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第120話 神聖アルテナ公国
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神殿建立の儀は無事に終わったが、捧げものをしに来る人の波が途切れることはなかった。
彼らの多くは笑顔なのだが、一部の人は感激して涙を流しながら祭壇に様々なものを捧げていく。
よく分からないが、神殿ができたことがよほどうれしかったのだろう。一時期は駄女神のことを悪魔だのなんだのと言っていたくせに、現金なものだ。
そんなこんなでひっきりなしにやってくる信徒たちの対応で忙しくしていたある日、俺はイストール公に呼び出され、例の聖女服を着てお城にやってきた。
何やら重大な演説を行うらしく、再生の宝珠で中継をするついでに俺にもその場に同席してほしいのだという。
というわけで、中継の準備を整えた俺たちは普段演説するというバルコニーへとやってきた。
するとさっそくイストール公が演説を開始する。
「この場に集まった諸君、そして記録の女神アルテナ様の奇跡により私の演説を聞いているすべての諸君! よくぞ集まってくれた!」
イストール公ははっきりと聞き取りやすい声でそう切り出した。
「すでに知っているという諸君も多いだろうが、改めて宣言する。イストレアは記録の女神アルテナ様の聖地となった!」
すると集まった観衆は大きく沸き立った。
ん? それって盛り上がることなのか?
その話はもう何日も前のことだし、しかもあれだけ大々的にやったのだ。国中の主要都市にも生中継したのだし、もうほとんどの人が知っているはずなのだが……。
「我が民よ! 記録の女神アルテナ様に祈りを捧げるのだ! 我らが女神は必ずや、諸君の祈りにお応えくださるはずだ! 見よ!」
イストール公は言葉を切り、俺のほうを見てきた。
……ん?
「その証拠に! 我らが女神は使徒リリス・サキュアさまを遣わてくださった!」
「「「うおおおおおお!」」」
えっ!?
まったく構えていなかったので一瞬驚いたが、俺はすぐさま笑顔を浮かべて聴衆に向かって手を振ってやる。
「リリス様~!」
「アルテナ様~!」
「かわいい~」
「こっち見て~」
熱狂的な声援に交じってとても使徒に向けたものとは思えないものもあるが……。
「本日より! 我が国の中心の国教は記録の女神アルテナ様を崇めるアルテナ教とし、記録の女神アルテナ様のお許しをいただけ次第、国号を神聖アルテナ公国へと改号する!」
えっ? そんなに簡単に国教を変えて大丈夫なのか?
それに駄女神の名前を国の名前にするなんて、大丈夫か?
「よって、これより女神アルテナ様を認めぬ神は悪魔と見なす!」
あー、悪魔かぁ。俺らも大変だったなぁ。
「無論、アルテナ様をお認めになる神々についてはこれまでと変わらぬ。各々が信じる神々を敬うとともに、アルテナ様にも祈りを捧げるのだ」
イストール公はそう言うと、再び俺のほうをちらりと見てきた。
「さあ! リリス・サキュアさまと共に! 記録の女神アルテナ様に祈ろうではないか!」
え? もしかして祈りの音頭を取れと?
……何をやるのかぐらいは共有しておいて欲しいかな。
まあ、このぐらいならいいけれど。
俺はイストール公の隣まで歩み出る。
「皆さん、さあ、共にアルテナ様に祈りましょう。アルテナ様は、皆さんの真摯な祈りを必ずお聞き届けくださいます」
俺はそう言うと、祈りの姿勢を取った。すると会場が一斉に静まり返る。
そうして五分ほど祈りを捧げていると、広場全体が淡い光に包まれた。そして……。
『皆さんの祈り、たしかに聞き届けました。神聖アルテナ公国の皆さんに祝福を授けましょう』
あの駄女神の声でどこからともなくそんな声が聞こえてきた。どうやらその声は聴衆たちにも届いていたようで、聴衆たちは涙を流して喜んでいる。
……あの駄女神がちゃんと女神をしていて違和感が半端ない。
そんなことを考えていると、イストール公が話しかけてきた。
「リリス様、ありがとうございます」
「いいえ、当然のことをしたまですから」
「ですが、これで我が民は救われました。アルテナ様とリリス様に、心より感謝いたします」
イストール公は今までになく殊勝な態度でそう言ってきた。ここまで感謝されているのであれば、あまり謙遜しすぎるのもよくないだろう。
「わかりました。これからもアルテナ様を末永く、よろしくお願いしますね」
「むしろ、我々のほうこそ、ですな」
イストール公はそう言うと、ちらりと観衆のほうを見る。
「リリス様、もう祈りはよろしいですかな?」
「はい」
「では、続きをいたします。これからは政治的な話となりますので、リリス様は下がられても大丈夫です」
「わかりました。では裏で聞いていますね」
「かしこまりました」
こうして俺は建物の中へと引っ込むのだった。
================
次回更新は明日、2024/06/09 (日) 18:00 を予定しております。
彼らの多くは笑顔なのだが、一部の人は感激して涙を流しながら祭壇に様々なものを捧げていく。
よく分からないが、神殿ができたことがよほどうれしかったのだろう。一時期は駄女神のことを悪魔だのなんだのと言っていたくせに、現金なものだ。
そんなこんなでひっきりなしにやってくる信徒たちの対応で忙しくしていたある日、俺はイストール公に呼び出され、例の聖女服を着てお城にやってきた。
何やら重大な演説を行うらしく、再生の宝珠で中継をするついでに俺にもその場に同席してほしいのだという。
というわけで、中継の準備を整えた俺たちは普段演説するというバルコニーへとやってきた。
するとさっそくイストール公が演説を開始する。
「この場に集まった諸君、そして記録の女神アルテナ様の奇跡により私の演説を聞いているすべての諸君! よくぞ集まってくれた!」
イストール公ははっきりと聞き取りやすい声でそう切り出した。
「すでに知っているという諸君も多いだろうが、改めて宣言する。イストレアは記録の女神アルテナ様の聖地となった!」
すると集まった観衆は大きく沸き立った。
ん? それって盛り上がることなのか?
その話はもう何日も前のことだし、しかもあれだけ大々的にやったのだ。国中の主要都市にも生中継したのだし、もうほとんどの人が知っているはずなのだが……。
「我が民よ! 記録の女神アルテナ様に祈りを捧げるのだ! 我らが女神は必ずや、諸君の祈りにお応えくださるはずだ! 見よ!」
イストール公は言葉を切り、俺のほうを見てきた。
……ん?
「その証拠に! 我らが女神は使徒リリス・サキュアさまを遣わてくださった!」
「「「うおおおおおお!」」」
えっ!?
まったく構えていなかったので一瞬驚いたが、俺はすぐさま笑顔を浮かべて聴衆に向かって手を振ってやる。
「リリス様~!」
「アルテナ様~!」
「かわいい~」
「こっち見て~」
熱狂的な声援に交じってとても使徒に向けたものとは思えないものもあるが……。
「本日より! 我が国の中心の国教は記録の女神アルテナ様を崇めるアルテナ教とし、記録の女神アルテナ様のお許しをいただけ次第、国号を神聖アルテナ公国へと改号する!」
えっ? そんなに簡単に国教を変えて大丈夫なのか?
それに駄女神の名前を国の名前にするなんて、大丈夫か?
「よって、これより女神アルテナ様を認めぬ神は悪魔と見なす!」
あー、悪魔かぁ。俺らも大変だったなぁ。
「無論、アルテナ様をお認めになる神々についてはこれまでと変わらぬ。各々が信じる神々を敬うとともに、アルテナ様にも祈りを捧げるのだ」
イストール公はそう言うと、再び俺のほうをちらりと見てきた。
「さあ! リリス・サキュアさまと共に! 記録の女神アルテナ様に祈ろうではないか!」
え? もしかして祈りの音頭を取れと?
……何をやるのかぐらいは共有しておいて欲しいかな。
まあ、このぐらいならいいけれど。
俺はイストール公の隣まで歩み出る。
「皆さん、さあ、共にアルテナ様に祈りましょう。アルテナ様は、皆さんの真摯な祈りを必ずお聞き届けくださいます」
俺はそう言うと、祈りの姿勢を取った。すると会場が一斉に静まり返る。
そうして五分ほど祈りを捧げていると、広場全体が淡い光に包まれた。そして……。
『皆さんの祈り、たしかに聞き届けました。神聖アルテナ公国の皆さんに祝福を授けましょう』
あの駄女神の声でどこからともなくそんな声が聞こえてきた。どうやらその声は聴衆たちにも届いていたようで、聴衆たちは涙を流して喜んでいる。
……あの駄女神がちゃんと女神をしていて違和感が半端ない。
そんなことを考えていると、イストール公が話しかけてきた。
「リリス様、ありがとうございます」
「いいえ、当然のことをしたまですから」
「ですが、これで我が民は救われました。アルテナ様とリリス様に、心より感謝いたします」
イストール公は今までになく殊勝な態度でそう言ってきた。ここまで感謝されているのであれば、あまり謙遜しすぎるのもよくないだろう。
「わかりました。これからもアルテナ様を末永く、よろしくお願いしますね」
「むしろ、我々のほうこそ、ですな」
イストール公はそう言うと、ちらりと観衆のほうを見る。
「リリス様、もう祈りはよろしいですかな?」
「はい」
「では、続きをいたします。これからは政治的な話となりますので、リリス様は下がられても大丈夫です」
「わかりました。では裏で聞いていますね」
「かしこまりました」
こうして俺は建物の中へと引っ込むのだった。
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