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正義と武と吸血鬼
第十二章第27話 不思議な森
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それにしてもここは本当に不思議な島だ。花が群生していた海岸を抜けて森の中に入ったのだが、森の中はまるで熱帯雨林のようだ。例えるなら、ブラックレインボー帝国に潜入しようと上陸したときに通った森と似ている。
蒸し暑く、鳥や動物の鳴き声があちこちから聞こえてくる。
だがそんな蒸し暑さにもかかわらず、なぜかここの空気は気持ちがいい。
空気が清らかとでも表現すればいいのだろうか?
これも精霊がたくさんいるおかげなのだろうか?
そんな気持ちのいい森の中を私たちはルーちゃんを先頭にして歩いていると、突如濃霧が私たちを包み込んだ。
目の前が完全に真っ白となり、吸血鬼の視力をもってしても視界が全く効かない。
「クリスさん! ルーちゃん! シズクさん!」
私は必死に呼び掛けるが返事はない。
これは……船でのことを考えるとやはり精霊神様は私以外の者が来ることを望んでいないのだろう。
「クリスさん! ルーちゃん! シズクさん! 私は一人で精霊神様のところへ行ってきます! 海岸のところで待っていてください!」
大声でそう伝えると、私は全力でジャンプした。そしてそのまま【妖精化】を使って上空へと舞い上がる。
霧の上に出ればきっとさっき見つけた鳥居の場所が分かるはずだ。
そう考えて必死に上昇するのだが、霧が途切れる気配がまったくない。
え? え? ちょ、ちょっと、これは……せ、制限時間が!
変身していられる時間が終わってしまい、私は慌てて足元に防壁を生み出して足場を作る。
ええと、これは一体どうなっているのだろうか?
防壁の上に乗ったまま周囲を確認してみる。
……え? 防壁のすぐ下に地面がある!?
恐る恐る防壁の端から一歩踏み出し、地面らしきものに足をつけてみる。
うん。普通に地面だ。土ではなくきっちりとした石の……石!?
そのことに気付いて周囲をもう一度確認すると、なんと私はいつの間にか洞窟の中にいるではないか!
壁や床、天井はすべて灰色の石で、あちこちに白くきらきらと輝く石や岩が落ちている。それらは強い聖属性の力を帯びているようで、近くにいるだけでどんどん元気が湧いてくる。
ええと、これは精霊神様がここに連れてきてくれたということでいいのだろうか?
よく分からないが、とりあえずこのまま先へと進んでみるとしよう。
そうしてしばらく歩いていると、簡素な木の扉が現れた。私が扉の前に立つと扉はひとりでに開く。中は人が暮らせそうな部屋になっており、テーブルセットやベッドが置かれている。
「ええと、お邪魔します?」
一応声を掛けて中に入った瞬間、私は再び白い光に包まれたのだった。
◆◇◆
「フィーネ様!?」
「これは!」
突如濃霧に包まれたクリスティーナとシズクは大慌てでフィーネの名を呼ぶが、返事はない。
「フィーネ様! フィーネ様!」
「クリス殿、フィーネ殿とルミア殿の気配がないでござるよ」
「そんな馬鹿な! あれほど近くにいたというのに! フィーネ様! ルミア!」
焦って二人の名を呼ぶクリスティーナだったが、返事はない。
「クリス殿、おそらく無駄でござろう」
「何!?」
「これはきっと精霊神様の仕業でござるよ。思えば拙者たちの乗る船を拒絶した時点で気付くべきでござったな」
「どういうことだ?」
「この島はもともとフィーネ殿にしか見えていなかったでござる。精霊神様は最初からフィーネ殿以外を招くつもりはなかったのでござろう」
「っ! だ、だがルミアは!」
「ルミア殿もわずかながら霧に異変を感じていたでござる。精霊の友たるエルフに対して精霊神様が何かするということはない、はずでござる」
「それは……」
「となると、拙者たちにできることは待つことくらいでござるな」
「だが!」
「あがいてもおそらく無駄でござるよ」
「え?」
「ああ、やはりそうでござる」
シズクがそう言うと霧が晴れ、二人は上陸した花の咲き誇る海岸に立っていた。
「なっ!? こ、このような……」
「拙者たちは精霊神様にとって招かれざる客ということでござるよ。島から追い出されないだけ感謝するべきでござるな」
「ぐ……そう、だな」
クリスティーナは絞りだすようにそう言うと、がっくりとうなだれたのだった。
蒸し暑く、鳥や動物の鳴き声があちこちから聞こえてくる。
だがそんな蒸し暑さにもかかわらず、なぜかここの空気は気持ちがいい。
空気が清らかとでも表現すればいいのだろうか?
これも精霊がたくさんいるおかげなのだろうか?
そんな気持ちのいい森の中を私たちはルーちゃんを先頭にして歩いていると、突如濃霧が私たちを包み込んだ。
目の前が完全に真っ白となり、吸血鬼の視力をもってしても視界が全く効かない。
「クリスさん! ルーちゃん! シズクさん!」
私は必死に呼び掛けるが返事はない。
これは……船でのことを考えるとやはり精霊神様は私以外の者が来ることを望んでいないのだろう。
「クリスさん! ルーちゃん! シズクさん! 私は一人で精霊神様のところへ行ってきます! 海岸のところで待っていてください!」
大声でそう伝えると、私は全力でジャンプした。そしてそのまま【妖精化】を使って上空へと舞い上がる。
霧の上に出ればきっとさっき見つけた鳥居の場所が分かるはずだ。
そう考えて必死に上昇するのだが、霧が途切れる気配がまったくない。
え? え? ちょ、ちょっと、これは……せ、制限時間が!
変身していられる時間が終わってしまい、私は慌てて足元に防壁を生み出して足場を作る。
ええと、これは一体どうなっているのだろうか?
防壁の上に乗ったまま周囲を確認してみる。
……え? 防壁のすぐ下に地面がある!?
恐る恐る防壁の端から一歩踏み出し、地面らしきものに足をつけてみる。
うん。普通に地面だ。土ではなくきっちりとした石の……石!?
そのことに気付いて周囲をもう一度確認すると、なんと私はいつの間にか洞窟の中にいるではないか!
壁や床、天井はすべて灰色の石で、あちこちに白くきらきらと輝く石や岩が落ちている。それらは強い聖属性の力を帯びているようで、近くにいるだけでどんどん元気が湧いてくる。
ええと、これは精霊神様がここに連れてきてくれたということでいいのだろうか?
よく分からないが、とりあえずこのまま先へと進んでみるとしよう。
そうしてしばらく歩いていると、簡素な木の扉が現れた。私が扉の前に立つと扉はひとりでに開く。中は人が暮らせそうな部屋になっており、テーブルセットやベッドが置かれている。
「ええと、お邪魔します?」
一応声を掛けて中に入った瞬間、私は再び白い光に包まれたのだった。
◆◇◆
「フィーネ様!?」
「これは!」
突如濃霧に包まれたクリスティーナとシズクは大慌てでフィーネの名を呼ぶが、返事はない。
「フィーネ様! フィーネ様!」
「クリス殿、フィーネ殿とルミア殿の気配がないでござるよ」
「そんな馬鹿な! あれほど近くにいたというのに! フィーネ様! ルミア!」
焦って二人の名を呼ぶクリスティーナだったが、返事はない。
「クリス殿、おそらく無駄でござろう」
「何!?」
「これはきっと精霊神様の仕業でござるよ。思えば拙者たちの乗る船を拒絶した時点で気付くべきでござったな」
「どういうことだ?」
「この島はもともとフィーネ殿にしか見えていなかったでござる。精霊神様は最初からフィーネ殿以外を招くつもりはなかったのでござろう」
「っ! だ、だがルミアは!」
「ルミア殿もわずかながら霧に異変を感じていたでござる。精霊の友たるエルフに対して精霊神様が何かするということはない、はずでござる」
「それは……」
「となると、拙者たちにできることは待つことくらいでござるな」
「だが!」
「あがいてもおそらく無駄でござるよ」
「え?」
「ああ、やはりそうでござる」
シズクがそう言うと霧が晴れ、二人は上陸した花の咲き誇る海岸に立っていた。
「なっ!? こ、このような……」
「拙者たちは精霊神様にとって招かれざる客ということでござるよ。島から追い出されないだけ感謝するべきでござるな」
「ぐ……そう、だな」
クリスティーナは絞りだすようにそう言うと、がっくりとうなだれたのだった。
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