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欲と業
第十一章第21話 精霊弓士
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次の朝起きると、なにやらルーちゃんがものすごく嬉しそうにしている。どうやら悩みは解消されたらしい。
「ルーちゃん、おはようございます」
「あっ! 姉さま! おはようございますっ!」
「なんだかご機嫌ですね?」
「えへへ。 やっぱりわかります?」
「はい」
「聞いてください! あたし、精霊弓士になったんですっ!」
「精霊弓士?」
「はい! 本当は百歳くらいでなれる職業らしいんですけど、なれたんです!」
ええと? 何を言っているのかよく分からないけど、夕飯を食べた後に転職したのかな?
それに百歳っていうのはなんのことだろうか? 年齢制限でもあるのかな?
いやでもルーちゃんは見た目どおりの年齢だったはずだ。ということは、飛び級的な何かだろうか?
「その精霊弓士? というのは何ができるんですか?」
「えへへ、なんとですね。【精霊弓術】が使えるようになりましたよ! それに【気配察知】と【隠密
】、それから【身体強化】も使えるようになったんです!」
ルーちゃんはいかにも「えっへん」という擬音語が似合いそうな感じで報告してくれている。
「それはすごいですね」
「えへへ。これで、姉さまのお役に立てますっ!」
「え? ああ、そういうことですか。ルーちゃん、ありがとうございます」
「えへへ。頑張りますっ!」
ルーちゃんは嬉しそうにそう答えたのだった。
◆◇◆
「なるほど。精霊弓士などという職業があるのですね。フィーネ様、きっとそれはエルフ固有の職業なのでしょう」
朝食の食卓を囲んでいるときに精霊弓士の話をすると、クリスさんがそう答えた。
「そうなんですか?」
「はい。レベルの上がった弓士は狩人という職業に転職することが普通です。狩人ですと罠に関するスキルも覚えます。ただ、精霊と心を通わせるエルフであればその力を借りる職業のほうが好まれるのでしょう」
なるほど。人間が弓を使うのは敵を倒すときか動物を狩るときだもんね。
「ルミア、おめでとう。頑張ったな」
「はいっ!」
「努力が報われたでござるな。百年の修行をたった数年で終えるなど、普通できることではないでござるよ」
「はいっ!」
ああ、百年ってそいういう意味か。私たちと一緒に旅をしていればものすごい数の魔物を倒している。そのおかげで百年かけて上げる分のレベルが上がったのだろう。
というか、修行でどうにかなる話ならわざわざ新人騎士たちをあんな危険にさらしてまで魔物退治に行かせる必要はない。
あれ? そういえばどうして修行してもレベルアップしないんだろうか?
なんとなくおかしい気がするけれど……。
うーん?
まあ、いいか。この世界はそういうものなんだしね。
そんなことよりも、早く食事にしよう。
私は目の前にある朝食のライ麦パンにバターを塗り、口に運ぶ。
もちもちとしていながらもボロッとなる独特な食感に加えてライ麦の香りと豊潤なバターの香りが口いっぱいに広がる。
うんうん。白パンとは趣が違ってこれも美味しいよね。
それと一緒に出てくるおかずは野菜とトナカイ肉を煮込んだ塩味のあっさりスープだ。
こういう朝食であれば、やることは決まっている。
そう。ライ麦パンをスープにディップして食べるのだ。
というわけで私はライ麦パンをちょんちょんとスープにディップすると、スープが垂れないようにそっと口に運んだ。
この独特なライ麦パンの食感はスープによって失われるが、野菜のうま味とトナカイ肉のうま味が溶けだしたスープがライ麦の豊かな香りと一緒になり、バターのコクと塩味が口の中で混ざりあう。
そう。この朝食は重厚なオーケストラの奏でるようなハーモニーではないが、街角音楽隊の奏でる素朴で親しみやすいハーモニーなのだ。
シンプルな朝食にはシンプルな良さがある。
うん。やっぱりいいよね。こういう朝食も。
◆◇◆
朝食を堪能した私たちは、ルーちゃんの新しい【精霊弓術】を見せてもらおうと近くの森にやってきた。
「見ててくださいっ!」
そう言ってルーちゃんは弓を構えた。
しかしなんと! ルーちゃんは矢を番えていないではないか!
「ルーちゃん? 矢はどうしたんですか?」
「はいっ! 大丈夫ですっ!」
ルーちゃんは自信満々にそう答えるが、どういうことだろうか?
ん? ルーちゃんの弓に何かの気配が集まってきているような……?
すると突如、ルーちゃんの右手に白い矢のようなものが出現した。
「えいっ!」
ルーちゃんが矢を放つような仕草をすると、その白い矢のようなものがものすごいスピードで飛んでいった。
「えっ?」
「これは!」
目にも止まらぬ速さで飛んでいったそれは的にしていた大岩に見事に命中した。しかもその大岩の一部が吹き飛んでいる!
「なかなか、でござるな」
あれ? なんか、普通に矢を射るより強いような?
「すごい! ありがとう! みんなっ!」
するとルーちゃんの弓から何かが離れていくような気がする。
ああ、なるほど。【精霊弓術】というのは、精霊の力を借りて矢を射ることができるスキルらしい。
「ルーちゃん、すごいですね」
「えへへ。ありがとうございますっ!」
ルーちゃんは心底嬉しそうにそう答えたのだった。
「ルーちゃん、おはようございます」
「あっ! 姉さま! おはようございますっ!」
「なんだかご機嫌ですね?」
「えへへ。 やっぱりわかります?」
「はい」
「聞いてください! あたし、精霊弓士になったんですっ!」
「精霊弓士?」
「はい! 本当は百歳くらいでなれる職業らしいんですけど、なれたんです!」
ええと? 何を言っているのかよく分からないけど、夕飯を食べた後に転職したのかな?
それに百歳っていうのはなんのことだろうか? 年齢制限でもあるのかな?
いやでもルーちゃんは見た目どおりの年齢だったはずだ。ということは、飛び級的な何かだろうか?
「その精霊弓士? というのは何ができるんですか?」
「えへへ、なんとですね。【精霊弓術】が使えるようになりましたよ! それに【気配察知】と【隠密
】、それから【身体強化】も使えるようになったんです!」
ルーちゃんはいかにも「えっへん」という擬音語が似合いそうな感じで報告してくれている。
「それはすごいですね」
「えへへ。これで、姉さまのお役に立てますっ!」
「え? ああ、そういうことですか。ルーちゃん、ありがとうございます」
「えへへ。頑張りますっ!」
ルーちゃんは嬉しそうにそう答えたのだった。
◆◇◆
「なるほど。精霊弓士などという職業があるのですね。フィーネ様、きっとそれはエルフ固有の職業なのでしょう」
朝食の食卓を囲んでいるときに精霊弓士の話をすると、クリスさんがそう答えた。
「そうなんですか?」
「はい。レベルの上がった弓士は狩人という職業に転職することが普通です。狩人ですと罠に関するスキルも覚えます。ただ、精霊と心を通わせるエルフであればその力を借りる職業のほうが好まれるのでしょう」
なるほど。人間が弓を使うのは敵を倒すときか動物を狩るときだもんね。
「ルミア、おめでとう。頑張ったな」
「はいっ!」
「努力が報われたでござるな。百年の修行をたった数年で終えるなど、普通できることではないでござるよ」
「はいっ!」
ああ、百年ってそいういう意味か。私たちと一緒に旅をしていればものすごい数の魔物を倒している。そのおかげで百年かけて上げる分のレベルが上がったのだろう。
というか、修行でどうにかなる話ならわざわざ新人騎士たちをあんな危険にさらしてまで魔物退治に行かせる必要はない。
あれ? そういえばどうして修行してもレベルアップしないんだろうか?
なんとなくおかしい気がするけれど……。
うーん?
まあ、いいか。この世界はそういうものなんだしね。
そんなことよりも、早く食事にしよう。
私は目の前にある朝食のライ麦パンにバターを塗り、口に運ぶ。
もちもちとしていながらもボロッとなる独特な食感に加えてライ麦の香りと豊潤なバターの香りが口いっぱいに広がる。
うんうん。白パンとは趣が違ってこれも美味しいよね。
それと一緒に出てくるおかずは野菜とトナカイ肉を煮込んだ塩味のあっさりスープだ。
こういう朝食であれば、やることは決まっている。
そう。ライ麦パンをスープにディップして食べるのだ。
というわけで私はライ麦パンをちょんちょんとスープにディップすると、スープが垂れないようにそっと口に運んだ。
この独特なライ麦パンの食感はスープによって失われるが、野菜のうま味とトナカイ肉のうま味が溶けだしたスープがライ麦の豊かな香りと一緒になり、バターのコクと塩味が口の中で混ざりあう。
そう。この朝食は重厚なオーケストラの奏でるようなハーモニーではないが、街角音楽隊の奏でる素朴で親しみやすいハーモニーなのだ。
シンプルな朝食にはシンプルな良さがある。
うん。やっぱりいいよね。こういう朝食も。
◆◇◆
朝食を堪能した私たちは、ルーちゃんの新しい【精霊弓術】を見せてもらおうと近くの森にやってきた。
「見ててくださいっ!」
そう言ってルーちゃんは弓を構えた。
しかしなんと! ルーちゃんは矢を番えていないではないか!
「ルーちゃん? 矢はどうしたんですか?」
「はいっ! 大丈夫ですっ!」
ルーちゃんは自信満々にそう答えるが、どういうことだろうか?
ん? ルーちゃんの弓に何かの気配が集まってきているような……?
すると突如、ルーちゃんの右手に白い矢のようなものが出現した。
「えいっ!」
ルーちゃんが矢を放つような仕草をすると、その白い矢のようなものがものすごいスピードで飛んでいった。
「えっ?」
「これは!」
目にも止まらぬ速さで飛んでいったそれは的にしていた大岩に見事に命中した。しかもその大岩の一部が吹き飛んでいる!
「なかなか、でござるな」
あれ? なんか、普通に矢を射るより強いような?
「すごい! ありがとう! みんなっ!」
するとルーちゃんの弓から何かが離れていくような気がする。
ああ、なるほど。【精霊弓術】というのは、精霊の力を借りて矢を射ることができるスキルらしい。
「ルーちゃん、すごいですね」
「えへへ。ありがとうございますっ!」
ルーちゃんは心底嬉しそうにそう答えたのだった。
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