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聖女の旅路
第十三章第8話 歓迎晩餐会
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それからリーチェの種を植えるなどして過ごし、晩餐会の時間となった。晩餐会といっても大勢が集まるものではなく、私たち以外の参加者はチャンドラ王子やレ・タインさんとその家族といったごく少人数なので、晩餐会というよりは食事会のほうがしっくりくる感じだ。
さすがに今の状況で盛大な晩餐会をする余裕はないようだし、私としてもこのくらいのほうが気を遣わずに済むので嬉しい。
「それでは、ただいまより聖女様の歓迎晩餐会を開催させていただきます」
こうしてレ・タインさんの音頭で晩餐会が開始された。するとすぐに一皿目が運ばれてくる。
「エビと野菜の生春巻きでございます。こちらのスイートチリソースを付けてお召し上がりください」
半透明の皮からは茹でたエビの鮮やかな赤と野菜の緑が透けて見えており、なんとも食欲をそそる。
早速生春巻きをスイートチリソースにディップし、口に運んでみる。するとまず口に広がるのは、見た目は辛そうなのに甘いスイートチリソースと生春巻きの皮の独特の香り。もちろんそのもちもちした食感が堪らないのはもちろんなのだが、噛み切ったときのエビのプリッとした歯ごたえといったら!
それにキュウリのシャキシャキ感もまた素晴らしい。
しかも噛み切ったときに飛び出してくるのはエビのうま味たっぷりの汁だ。そこにキュウリの爽やかな味とグリーンリーフのわずかにほろ苦い味が加わり、皮の甘味とスイートチリソースが一体となって私の舌と鼻を楽しませてくれる。
うん。これは美味しいね。
「空心菜のニンニク炒めでございます」
二皿目は何やら緑色の野菜の炒め物だ。空心菜というのは聞いたことがないが、ニンニクの美味しそうな香りのおかげで早くも口の中はよだれが溢れている。
私はすかさず空心菜を口の中に放り込んだ。
うん。これは、なんというか、シャキシャキしている。歯ごたえがいい。それとこの空心菜だが、くせがまったくない。苦味や青臭さがないし、ついでに香りもない。味付けも至ってシンプルで、塩とニンニクと甘い油だけなのだが、それがまたよく合っている。きっと空心菜は歯ごたえを楽しむ野菜なのだろう。余計な味がないため塩加減が難しそうではあるが、さすがは太守の館の料理人だ。絶妙な塩加減のおかげでいくらでも食べられそうだ。
素晴らしい!
「ハト肉のローストでございます」
運ばれてきたローストはハトを四分の一に切ったもののようで、私のものは手羽の部分のようだ。
だがこれはちょっと食べにくそうな気が……と思ってレ・タインさんのほうを見てみると、なんとレ・タインさんは手づかみ肉をこそぎとりながら食べている。
なるほど。そういうものなのか。
私もそれに倣い、手づかみで食べてみる。
うん。なるほど、甘辛いたれがしっかりついていて、皮はパリパリだ。肉はさっぱりしていてかなりヘルシーな感じだが、この甘辛いタレのおかげでちょうどいい感じに仕上がっている。
うん。美味しいね。
「鶏肉と野菜の炒め物でございます」
続いて運ばれてきた炒め物は鶏肉の他にピーマン、ニンジン、そして玉ねぎが入っている。
私はまず、その中から鶏肉をいただいてみた。するとしっとりとした鶏肉に何やら独特なうま味と香りがついている。それにやや辛味とニンニクの香りが混ざっており、さらに爽やかな香りも混ざっている。
これはなんだろうかと考えていると、それに気付いたのかレ・タインさんが声をかけてきた。
「聖女様、そちらはお気に召さなかったですかな?」
「え? いえ、美味しいです。ただ、この香りはなんなのかな、と思っていまして」
するとレ・タインさんは満面の笑みを浮かべながら答えを教えてくれた。
「そちらはこの地域で昔から作っている魚醤を使っております。他に唐辛子とニンニク、さらにレモングラスが使われております」
「なるほど、そうなんですね。とても美味しいです」
「それは何よりです」
レ・タインさんの満足そうな表情を横目に、私は続いてお野菜をいただく。
うん。ピーマンの食感と苦味も合っているし、玉ねぎのシャキシャキ感と甘味もばっちりだ。ニンジンもしんなりするまで炒められており、その甘味と味付けのバランスが素晴らしい。
ただの肉野菜炒めなのに、味付け一つでこうも変わるのだから奥深いものだ。
「花ガニの姿蒸しでございます。こちらのライムの汁と塩コショウをお好みで付けてお召し上がりください」
続いて運ばれてきたのは色鮮やかで美しい模様の甲羅が特徴的なカニだ。この赤と白のコントラストは見ているだけで食欲が湧いてくる。しかも食べやすいように甲羅はカットされており、お箸でめくれば簡単に中身を食べられるようになっているという気遣いがまた素晴らしい。
私はカニの身にライムをつけ、口に放り込む。
うん。あっさりしていて、さっぱりしていて、先ほどまで炒め物を食べていたおかげで油っこくなっていた口の中もスッキリする。だが淡白な中にもしっかりと甘味があり、これがカニであることをしっかりと主張している点も忘れてはいけない。
うん。美味しいね。
「ライギョの姿揚げでございます」
続いて出てきたのは丸ごと一匹の巨大な魚の揚げ物だ。魚の上には大量の野菜が乗っており、給仕さんが一皿一皿取り分けてくれる。
私はさっそく取り分けてもらったライギョをいただいてみる。
うん。なんというか、ものすごく淡白な味だ。ちょっと独特の臭みはあるが、それを消すための野菜なのだろう。レモングラスや玉ねぎと一緒に食べればそれも気にならない。
ルーちゃんのほうをちらりと見ると、もうすでにお代わりをしている。ルーちゃんがいればこの巨大なライギョがなくなるのも時間の問題だろう。
「鶏肉のフォーでございます。お好みで香味野菜を乗せてお召し上がりください」
続いて運ばれてきたのは小さな器に盛られたフォーだ。薄茶色のスープに蒸し鶏が乗せられており、ホカホカと美味しそうな湯気が立ちのぼっている。
私はまず、スープを口に運んでみた。
うん、あっさりしていておいしい。味付けは鶏ガラの出汁と塩、それから先ほどの魚醤だろうか?
シンプルな味付けだが、〆として食べるのにはちょうどいい、とても優しい味だ。
蒸し鶏もしっとりと蒸されており、過度な味付けはされていない。フォーはプリプリとした食感で、先ほどの生春巻きの皮を厚くして細長くして茹でた感じ、とでも言えばいいだろうか?
独特の食感だが、さっぱりしたスープとよく合っている。
そこに香味野菜として出されたパクチーを追加してみる。すると優しい味は一気にパクチーの強力な香りに上書きされ、これはこれで中々にパンチの効いた感じになるのだから不思議なものだ。
だが、〆として食べるのであれば私はこのまま優しい味で食べるほうが好みかな?
「デザートの冷凍ライチでございます」
気付けば晩餐会もあっという間にデザートとなっていた。もちろん美味しかったということもあるが、その理由の一つには間違いなくちょうどいい量を出してくれたということもある。きっと私が小食であるということをチャンドラ王子が伝えてくれていたのだろう。
そんなことを考えながら、私はライチを口に含む。するとまるでシャーベットのようにキンと冷えており、独特の食感と香り、そして甘さと酸味が口いっぱいに広がる。
うん。これはまた新感覚のデザートだ。
いやはや、ハイディンの食事は素晴らしいね。ぜひともまた食べたいものだ。
ごちそうさまでした。
さすがに今の状況で盛大な晩餐会をする余裕はないようだし、私としてもこのくらいのほうが気を遣わずに済むので嬉しい。
「それでは、ただいまより聖女様の歓迎晩餐会を開催させていただきます」
こうしてレ・タインさんの音頭で晩餐会が開始された。するとすぐに一皿目が運ばれてくる。
「エビと野菜の生春巻きでございます。こちらのスイートチリソースを付けてお召し上がりください」
半透明の皮からは茹でたエビの鮮やかな赤と野菜の緑が透けて見えており、なんとも食欲をそそる。
早速生春巻きをスイートチリソースにディップし、口に運んでみる。するとまず口に広がるのは、見た目は辛そうなのに甘いスイートチリソースと生春巻きの皮の独特の香り。もちろんそのもちもちした食感が堪らないのはもちろんなのだが、噛み切ったときのエビのプリッとした歯ごたえといったら!
それにキュウリのシャキシャキ感もまた素晴らしい。
しかも噛み切ったときに飛び出してくるのはエビのうま味たっぷりの汁だ。そこにキュウリの爽やかな味とグリーンリーフのわずかにほろ苦い味が加わり、皮の甘味とスイートチリソースが一体となって私の舌と鼻を楽しませてくれる。
うん。これは美味しいね。
「空心菜のニンニク炒めでございます」
二皿目は何やら緑色の野菜の炒め物だ。空心菜というのは聞いたことがないが、ニンニクの美味しそうな香りのおかげで早くも口の中はよだれが溢れている。
私はすかさず空心菜を口の中に放り込んだ。
うん。これは、なんというか、シャキシャキしている。歯ごたえがいい。それとこの空心菜だが、くせがまったくない。苦味や青臭さがないし、ついでに香りもない。味付けも至ってシンプルで、塩とニンニクと甘い油だけなのだが、それがまたよく合っている。きっと空心菜は歯ごたえを楽しむ野菜なのだろう。余計な味がないため塩加減が難しそうではあるが、さすがは太守の館の料理人だ。絶妙な塩加減のおかげでいくらでも食べられそうだ。
素晴らしい!
「ハト肉のローストでございます」
運ばれてきたローストはハトを四分の一に切ったもののようで、私のものは手羽の部分のようだ。
だがこれはちょっと食べにくそうな気が……と思ってレ・タインさんのほうを見てみると、なんとレ・タインさんは手づかみ肉をこそぎとりながら食べている。
なるほど。そういうものなのか。
私もそれに倣い、手づかみで食べてみる。
うん。なるほど、甘辛いたれがしっかりついていて、皮はパリパリだ。肉はさっぱりしていてかなりヘルシーな感じだが、この甘辛いタレのおかげでちょうどいい感じに仕上がっている。
うん。美味しいね。
「鶏肉と野菜の炒め物でございます」
続いて運ばれてきた炒め物は鶏肉の他にピーマン、ニンジン、そして玉ねぎが入っている。
私はまず、その中から鶏肉をいただいてみた。するとしっとりとした鶏肉に何やら独特なうま味と香りがついている。それにやや辛味とニンニクの香りが混ざっており、さらに爽やかな香りも混ざっている。
これはなんだろうかと考えていると、それに気付いたのかレ・タインさんが声をかけてきた。
「聖女様、そちらはお気に召さなかったですかな?」
「え? いえ、美味しいです。ただ、この香りはなんなのかな、と思っていまして」
するとレ・タインさんは満面の笑みを浮かべながら答えを教えてくれた。
「そちらはこの地域で昔から作っている魚醤を使っております。他に唐辛子とニンニク、さらにレモングラスが使われております」
「なるほど、そうなんですね。とても美味しいです」
「それは何よりです」
レ・タインさんの満足そうな表情を横目に、私は続いてお野菜をいただく。
うん。ピーマンの食感と苦味も合っているし、玉ねぎのシャキシャキ感と甘味もばっちりだ。ニンジンもしんなりするまで炒められており、その甘味と味付けのバランスが素晴らしい。
ただの肉野菜炒めなのに、味付け一つでこうも変わるのだから奥深いものだ。
「花ガニの姿蒸しでございます。こちらのライムの汁と塩コショウをお好みで付けてお召し上がりください」
続いて運ばれてきたのは色鮮やかで美しい模様の甲羅が特徴的なカニだ。この赤と白のコントラストは見ているだけで食欲が湧いてくる。しかも食べやすいように甲羅はカットされており、お箸でめくれば簡単に中身を食べられるようになっているという気遣いがまた素晴らしい。
私はカニの身にライムをつけ、口に放り込む。
うん。あっさりしていて、さっぱりしていて、先ほどまで炒め物を食べていたおかげで油っこくなっていた口の中もスッキリする。だが淡白な中にもしっかりと甘味があり、これがカニであることをしっかりと主張している点も忘れてはいけない。
うん。美味しいね。
「ライギョの姿揚げでございます」
続いて出てきたのは丸ごと一匹の巨大な魚の揚げ物だ。魚の上には大量の野菜が乗っており、給仕さんが一皿一皿取り分けてくれる。
私はさっそく取り分けてもらったライギョをいただいてみる。
うん。なんというか、ものすごく淡白な味だ。ちょっと独特の臭みはあるが、それを消すための野菜なのだろう。レモングラスや玉ねぎと一緒に食べればそれも気にならない。
ルーちゃんのほうをちらりと見ると、もうすでにお代わりをしている。ルーちゃんがいればこの巨大なライギョがなくなるのも時間の問題だろう。
「鶏肉のフォーでございます。お好みで香味野菜を乗せてお召し上がりください」
続いて運ばれてきたのは小さな器に盛られたフォーだ。薄茶色のスープに蒸し鶏が乗せられており、ホカホカと美味しそうな湯気が立ちのぼっている。
私はまず、スープを口に運んでみた。
うん、あっさりしていておいしい。味付けは鶏ガラの出汁と塩、それから先ほどの魚醤だろうか?
シンプルな味付けだが、〆として食べるのにはちょうどいい、とても優しい味だ。
蒸し鶏もしっとりと蒸されており、過度な味付けはされていない。フォーはプリプリとした食感で、先ほどの生春巻きの皮を厚くして細長くして茹でた感じ、とでも言えばいいだろうか?
独特の食感だが、さっぱりしたスープとよく合っている。
そこに香味野菜として出されたパクチーを追加してみる。すると優しい味は一気にパクチーの強力な香りに上書きされ、これはこれで中々にパンチの効いた感じになるのだから不思議なものだ。
だが、〆として食べるのであれば私はこのまま優しい味で食べるほうが好みかな?
「デザートの冷凍ライチでございます」
気付けば晩餐会もあっという間にデザートとなっていた。もちろん美味しかったということもあるが、その理由の一つには間違いなくちょうどいい量を出してくれたということもある。きっと私が小食であるということをチャンドラ王子が伝えてくれていたのだろう。
そんなことを考えながら、私はライチを口に含む。するとまるでシャーベットのようにキンと冷えており、独特の食感と香り、そして甘さと酸味が口いっぱいに広がる。
うん。これはまた新感覚のデザートだ。
いやはや、ハイディンの食事は素晴らしいね。ぜひともまた食べたいものだ。
ごちそうさまでした。
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