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第三章
第三章第55話 また夜襲を受けました
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鹿の丸焼き、とっても好評でした。
えへへ、やっぱりお肉は丸焼きが一番ですよね。
今はピーちゃんが洗ってくれたお皿を片づけていて、これが終われば後はテントで体をきれいにして寝るだけです。
三日間の予定なので、明日は起きたらすぐに撤収です。
アレックさんがちょっとかわいそうでしたけど、でもクラスの人とお話もできたので楽しい演習でした。
リリアちゃんとヴィーシャさんはどうしているんでしょう? あたしみたいに楽しんでいたらいいんですけど……。
「ホーッ!」
「シャーッ!」
「えっ? ユキ、ホーちゃん、どうしたんですか?」
突然ユキたちが威嚇を始め、ホーちゃんはすぐに飛び立ちました。
あたしはすぐさまホーちゃんに意識を同調させます。するとすぐにおぞましいものが見えてきました。
「ゴ、ゴブリンの群れ!? 大変です! ゴブリンの群れがこっちに向かってきています!」
「なんだと!?」
「数は?」
「わ、わかりません。でもうじゃうじゃいます。あっちのほうから……」
「くっ……まさかゴブリンの群れがいるとは……」
マリウスさんの顔が少し青ざめています。
「ゴ、ゴブリンがなんだ! 今こそ日頃の鍛練の成果を見せるときだ!」
ヴァシリオスさんも威勢のいいことを言っていますが、気圧されているように見えます。
「あの、コンラートさん」
「な、なんだい?」
「あの、上から狙えるようにちょっと高い台を作ってくれませんか?」
「どういうこと?」
「鹿を狩ったあの魔法でゴブリンを倒します。でもここじゃ壁が邪魔で自由に撃てないんです」
「そ、そうか! よし! ベティーナさん、協力してくれるかい?」
「はい!」
「ロクサーナ様、ローザさん、この上に乗って。ベティーナさんも」
「はい」
私たちはコンラートさんに言われた場所に集まりました。
「ベティーナさん、いくよ!」
「はい!」
するとコンラートさんとベティーナさんが魔術を使い、あたしたちの乗っている場所が二メートルくらい盛り上がりました。
ですが、階段もないので降りられそうにありません。
「あの?」
「ゴブリンどもの狙いは女性だからね。万が一のためだよ」
「……」
それはそうですけど……。
「マリウス様やヴァシリオスたちと、こうするって決めてたんだ。こうしておけば、最悪の事態になっても三人は救助が来るまで耐えられる」
「そんな!」
「ローザさん、それ以上はいけませんわ。騎士が淑女を守ると言っているのです」
「でも……」
せっかく仲良くなれた人たちがあたしたちを庇って犠牲になるなんて!
「なんという顔をしているんですの? 無理そうなら、わたくしはこれを使いますわ」
ロクサーナさんは赤い宝玉を取り出しました。
「それって……」
「ええ。班に一つずつ与えられた救助要請の魔道具ですわ。救助が必要でない状況で使えばわたくしたちは落第ですけれど」
「そんな……」
「来たぞ! ゴブリンどもだ!」
ヴァシリオスさんの声に、あたしたちはそちらを確認します。
すると森の中から続々とゴブリンが姿を現しました。
もう、うじゃうじゃ湧き出てきます。
気持ち悪い!
えっと、こうなったら先手必勝です。
「えい!」
あたしはゴブリンの頭を撃ち抜きました。ゴブリンは力なくその場に崩れ落ちます。
「ギギャッ。ギャッ」
周りのゴブリンたちが気持ち悪い声を上げ、あたしたちの拠点に向かって突っ込んできます。そこに狙いをつけて――。
「えい!」
やりました。三枚抜きです。
先頭のゴブリンの頭を貫通して後ろのゴブリンの胸を撃ち抜き、さらに後ろのゴブリンの足に命中しました。
これもテントの周りに堀と壁を作っておいてくれたおかげです。
ゴブリンでは堀と壁を越えられないので、ゴブリンは入口に集まることになります。
そうなれば狙いを付けなくたって魔力弾を当てられますからね。
この調子で――。
「拠点を守れ! 中に入れさせるな!」
マリウスさんの勇ましい声が聞こえ、ヴァシリオスさんたちも続々と拠点の外へと打って出ます。
ええっ? 壁と堀があるのに外で戦うんですか!?
ですがマリウスさんを先頭に男子たちはゴブリンとぶつかります。
剣と魔法で次々とゴブリンを倒して……って、あれ? コンラートさん? なんでラケットとボールを持っているんでしょうか?
不思議に思ってコンラートさんを見ていると、なんとサーブをゴブリンに向かって打ち込みました。
パコーンといういい音が夜の森に響きます。
ボールはすぐにゴブリンの立っている地面にぶつかり、その周囲の地面から五センチくらいの岩の棘が無数に生えてきました。
あれ? えっと?
ボールはなぜかコンラートさんの所へと戻っていき、コンラートさんはそれをラケットで打ち返します。
ゴブリンのほうへと飛んでいったボールは一匹のゴブリンのお腹に命中しました。
するとゴブリンは重たいものがぶつかったかのように吹き飛ばされます。
えっと、はい。そういえば現実世界のテニスって、こういうスポーツでしたね。
えへへ、やっぱりお肉は丸焼きが一番ですよね。
今はピーちゃんが洗ってくれたお皿を片づけていて、これが終われば後はテントで体をきれいにして寝るだけです。
三日間の予定なので、明日は起きたらすぐに撤収です。
アレックさんがちょっとかわいそうでしたけど、でもクラスの人とお話もできたので楽しい演習でした。
リリアちゃんとヴィーシャさんはどうしているんでしょう? あたしみたいに楽しんでいたらいいんですけど……。
「ホーッ!」
「シャーッ!」
「えっ? ユキ、ホーちゃん、どうしたんですか?」
突然ユキたちが威嚇を始め、ホーちゃんはすぐに飛び立ちました。
あたしはすぐさまホーちゃんに意識を同調させます。するとすぐにおぞましいものが見えてきました。
「ゴ、ゴブリンの群れ!? 大変です! ゴブリンの群れがこっちに向かってきています!」
「なんだと!?」
「数は?」
「わ、わかりません。でもうじゃうじゃいます。あっちのほうから……」
「くっ……まさかゴブリンの群れがいるとは……」
マリウスさんの顔が少し青ざめています。
「ゴ、ゴブリンがなんだ! 今こそ日頃の鍛練の成果を見せるときだ!」
ヴァシリオスさんも威勢のいいことを言っていますが、気圧されているように見えます。
「あの、コンラートさん」
「な、なんだい?」
「あの、上から狙えるようにちょっと高い台を作ってくれませんか?」
「どういうこと?」
「鹿を狩ったあの魔法でゴブリンを倒します。でもここじゃ壁が邪魔で自由に撃てないんです」
「そ、そうか! よし! ベティーナさん、協力してくれるかい?」
「はい!」
「ロクサーナ様、ローザさん、この上に乗って。ベティーナさんも」
「はい」
私たちはコンラートさんに言われた場所に集まりました。
「ベティーナさん、いくよ!」
「はい!」
するとコンラートさんとベティーナさんが魔術を使い、あたしたちの乗っている場所が二メートルくらい盛り上がりました。
ですが、階段もないので降りられそうにありません。
「あの?」
「ゴブリンどもの狙いは女性だからね。万が一のためだよ」
「……」
それはそうですけど……。
「マリウス様やヴァシリオスたちと、こうするって決めてたんだ。こうしておけば、最悪の事態になっても三人は救助が来るまで耐えられる」
「そんな!」
「ローザさん、それ以上はいけませんわ。騎士が淑女を守ると言っているのです」
「でも……」
せっかく仲良くなれた人たちがあたしたちを庇って犠牲になるなんて!
「なんという顔をしているんですの? 無理そうなら、わたくしはこれを使いますわ」
ロクサーナさんは赤い宝玉を取り出しました。
「それって……」
「ええ。班に一つずつ与えられた救助要請の魔道具ですわ。救助が必要でない状況で使えばわたくしたちは落第ですけれど」
「そんな……」
「来たぞ! ゴブリンどもだ!」
ヴァシリオスさんの声に、あたしたちはそちらを確認します。
すると森の中から続々とゴブリンが姿を現しました。
もう、うじゃうじゃ湧き出てきます。
気持ち悪い!
えっと、こうなったら先手必勝です。
「えい!」
あたしはゴブリンの頭を撃ち抜きました。ゴブリンは力なくその場に崩れ落ちます。
「ギギャッ。ギャッ」
周りのゴブリンたちが気持ち悪い声を上げ、あたしたちの拠点に向かって突っ込んできます。そこに狙いをつけて――。
「えい!」
やりました。三枚抜きです。
先頭のゴブリンの頭を貫通して後ろのゴブリンの胸を撃ち抜き、さらに後ろのゴブリンの足に命中しました。
これもテントの周りに堀と壁を作っておいてくれたおかげです。
ゴブリンでは堀と壁を越えられないので、ゴブリンは入口に集まることになります。
そうなれば狙いを付けなくたって魔力弾を当てられますからね。
この調子で――。
「拠点を守れ! 中に入れさせるな!」
マリウスさんの勇ましい声が聞こえ、ヴァシリオスさんたちも続々と拠点の外へと打って出ます。
ええっ? 壁と堀があるのに外で戦うんですか!?
ですがマリウスさんを先頭に男子たちはゴブリンとぶつかります。
剣と魔法で次々とゴブリンを倒して……って、あれ? コンラートさん? なんでラケットとボールを持っているんでしょうか?
不思議に思ってコンラートさんを見ていると、なんとサーブをゴブリンに向かって打ち込みました。
パコーンといういい音が夜の森に響きます。
ボールはすぐにゴブリンの立っている地面にぶつかり、その周囲の地面から五センチくらいの岩の棘が無数に生えてきました。
あれ? えっと?
ボールはなぜかコンラートさんの所へと戻っていき、コンラートさんはそれをラケットで打ち返します。
ゴブリンのほうへと飛んでいったボールは一匹のゴブリンのお腹に命中しました。
するとゴブリンは重たいものがぶつかったかのように吹き飛ばされます。
えっと、はい。そういえば現実世界のテニスって、こういうスポーツでしたね。
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