい気がする。ただ、私の目の前であるということもあるのかもしれないが、やや遠慮があったように見受けられた。というのも、全体の演技の完成度は高かったにもかかわらずジャンプの迫力がいまいちだったのだ。次回はぜひともジャンプにも全力で取り組み、より完成度の高い演技を目指してほしいところだ。
などと考えていることはおくびにも出さず、いつもの魔法の言葉でエンゾさんを起こしてあげた。そんなことよりも、魔物退治の予定を知りたい。
「それで、団長さん。サマルカの周辺の状況はどうなんですか?」
私がそう尋ねると、エンゾさんはすぐに真顔となった。
「はい。正直に申し上げまして、芳しくないというのが現状です。第五騎士団総出で魔物どもの掃討に当たることでどうにか均衡を保ってはおりますものの、ギリギリの状況です。これ以上魔物の数が増えれば、どこかを諦めるという選択肢も検討する必要が出てくるでしょう」
「そんなにですか……」
どうやらここはセムノスとは違ってかなり大変な状況のようだ。それでも南部地域と違ってなんとかなっているのは、やはり戦争による被害を受けなかったおかげだろうか。
「わかりました。では、なるべく多くの魔物たちのいる場所へと連れていってください。私も魔物を早く浄化してあげたいですから」
「ははっ!」
エンゾさんはそう言って再びブーンからのジャンピング土下座を決めたのだった。
うん。さっきと一緒で8点かな。
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