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正義と武と吸血鬼
第十二章第26話 精霊の島
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そうこうしているうちに私たちを乗せた船は進路を勝手に変え、精霊の島を左手に見るような方向に進み始めた。
「あ! カヘエさん! そっちじゃないです!」
「ならどっちだ!」
「左に曲がってください!」
「おうよ! 取舵いっぱい!」
「へい!」
カヘエさんはそう命じた。すると船はなんと右へと曲がり、島に背を向けて進み始めた。
「ヨーソロー!」
「ヨーソロー!」
いやいやいや! 反対だから!
私がツッコミを入れようとしたが、すぐにカヘエさんたちから歓声が上がった。
「やった! 霧を抜けたぞ!」
「さすがスイキョウ様のお客人だ!」
「あ、ええと……」
私が返答に困っていると、カヘエさんが不思議そうに声を上げる。
「おいおい! 俺らは北に向かって進んでるはずなのになんで西に向かってるんだ!?」
「ほ、本当だ!」
彼らはそう驚いているが、南に向かっているところを右に曲がれば西に進むのは当然だと思うのだが……。
「フィーネ殿、ここはあの足場を使って霧の中を進むほうがいいのではござらんか?」
「あ! そうですね。カヘエさん!」
「なんだ?」
「このままここにいていただけますか?」
「なんだと!?」
「私たちは足場を作って、その上を歩いていきます」
「何っ!? そんなことができるのか?」
「はい。じゃあ、行ってきますね。防壁!」
船の上から防壁を使って島までの空中通路を作り出すと、ひょいとジャンプしてその上に飛び乗った。
続いて三人が飛び乗ってくる。
「……私以外が行っても大丈夫でしょうか?」
「ダメと仰られてもご一緒いたします」
「あたしもですっ!」
「拙者もでござるよ」
まあ、やっぱりそうだよね。なんとなく不安はあるが、精霊神様がこの三人に酷いことをするなんてことはないはずだ。
「じゃあ、手を繋いで行きましょう」
「はいっ!」
こうして私たちは防壁の上を歩き、島へと向かうのだった。
◆◇◆
「霧の向こうにこのような島が……」
島から十メートルほどの距離まで来たところでクリスさんがポロリとそう呟いた。
「まさに神の奇跡でござるな」
「姉さまっ! すごいですっ! この島、精霊があんなにたくさん!」
シズクさんは感嘆した様子で、ルーちゃんは無邪気に喜んでいる。
なるほど。たしかに島のほうからは精霊のような気配をたくさん感じる。
そのまま残る距離を歩き、私たちは島へと上陸した。
その島には色とりどりの花々が咲き乱れており、その先には森が広がっているようだ。
「美しい島でござるな。オオダテは肌寒かったというのに、ここはまるで春でござるな」
「これが、精霊神様の神域……」
「すごくいい所ですっ!」
やはりエルフであるルーちゃんにとって、精霊が多い場所は居心地がいいのだろう。
「あとは、どうやって精霊神様の御前まで参るかでござるな。やはりあの山の頂上でござろうか?」
「いや、どこかに神殿のようなものがあるのではないか?」
「えっ? 森の中にいらっしゃるに決まってますっ!」
三人はそれぞれ、神様の居そうな場所を挙げていく。
「そうですね。ちょっと見てきます」
私はひょいとジャンプすると、そのまま【妖精化】を使い、上空へと飛び上がった。そうしてしばらく飛んでいると、山の中腹にぽっかりと開けた場所があるのを見つけた。
私は元の姿に戻り、足元に防壁を設置して開けた場所を観察してみる。するとそこには何やら大きな鳥居のようなものがあり、さらにその先には洞窟のようなものが口を開けていた。
なるほど。あれは間違いなく自然に作られたものではないだろう。であれば、とりあえずあそこに行ってみれば何かが分かるかもしれない。
私は防壁を解除するとそのまま階段を降りる要領で足元に防壁を設置し、地面に着地した。
「フィーネ様、何か見つかりましたか?」
「はい。向こうに鳥居のようなものがありましたので、行ってみましょう」
「はい!」
「ルーちゃん」
「任せてくださいっ!」
こうして私たちは鳥居があるほうへと歩きだすのだった。
「あ! カヘエさん! そっちじゃないです!」
「ならどっちだ!」
「左に曲がってください!」
「おうよ! 取舵いっぱい!」
「へい!」
カヘエさんはそう命じた。すると船はなんと右へと曲がり、島に背を向けて進み始めた。
「ヨーソロー!」
「ヨーソロー!」
いやいやいや! 反対だから!
私がツッコミを入れようとしたが、すぐにカヘエさんたちから歓声が上がった。
「やった! 霧を抜けたぞ!」
「さすがスイキョウ様のお客人だ!」
「あ、ええと……」
私が返答に困っていると、カヘエさんが不思議そうに声を上げる。
「おいおい! 俺らは北に向かって進んでるはずなのになんで西に向かってるんだ!?」
「ほ、本当だ!」
彼らはそう驚いているが、南に向かっているところを右に曲がれば西に進むのは当然だと思うのだが……。
「フィーネ殿、ここはあの足場を使って霧の中を進むほうがいいのではござらんか?」
「あ! そうですね。カヘエさん!」
「なんだ?」
「このままここにいていただけますか?」
「なんだと!?」
「私たちは足場を作って、その上を歩いていきます」
「何っ!? そんなことができるのか?」
「はい。じゃあ、行ってきますね。防壁!」
船の上から防壁を使って島までの空中通路を作り出すと、ひょいとジャンプしてその上に飛び乗った。
続いて三人が飛び乗ってくる。
「……私以外が行っても大丈夫でしょうか?」
「ダメと仰られてもご一緒いたします」
「あたしもですっ!」
「拙者もでござるよ」
まあ、やっぱりそうだよね。なんとなく不安はあるが、精霊神様がこの三人に酷いことをするなんてことはないはずだ。
「じゃあ、手を繋いで行きましょう」
「はいっ!」
こうして私たちは防壁の上を歩き、島へと向かうのだった。
◆◇◆
「霧の向こうにこのような島が……」
島から十メートルほどの距離まで来たところでクリスさんがポロリとそう呟いた。
「まさに神の奇跡でござるな」
「姉さまっ! すごいですっ! この島、精霊があんなにたくさん!」
シズクさんは感嘆した様子で、ルーちゃんは無邪気に喜んでいる。
なるほど。たしかに島のほうからは精霊のような気配をたくさん感じる。
そのまま残る距離を歩き、私たちは島へと上陸した。
その島には色とりどりの花々が咲き乱れており、その先には森が広がっているようだ。
「美しい島でござるな。オオダテは肌寒かったというのに、ここはまるで春でござるな」
「これが、精霊神様の神域……」
「すごくいい所ですっ!」
やはりエルフであるルーちゃんにとって、精霊が多い場所は居心地がいいのだろう。
「あとは、どうやって精霊神様の御前まで参るかでござるな。やはりあの山の頂上でござろうか?」
「いや、どこかに神殿のようなものがあるのではないか?」
「えっ? 森の中にいらっしゃるに決まってますっ!」
三人はそれぞれ、神様の居そうな場所を挙げていく。
「そうですね。ちょっと見てきます」
私はひょいとジャンプすると、そのまま【妖精化】を使い、上空へと飛び上がった。そうしてしばらく飛んでいると、山の中腹にぽっかりと開けた場所があるのを見つけた。
私は元の姿に戻り、足元に防壁を設置して開けた場所を観察してみる。するとそこには何やら大きな鳥居のようなものがあり、さらにその先には洞窟のようなものが口を開けていた。
なるほど。あれは間違いなく自然に作られたものではないだろう。であれば、とりあえずあそこに行ってみれば何かが分かるかもしれない。
私は防壁を解除するとそのまま階段を降りる要領で足元に防壁を設置し、地面に着地した。
「フィーネ様、何か見つかりましたか?」
「はい。向こうに鳥居のようなものがありましたので、行ってみましょう」
「はい!」
「ルーちゃん」
「任せてくださいっ!」
こうして私たちは鳥居があるほうへと歩きだすのだった。
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