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欲と業
第十一章第25話 しゃべる馬?
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「こちらの馬にございます」
そういってヨハンさんが連れてきたのは立派な体格の白馬だ。馬の良し悪しはよく分からないけれど、なんとなくすごそうな気がする。
「こんにちは。ええと、名前はなんと言うんですか?」
「聖女様に献上させていただく馬に我々が名前を付けるなどとんでもない! ぜひ、聖女様に名付けていただきたく!」
「え? 私が?」
ええと、うーん?
「フィーネ様、よく仰っているシルバーはいかがでしょうか?」
「なるほど。じゃあ、シルバーでいいですか?」
すると馬はぶるる、と言ってイヤそうにしているような気がする。
「気に入らないですか?」
するとまたもやぶるる、と返事をした。
すごい! まるで言葉が分かっているみたいじゃないか!
そういえば、しゃべる馬っていう話がどこかであったような気がするぞ?
ええと……。
「あ、そうだ! じゃあ、エドはどうでしょうか?」
するとまたもやぶるる、と返事をしてくれた。どことなく嬉しそうにしているような気がする。
「はい。それじゃあ今日からあなたはエドです。よろしくお願いしますね」
するとエドは再びぶるる、と返事をした。
すごい。本当に言葉が分かっているんだろうか?
いやいや、まさかね。馬は賢い動物だと聞いたことはあるけど、喋る馬なんているはずがない。それこそ、アイリスタウンの子たちのように進化の秘術でも使わない限りは無理なはずだ。
「おお! なんと素晴らしい名前なのでしょう! 聖エド号!」
そんな私たちの様子を見てヨハンさんがなぜか大げさに喜んでいるうえ、何やら余計なものが付け加えられている。
これは一体……いや、待てよ? なんだかどうでもいいことな気がするので、聞かないことにしよう。それこそ、たとえば聖女様の馬は聖馬だから頭に聖とつける、とかね。
ただの偶像なんだからそんなに気にする必要もないと思うけれど、これで瘴気が減るならそれはそれでアリなのだろう。
まあ、本当に減っているのかは疑問な気はするけれど。
「フィーネ様がついに聖馬を!」
うん? クリスさん?
まさか……。
「聖エド号、よろしく頼むぞ!」
「ええぇ」
◆◇◆
こうしてエドを仲間にした私たちは、裁判所に戻ってきた。シズクさんたちと合流するためだ。
裁判所の前にはすでにシズクさんとルーちゃんがやってきており、私たちを見かけるとルーちゃんが全身をいっぱいに伸ばしながら大きく手を振ってきた。
「お待たせしました」
「姉さまっ! この子ですか? かわいいですねっ!」
「はい。この子はエドですよ」
「よろしくねっ! エドっ!」
ちょっとテンションが高めのルーちゃんに対してエドは特に反応をしておらず、落ち着いた様子で私のほうを見ている。
あれ? 反応していないね。
「エド、この子は私の妹分のルーちゃんです。よろしくお願いしますね」
するとエドはぶるる、と返事をした。
うーん? 本当に言葉を理解している……のかな?
なんだかだんだん怪しくなってきたぞ?
「こっちはシズクさんです」
「シズク・ミエシロでござ――」
エドはシズクさんが喋り終わるのを待たずにぶるる、と返事をした。
うん。やっぱり偶然だったようだ。言葉を理解しているわけではなく、話しかけられたっぽいのに反応しているだけなのだろう。
いや、それができるだけでも十分賢い気がするね。
「それで、ホテルはどうでしたか?」
「はいっ! とっても美味しそうなご飯を出してくれそうなホテルを見つけましたっ!」
「それは楽しみですね。それじゃあ、馬車を返してもらいに行きましょう」
こうして私たちは返還手続きをするため、裁判所の中へと向かうのだった。
◆◇◆
「ふざけるな!」
無事に返還手続きを終え職員さんに私たちの馬車が保管されている場所へ案内してもらっていると、突如裁判所内に怒号が鳴り響いた。
「法の下に公平な判断を下すのが裁判所の仕事だろう! それをなぜグレンドの連中の肩ばかり持つのだ!」
「落ち着いてください」
「取引を妨害してきたのはあいつらではないか!」
「ですから……」
「どうして関係ない我々が責任を取らなければならいのだ!」
ええと?
「お見苦しいものをお見せし、申し訳ございません」
職員さんが私たちに謝ってくるが、関係ないのに責任を取らされれば怒るのは当然な気がする。
「いえ。ただ、どうして関係ない人が責任を取らされているんですか?」
「え? あ、いえ、それは、ちょっと裁判官から聞いてみないと私ではなんとも……」
「ああ、それもそうですね」
そんな会話をしつつ、押し問答をしている人たちの脇を通り過ぎようとしたときだった。
「っ! もしや! 聖女様では!? 聖女様! どうかお助けください! 我々は犯してもいない罪を押し付けられているのです!」
職員に詰め寄っていた男性が私たちの姿を見つけるなり、そう叫びながら駆け寄ってきた。
それを止めようと警備員の人が追いすがるが、彼は素早い身のこなしでブーンからのジャンピング土下座を決めた。
ええと? ああ、うん。身のこなしには特筆すべきものがあったと思う。だが、フォームが大きく乱れたのは減点要素だが、加点要素を加味すると7点といったところだろうか?
じゃない!
ええと、なんの話だったっけ?
まあ、とりあえず起こしてから考えよう。
「神の御心のままに」
そういってヨハンさんが連れてきたのは立派な体格の白馬だ。馬の良し悪しはよく分からないけれど、なんとなくすごそうな気がする。
「こんにちは。ええと、名前はなんと言うんですか?」
「聖女様に献上させていただく馬に我々が名前を付けるなどとんでもない! ぜひ、聖女様に名付けていただきたく!」
「え? 私が?」
ええと、うーん?
「フィーネ様、よく仰っているシルバーはいかがでしょうか?」
「なるほど。じゃあ、シルバーでいいですか?」
すると馬はぶるる、と言ってイヤそうにしているような気がする。
「気に入らないですか?」
するとまたもやぶるる、と返事をした。
すごい! まるで言葉が分かっているみたいじゃないか!
そういえば、しゃべる馬っていう話がどこかであったような気がするぞ?
ええと……。
「あ、そうだ! じゃあ、エドはどうでしょうか?」
するとまたもやぶるる、と返事をしてくれた。どことなく嬉しそうにしているような気がする。
「はい。それじゃあ今日からあなたはエドです。よろしくお願いしますね」
するとエドは再びぶるる、と返事をした。
すごい。本当に言葉が分かっているんだろうか?
いやいや、まさかね。馬は賢い動物だと聞いたことはあるけど、喋る馬なんているはずがない。それこそ、アイリスタウンの子たちのように進化の秘術でも使わない限りは無理なはずだ。
「おお! なんと素晴らしい名前なのでしょう! 聖エド号!」
そんな私たちの様子を見てヨハンさんがなぜか大げさに喜んでいるうえ、何やら余計なものが付け加えられている。
これは一体……いや、待てよ? なんだかどうでもいいことな気がするので、聞かないことにしよう。それこそ、たとえば聖女様の馬は聖馬だから頭に聖とつける、とかね。
ただの偶像なんだからそんなに気にする必要もないと思うけれど、これで瘴気が減るならそれはそれでアリなのだろう。
まあ、本当に減っているのかは疑問な気はするけれど。
「フィーネ様がついに聖馬を!」
うん? クリスさん?
まさか……。
「聖エド号、よろしく頼むぞ!」
「ええぇ」
◆◇◆
こうしてエドを仲間にした私たちは、裁判所に戻ってきた。シズクさんたちと合流するためだ。
裁判所の前にはすでにシズクさんとルーちゃんがやってきており、私たちを見かけるとルーちゃんが全身をいっぱいに伸ばしながら大きく手を振ってきた。
「お待たせしました」
「姉さまっ! この子ですか? かわいいですねっ!」
「はい。この子はエドですよ」
「よろしくねっ! エドっ!」
ちょっとテンションが高めのルーちゃんに対してエドは特に反応をしておらず、落ち着いた様子で私のほうを見ている。
あれ? 反応していないね。
「エド、この子は私の妹分のルーちゃんです。よろしくお願いしますね」
するとエドはぶるる、と返事をした。
うーん? 本当に言葉を理解している……のかな?
なんだかだんだん怪しくなってきたぞ?
「こっちはシズクさんです」
「シズク・ミエシロでござ――」
エドはシズクさんが喋り終わるのを待たずにぶるる、と返事をした。
うん。やっぱり偶然だったようだ。言葉を理解しているわけではなく、話しかけられたっぽいのに反応しているだけなのだろう。
いや、それができるだけでも十分賢い気がするね。
「それで、ホテルはどうでしたか?」
「はいっ! とっても美味しそうなご飯を出してくれそうなホテルを見つけましたっ!」
「それは楽しみですね。それじゃあ、馬車を返してもらいに行きましょう」
こうして私たちは返還手続きをするため、裁判所の中へと向かうのだった。
◆◇◆
「ふざけるな!」
無事に返還手続きを終え職員さんに私たちの馬車が保管されている場所へ案内してもらっていると、突如裁判所内に怒号が鳴り響いた。
「法の下に公平な判断を下すのが裁判所の仕事だろう! それをなぜグレンドの連中の肩ばかり持つのだ!」
「落ち着いてください」
「取引を妨害してきたのはあいつらではないか!」
「ですから……」
「どうして関係ない我々が責任を取らなければならいのだ!」
ええと?
「お見苦しいものをお見せし、申し訳ございません」
職員さんが私たちに謝ってくるが、関係ないのに責任を取らされれば怒るのは当然な気がする。
「いえ。ただ、どうして関係ない人が責任を取らされているんですか?」
「え? あ、いえ、それは、ちょっと裁判官から聞いてみないと私ではなんとも……」
「ああ、それもそうですね」
そんな会話をしつつ、押し問答をしている人たちの脇を通り過ぎようとしたときだった。
「っ! もしや! 聖女様では!? 聖女様! どうかお助けください! 我々は犯してもいない罪を押し付けられているのです!」
職員に詰め寄っていた男性が私たちの姿を見つけるなり、そう叫びながら駆け寄ってきた。
それを止めようと警備員の人が追いすがるが、彼は素早い身のこなしでブーンからのジャンピング土下座を決めた。
ええと? ああ、うん。身のこなしには特筆すべきものがあったと思う。だが、フォームが大きく乱れたのは減点要素だが、加点要素を加味すると7点といったところだろうか?
じゃない!
ええと、なんの話だったっけ?
まあ、とりあえず起こしてから考えよう。
「神の御心のままに」
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