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滅びの神託
第十章第56話 炎龍王との死闘(4)
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「フィーネ殿、結界を身にまとうことはできないでござるか?」
「え?」
「移動する船に結界を掛けたでござろう? あれと同じようにフィーネ殿自身に掛ければわざわざ止まっている必要はないのではござらんか?」
「あ!」
すごい。シズクさんは天才かもしれない。
私は自分自身をすっぽりと包み込むように球状の結界を作り出してみる。
「できましたね……」
「これで安心して攻められるでござるよ!」
そう言ってシズクさんは再び飛び出していく。
「フィーネ様……」
「炎龍王の攻撃は避けられますから、もう大丈夫です。クリスさんもお願いします」
「……わかりました」
心配そうにしているクリスさんではあるが、再び前線へと飛び出していく。
私は再び炎龍王の頭ゴチンから始まる一連のルーティンをこなす。
そして先ほどと同じように避けた隙を狙って虎の魔物が襲い掛かってきた。しかも今度は一頭かけでなく三頭だ。
どうやら炎龍王は私のことが一番危険だと認識しているのだろう。
まあ、ただ単に頭ゴチンのせいで怒らせているのかもしれないけれど。
三頭にまとめて襲い掛かられたもののその爪は、そしてその炎は結界によって阻まれ私に届くことはない。
結界を破ろうとしているようで、ギリギリと力を込めているのが見てとれる。
だが当然、この程度でどうこうなるほど私の結界は弱くない。
うん。大丈夫。これなら問題ない。
って、あれ? もしかして?
ふと思いついた私は【影操術】を使って影を伸ばして地面を這わせて三頭の足元へと向かわせた。そして刃を作り出すと勢いよく上へと伸ばし、そのままブスリと突き刺した。
「ガッ」
「グゴッ」
「ピギャッ!?」
三頭がそれぞれに悲鳴を上げた。何やら一頭だけ妙な声を上げたような気もするが、気にしないでおこう。
とにかく、傷を与えることに成功した。
そこで私は影の刃先から浄化魔法を三連続で発動させる。
「浄化! 浄化! 浄化!」
するとその三頭は瞬く間に塵となって消滅した。
うん、よし。うまくいった。傷口に浄化魔法を撃ち込めば倒せるなら、と考えたのだが大成功だ。
「フィーネ様!」
「大丈夫です! 私の守りは気にせず、あの魔物たちを倒してください。早く炎龍王を倒さないと!」
「はい!」
クリスさんはどこか嬉しそうにそう返事をすると、再び魔物たちに斬りかかっていくのだった。
◆◇◆
そのままかなりの時間が経過した。お互いに決め手がない状態となり、完全な膠着状態へと陥ってしまったのだ。
炎龍王が飛び立とうとすれば私が頭ゴチンで邪魔をする。あの黒いブレスもあれ以降は全て防壁で防いでいるし、青いレーザーブレスも見てから余裕で躱せるのだ。だから炎龍王としては次々の魔物を作り出して私たちの疲労を待つくらいしかできることがない。
一方の私たちもあまりに分厚い魔物の軍団に阻まれ、炎龍王のところまでは中々到達できていない。
それに到達できたとしても決定打を与えることができないのだ。二人が斬ったとしてもすぐに再生してしまい、傷口を浄化したとしてもその再生を止めることはできないからだ
完全な膠着状態に陥っているとはいえ、実のところ戦況は私たちにとってかなり不利だ。
今はまだなんとかなっているものの、このまま戦い続ければ体力が尽きるのは私たちのほうだろう。
「クリスさん。シズクさん。 前に出ましょう。このまま戦い続けても埒が明かないです」
「どうするでござるか?」
「本体を叩きましょう」
「また再生するでござるよ? 浄化しても再生は止められなかったでござるしな。それとも、リーチェ殿の種を使うでござるか?」
ん? リーチェの種?
「それです! それをまだ試していませんでした!」
「ここで召喚するでござるか? リーチェ殿に戦闘能力はないのでござろう?」
「いえ。リーチェをこんな戦場に召喚するわけにはいきません。ですがトゥカットでの一件以来毎日リーチェに種を作って貰っていたので、収納の中にたくさん入っています。本当は王都に着いたら配ってもらおうと思っていたんですけど……」
「分かったでござる。拙者とクリス殿で必ず状況を作ってみせるでござる」
「フィーネ様、お任せください! 必ずや!」
「お願いします」
二人はそうして炎龍王に向かって道を切り開くべく突撃していった。私はというとその後ろを小走りについていき、襲ってくる魔物を影の刃でブスリと刺して浄化していく。
私たちの接近を確認した炎龍王は大きく息を吸い込むと、極太の赤いレーザーブレスを吐き出した。
クリスさんたちはサッと躱し、私は結界を反射モードに切り替えて上空へと受け流す。
その隙にクリスさんたちは左右に分かれて展開しており、炎龍王の周りを回るように動いて攪乱する。
炎龍王はその二人を交互に見ており、どちらを攻撃するか悩んでいる様子だ。その隙に私も炎龍王の目の前まで到着する。
「さあ、これでどうでござるか!」
シズクさんが先に動き、尻尾に一撃を加えた。傷つけられた炎龍王は尻尾を大きく振ってシズクさんを弾き飛ばそうとしたので、私はそこに防壁を設置してその一撃を止める。
ドスン、というとても重たい音と共に尻尾の一撃は受け止められ、炎龍王はバランスを崩した。
その重心が乗った片方の足にクリスさんが渾身の袈裟斬りを叩き込んだ。その一撃は太い炎龍王の足を切断し、バランスを失った炎龍王は地面に崩れ落ちる。
巨大な地響きと共にすさまじい土埃が宙を舞い、視界を閉ざす。
「フィーネ様! 今です!」
「はい!」
私は全速力で炎龍王に駆け寄ると、【影操術】を発動して影の刃を作り出した。
そしてその刃の先端でリーチェの種を埋め込むと、みるみる再生していく炎龍王の足の傷口に種ごと突き刺した!
「え?」
「移動する船に結界を掛けたでござろう? あれと同じようにフィーネ殿自身に掛ければわざわざ止まっている必要はないのではござらんか?」
「あ!」
すごい。シズクさんは天才かもしれない。
私は自分自身をすっぽりと包み込むように球状の結界を作り出してみる。
「できましたね……」
「これで安心して攻められるでござるよ!」
そう言ってシズクさんは再び飛び出していく。
「フィーネ様……」
「炎龍王の攻撃は避けられますから、もう大丈夫です。クリスさんもお願いします」
「……わかりました」
心配そうにしているクリスさんではあるが、再び前線へと飛び出していく。
私は再び炎龍王の頭ゴチンから始まる一連のルーティンをこなす。
そして先ほどと同じように避けた隙を狙って虎の魔物が襲い掛かってきた。しかも今度は一頭かけでなく三頭だ。
どうやら炎龍王は私のことが一番危険だと認識しているのだろう。
まあ、ただ単に頭ゴチンのせいで怒らせているのかもしれないけれど。
三頭にまとめて襲い掛かられたもののその爪は、そしてその炎は結界によって阻まれ私に届くことはない。
結界を破ろうとしているようで、ギリギリと力を込めているのが見てとれる。
だが当然、この程度でどうこうなるほど私の結界は弱くない。
うん。大丈夫。これなら問題ない。
って、あれ? もしかして?
ふと思いついた私は【影操術】を使って影を伸ばして地面を這わせて三頭の足元へと向かわせた。そして刃を作り出すと勢いよく上へと伸ばし、そのままブスリと突き刺した。
「ガッ」
「グゴッ」
「ピギャッ!?」
三頭がそれぞれに悲鳴を上げた。何やら一頭だけ妙な声を上げたような気もするが、気にしないでおこう。
とにかく、傷を与えることに成功した。
そこで私は影の刃先から浄化魔法を三連続で発動させる。
「浄化! 浄化! 浄化!」
するとその三頭は瞬く間に塵となって消滅した。
うん、よし。うまくいった。傷口に浄化魔法を撃ち込めば倒せるなら、と考えたのだが大成功だ。
「フィーネ様!」
「大丈夫です! 私の守りは気にせず、あの魔物たちを倒してください。早く炎龍王を倒さないと!」
「はい!」
クリスさんはどこか嬉しそうにそう返事をすると、再び魔物たちに斬りかかっていくのだった。
◆◇◆
そのままかなりの時間が経過した。お互いに決め手がない状態となり、完全な膠着状態へと陥ってしまったのだ。
炎龍王が飛び立とうとすれば私が頭ゴチンで邪魔をする。あの黒いブレスもあれ以降は全て防壁で防いでいるし、青いレーザーブレスも見てから余裕で躱せるのだ。だから炎龍王としては次々の魔物を作り出して私たちの疲労を待つくらいしかできることがない。
一方の私たちもあまりに分厚い魔物の軍団に阻まれ、炎龍王のところまでは中々到達できていない。
それに到達できたとしても決定打を与えることができないのだ。二人が斬ったとしてもすぐに再生してしまい、傷口を浄化したとしてもその再生を止めることはできないからだ
完全な膠着状態に陥っているとはいえ、実のところ戦況は私たちにとってかなり不利だ。
今はまだなんとかなっているものの、このまま戦い続ければ体力が尽きるのは私たちのほうだろう。
「クリスさん。シズクさん。 前に出ましょう。このまま戦い続けても埒が明かないです」
「どうするでござるか?」
「本体を叩きましょう」
「また再生するでござるよ? 浄化しても再生は止められなかったでござるしな。それとも、リーチェ殿の種を使うでござるか?」
ん? リーチェの種?
「それです! それをまだ試していませんでした!」
「ここで召喚するでござるか? リーチェ殿に戦闘能力はないのでござろう?」
「いえ。リーチェをこんな戦場に召喚するわけにはいきません。ですがトゥカットでの一件以来毎日リーチェに種を作って貰っていたので、収納の中にたくさん入っています。本当は王都に着いたら配ってもらおうと思っていたんですけど……」
「分かったでござる。拙者とクリス殿で必ず状況を作ってみせるでござる」
「フィーネ様、お任せください! 必ずや!」
「お願いします」
二人はそうして炎龍王に向かって道を切り開くべく突撃していった。私はというとその後ろを小走りについていき、襲ってくる魔物を影の刃でブスリと刺して浄化していく。
私たちの接近を確認した炎龍王は大きく息を吸い込むと、極太の赤いレーザーブレスを吐き出した。
クリスさんたちはサッと躱し、私は結界を反射モードに切り替えて上空へと受け流す。
その隙にクリスさんたちは左右に分かれて展開しており、炎龍王の周りを回るように動いて攪乱する。
炎龍王はその二人を交互に見ており、どちらを攻撃するか悩んでいる様子だ。その隙に私も炎龍王の目の前まで到着する。
「さあ、これでどうでござるか!」
シズクさんが先に動き、尻尾に一撃を加えた。傷つけられた炎龍王は尻尾を大きく振ってシズクさんを弾き飛ばそうとしたので、私はそこに防壁を設置してその一撃を止める。
ドスン、というとても重たい音と共に尻尾の一撃は受け止められ、炎龍王はバランスを崩した。
その重心が乗った片方の足にクリスさんが渾身の袈裟斬りを叩き込んだ。その一撃は太い炎龍王の足を切断し、バランスを失った炎龍王は地面に崩れ落ちる。
巨大な地響きと共にすさまじい土埃が宙を舞い、視界を閉ざす。
「フィーネ様! 今です!」
「はい!」
私は全速力で炎龍王に駆け寄ると、【影操術】を発動して影の刃を作り出した。
そしてその刃の先端でリーチェの種を埋め込むと、みるみる再生していく炎龍王の足の傷口に種ごと突き刺した!
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