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第四章
第四章第25話 お花を飾りました
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それから公子様はあたしを寮まで送ってくれました。その途中であたしはカルヴェラ湖に遊びに行ったときの話をしたんですけど、氷穴釣りでたくさん釣れた話をしたら今度一緒に釣りに行こうって誘ってくれました。
遊びに行けるとしたら夏休みですけど、えへへ、ちょっと楽しみです。
それと公子様のお話も聞きましたけど、なんだか街道の整備とか、カンゼイ? の交渉とか、なんだかすごく難しいことをしていたそうですよ。
ただ、あたしは何を言っているのかさっぱり分からなかったので、もしかしたら退屈させてしまったかもしれません。いつもどおりの笑顔でお話してくれていましたけど……やっぱりちょっとくらいお勉強したほうがいいですよね?
そんなことを思い出していると、部屋の扉が開きました。剣術部の練習を終えたヴィーシャさんが帰ってきたみたいです。
「ヴィーシャさん、おかえりなさい」
「お嬢様、ただいま戻りました」
ヴィーシャさんはそう言ってあたしの前で跪きました。
「あ、えっと、はい。ヴィーシャさん……」
ヴィーシャさんはあたしの手を取ると、手の甲に口付けを落としました。それからヴィーシャさんが立ち上がると、机の上に置いてある花束に視線を送ります。
「お嬢様、こちらの花束は?」
「え、えっと、実は公子様が進級のお祝いにってプレゼントしてくれたんです」
「えっ!? 公子様が? それホントに?」
「ひぇっ!?」
ヴィーシャさんが突然大声を上げたのでビックリしちゃいました。
「あ! ……ごめん。でも本当に公子様がくれたの?」
「は、はい」
「はぇ~」
ヴィーシャさんが変な声を上げています。
やっぱりヴィーシャさんもビックリしているみたいです。
「でもさ。せっかくもらったなら花瓶に活けておかないと」
「え?」
「ええっ? だって、活けておかないとすぐにダメになっちゃうよ」
「あ! そういえば……」
「そういえばって」
ヴィーシャさんは苦笑いを浮かべました。
「ごめんなさい。でもあたし、今までお花をもらったことがなかったんです。だから……」
「あ、そうなんだ。ごめん」
そう言って謝ってくれたヴィーシャさんは本当に申し訳なさそうにしています。
えっと、そうですよね。ヴィーシャさんは騎士の娘ですから、お花をもらうのはきっと普通なんですよね?
「あ、えっと、はい。でもこれからは花瓶が必要だってわかりましたから。それでその、花瓶ってどこで手に入りますか?」
「どうだろう? アリアドナさんに相談してみたらいいんじゃないかな?」
「そうですね。じゃあ、ちょっと聞きに行ってみます」
「私も一緒に行くよ。お嬢様に花瓶を持たせるわけにはいかないしね」
ヴィーシャさんはそう言うと、パチンとウインクをしてきたのでした。
◆◇◆
「はぇ~、公子様がねぇ」
花瓶に活けられた花束を見て、リリアちゃんまで変な声を上げています。
あ、えっとですね。花瓶を探そうと部屋を出たあたしたちは、ちょうど料理研究会が終わって戻ってきたリリアちゃんとばったり会ったんです。それで事情を説明したら、なんとリリアちゃんのお部屋に使っていない花瓶があったんです。
その花瓶はあのバラサさんが使っていたものだったんですけど、今はリリアちゃんのものなんだそうです。
ほら、バラサさんは寒いところにある修道院に送られたじゃないですか。だから財産は持っていちゃいけないみたいなんですよね。それにその、一族の人たちは全員処刑されちゃいましたから、花瓶の持ち主がいなくなっちゃったんです。それでリリアちゃんがなし崩し的に持ち主になったんですけど、リリアちゃんも機会がなくて使っていなかったんです。
それで、どうせ使っていないからってリリアちゃんが貸してくれたんです。
「進級のお祝いでこんな花束くれるなんてすごいよねぇ。もしかして公子様、本気でローザちゃんを口説く気なのかなぁ?」
「え? そ、そんなわけないですよ。そ、それに、ほら、公子様はきっとどこかのお姫様が婚約者なんじゃないですか?」
「そうなの? そんな話、聞いたことないけどなぁ」
それは……あたしだってそんな話は聞いたことないですけど、でも公子様ですよ?
カルリア公国の次の王様ってわけではないですけど、それでも王太子様と同じくらい偉い人です。だからレジーナさんのような婚約者がいてもおかしくはないと思うんですよね。
「でもなぁ。赤いバラにピンクのチューリップ、それに紫のライラックでしょ? やっぱりローザちゃん、口説かれてると思うんだけどなぁ」
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ! だって、どれも愛を意味する花で、しかもライラックなんて恋の始まりだよ? もうっ! こんな花束をお祝いだなんて言って渡してくるなんて! ほんとにっ!」
「ええっ!?」
お、お花にそんな意味があるなんて知りませんでした。
ううっ。そんなことを言われると意識しちゃうじゃないですか。
「ほらほら、ローザちゃんだって満更でもないんでしょ?」
「え? えっと……」
「やっぱり! そうだよね。公子様、カッコイイもんね。それでそれで? 他にどんなこと言われたの? 教えてよ~」
リリアちゃんはニヤニヤしながらあたしを質問攻めにしてくるのでした。
遊びに行けるとしたら夏休みですけど、えへへ、ちょっと楽しみです。
それと公子様のお話も聞きましたけど、なんだか街道の整備とか、カンゼイ? の交渉とか、なんだかすごく難しいことをしていたそうですよ。
ただ、あたしは何を言っているのかさっぱり分からなかったので、もしかしたら退屈させてしまったかもしれません。いつもどおりの笑顔でお話してくれていましたけど……やっぱりちょっとくらいお勉強したほうがいいですよね?
そんなことを思い出していると、部屋の扉が開きました。剣術部の練習を終えたヴィーシャさんが帰ってきたみたいです。
「ヴィーシャさん、おかえりなさい」
「お嬢様、ただいま戻りました」
ヴィーシャさんはそう言ってあたしの前で跪きました。
「あ、えっと、はい。ヴィーシャさん……」
ヴィーシャさんはあたしの手を取ると、手の甲に口付けを落としました。それからヴィーシャさんが立ち上がると、机の上に置いてある花束に視線を送ります。
「お嬢様、こちらの花束は?」
「え、えっと、実は公子様が進級のお祝いにってプレゼントしてくれたんです」
「えっ!? 公子様が? それホントに?」
「ひぇっ!?」
ヴィーシャさんが突然大声を上げたのでビックリしちゃいました。
「あ! ……ごめん。でも本当に公子様がくれたの?」
「は、はい」
「はぇ~」
ヴィーシャさんが変な声を上げています。
やっぱりヴィーシャさんもビックリしているみたいです。
「でもさ。せっかくもらったなら花瓶に活けておかないと」
「え?」
「ええっ? だって、活けておかないとすぐにダメになっちゃうよ」
「あ! そういえば……」
「そういえばって」
ヴィーシャさんは苦笑いを浮かべました。
「ごめんなさい。でもあたし、今までお花をもらったことがなかったんです。だから……」
「あ、そうなんだ。ごめん」
そう言って謝ってくれたヴィーシャさんは本当に申し訳なさそうにしています。
えっと、そうですよね。ヴィーシャさんは騎士の娘ですから、お花をもらうのはきっと普通なんですよね?
「あ、えっと、はい。でもこれからは花瓶が必要だってわかりましたから。それでその、花瓶ってどこで手に入りますか?」
「どうだろう? アリアドナさんに相談してみたらいいんじゃないかな?」
「そうですね。じゃあ、ちょっと聞きに行ってみます」
「私も一緒に行くよ。お嬢様に花瓶を持たせるわけにはいかないしね」
ヴィーシャさんはそう言うと、パチンとウインクをしてきたのでした。
◆◇◆
「はぇ~、公子様がねぇ」
花瓶に活けられた花束を見て、リリアちゃんまで変な声を上げています。
あ、えっとですね。花瓶を探そうと部屋を出たあたしたちは、ちょうど料理研究会が終わって戻ってきたリリアちゃんとばったり会ったんです。それで事情を説明したら、なんとリリアちゃんのお部屋に使っていない花瓶があったんです。
その花瓶はあのバラサさんが使っていたものだったんですけど、今はリリアちゃんのものなんだそうです。
ほら、バラサさんは寒いところにある修道院に送られたじゃないですか。だから財産は持っていちゃいけないみたいなんですよね。それにその、一族の人たちは全員処刑されちゃいましたから、花瓶の持ち主がいなくなっちゃったんです。それでリリアちゃんがなし崩し的に持ち主になったんですけど、リリアちゃんも機会がなくて使っていなかったんです。
それで、どうせ使っていないからってリリアちゃんが貸してくれたんです。
「進級のお祝いでこんな花束くれるなんてすごいよねぇ。もしかして公子様、本気でローザちゃんを口説く気なのかなぁ?」
「え? そ、そんなわけないですよ。そ、それに、ほら、公子様はきっとどこかのお姫様が婚約者なんじゃないですか?」
「そうなの? そんな話、聞いたことないけどなぁ」
それは……あたしだってそんな話は聞いたことないですけど、でも公子様ですよ?
カルリア公国の次の王様ってわけではないですけど、それでも王太子様と同じくらい偉い人です。だからレジーナさんのような婚約者がいてもおかしくはないと思うんですよね。
「でもなぁ。赤いバラにピンクのチューリップ、それに紫のライラックでしょ? やっぱりローザちゃん、口説かれてると思うんだけどなぁ」
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ! だって、どれも愛を意味する花で、しかもライラックなんて恋の始まりだよ? もうっ! こんな花束をお祝いだなんて言って渡してくるなんて! ほんとにっ!」
「ええっ!?」
お、お花にそんな意味があるなんて知りませんでした。
ううっ。そんなことを言われると意識しちゃうじゃないですか。
「ほらほら、ローザちゃんだって満更でもないんでしょ?」
「え? えっと……」
「やっぱり! そうだよね。公子様、カッコイイもんね。それでそれで? 他にどんなこと言われたの? 教えてよ~」
リリアちゃんはニヤニヤしながらあたしを質問攻めにしてくるのでした。
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