61 / 182
第61話 勇者の瞳に映るもの
しおりを挟む
2022/11/30 誤字を修正しました
================
ラントヴィルで村人たちが全員惨殺されたとの一報がボーダーブルクにもたらされたころ、将司は聖導教会聖騎士団の一員としてズィーシャードの町にやってきた。
ここはコーデリア峠に最も近いシェウミリエ帝国の軍事要塞都市だ。
「おお! アンタらが聖導教会の! よく来てくれたぜ!」
「ガーニィ将軍でありますな。私は聖導教会聖騎士団副団長ハロルドですぞ」
「おお! アンタがあの! 楽しみにしてるぜ! 俺とアンタがいりゃ魔族なんざイチコロだぜ!」
「はは。私よりもこちらのショーズィ殿のほうが魔力においては遥かに上ですぞ」
「なんだって? そいつぁすげぇな」
「ショーズィ殿、この方はガーニィ将軍ですぞ。シェウミリエ帝国軍きっての猛将で、私と変わらないくらい魔力を持っているのですぞ」
「ガーニィ将軍、ショーズィです。よろしくお願いします」
「おう! それよりお前、魔族みたいな髪の色してんな?」
「え?」
「ガーニィ将軍、ショーズィ殿は間違いなく人族、聖導教会の誇る勇者なのですぞ。ただ、ショーズィ殿は今回の戦が初陣なのですぞ」
「はーん、なるほどねぇ。まあ、いいぜ。初陣の奴に戦果は期待しねぇからな。きっちり生き残れよ。そのためにわざわざアンタがいるんだろ?」
「そのとおりですぞ」
「じゃ、勇者クン。よろしくな。早速タイマンすっぞ?」
「え?」
「タイマンすんだよ。初陣の奴がどんな実力か分からねぇで戦場に連れてけるわけねぇだろ?」
「は、はい」
こうして将司はズィーシャードの町へと入るやいなや、ガーニィ将軍と一騎打ちをすることになったのだった。
◆◇◆
ズィーシャードの練兵場に剣戟の音が響き渡る。
「はっ! やるじゃねぇか! 素質だけはピカイチだなぁ!」
「くっ」
余裕そうな表情で将司の剣をいなすガーニィ将軍に対し、将司は攻めながらも中々一太刀を入れられずにいる。
「今度はこっちから行くぜぇ! オラオラオラァ!」
「く、くそっ!」
流れるようなガーニィ将軍の攻撃に将司は防戦一方となってしまう。
「あんだぁ? その魔力は飾りかぁ? 勇者らしいとこ、見せてみろよ!」
「くそっ! 負けるもんか!」
将司がそう叫ぶと、体全体にオーラのようなものを身に纏った。
「そうだそうだ! 身体強化! やればできるじゃねぇか! こっちもいくぜぇ!」
ガーニィ将軍も同じようにオーラのようなものを纏い、将司に迫っていく。
先ほどまでとは段違いのスピードと威力の攻撃が繰り出されるが、将司は追いついてそれに対処する。
「まだまだぁ!」
ガーニィ将軍はさらにスピードをあげて攻撃を繰り返すが、将司はオーラをさらに強くしてそれに対抗する。
そのまま一進一退の攻防を繰り広げる二人だが、将司が受けた剣を強く弾いた瞬間ガーニィ将軍の体勢が崩れた!
「ここ!」
それを好機と見た将司はとどめと言わんばかりに渾身の一撃を繰り出した。
「なんてな」
ガーニィ将軍はニヤリと笑うと大ぶりとなった隙をついて目にも止まらない速さの一撃でカウンターを入れた。
「あ、が……」
将司はその一撃を受け、がっくりと地面に膝を突いてしまった。
「いやー、やるじゃねぇか。勇者クン、才能あるぜぇ。魔力だけならもう魔族並みじゃねぇか?」
「で、ですが……」
「あ? 負けて当たり前だよ。そもそも勇者クンはまだ剣を握って一年も経ってねぇんだろ? これから経験積んで、魔族どもから大切なモンを守れるくらい強くなりゃいいンだよ」
「……」
将司は悔しそうに俯いた。
「ま、勇者クンが本当に勇者んなって、人族を救えるのかはアンタ次第だぜ? アンタは若いんだ。いくらでも伸びしろはある。だから、初陣で死ぬんじゃねぇぞ?」
「……はい。ありがとうございました」
◆◇◆
翌朝、将司は朝早くから呼び出され、兵舎の会議室にやってきた。
将司がハロルドの隣に着席すると、すぐにガーニィ将軍が入ってくる。
「朝早くに呼び出してすまねぇ。アンタらも魔族どもが俺らにゾンビ発生の責任をなすりつけた挙句、警備中の俺の部下を殺しやがったのは知っているだろう」
「そんなことが……」
ガーニィ将軍の言葉に将司は眉をひそめ、小さくそう呟いた。
「だがな、さっきとんでもねぇ報せが入ってきやがったんだ。魔族どもはついにジャーミー峠(※コーデリア峠のシェウミリエ帝国名)を越えやがった。そんで国境の町ゾンシャールはあいつらの奇襲を受け、全滅した」
「え?」
「全滅ですと!?」
「そうだ。全滅だ。兵は皆殺し、それに民間人も殺されたそうだ」
「なんということを!」
「だが攻撃に気付いた兵が女子供を脱出させてくれた。おかげで状況が分かったんだ」
「……奇襲を受けたとなると」
「ああ、もたもたしているとここにも攻めてくるかもしれねぇ。正直あれだけ守りの強固なゾンシャールが落ちるとは思わなかった。だが、敵だって奇襲に頼らざるを得なかったんだ。万全じゃねぇ。今出て、ゾンシャールを奪還する!」
ガーニィ将軍はそう力強く宣言した。
「え? でも敵がどれだけいるか分からないのに行くんですか?」
「当たりめぇだろう。相手は魔族だぜ? あんなところに拠点を作らせるわけにゃいかねぇんだよ。それともなんだ? 勇者クンはおじけづいたのか?」
「そんなことは!」
「ショーズィ殿、ここはガーニィ将軍の言うとおりですぞ。魔族は個々の能力では人族よりも圧倒的に勝っているものの、数で回るのは我々なのですぞ。魔族に勝つには大軍をぶつけ、数で討ち取るのが定石なのですぞ」
「でも……」
「ショーズィ殿! ガーニィ将軍の言うとおりですぞ!」
ハロルドがそう強く言い聞かせると、将司の胸元で教皇からもらったネックレスの赤い宝玉がわずかな光を放った。
すると将司の表情がすっと穏やかなものとなった。
「……そうですよね。わかりました」
「ご理解頂けて何よりですぞ」
ハロルドは満足そうにそう頷いたが、その光に気付いたものは誰もいなかったのだった。
◆◇◆
すぐさまズィーシャードから総勢一万を超える兵士が出発し、その日の夕方にゾンシャールへと到着した。
しかしそこは完全な廃墟と化しており、つい先日まで人々の営みが行われていたとはとても思えないような惨状だった。
「ひどい。何もここまでやらなくても……」
「これが、魔族なのですぞ」
眉を顰めた将司にハロルドは悲しそうにそう言った。それに対して将司は返事をせず、小さくため息をつく。
すると、崩れかけた建物の中から物音がした。
「何者だ!」
兵士たちに緊張が走るが、中からは小さくすすり泣く声が聞こえてくる。
「生存者だ!」
「危ないですぞ!」
将司はそう叫ぶと、ハロルドが止めるのも聞かずに崩れかけた建物の中へと駆け込んだ。
するとそこには三歳くらいの幼い女の子が膝を抱えながらすすり泣いていた。
「大丈夫? 助けに来たよ?」
「ふぇ?」
将司に声をかけられた少女は顔を上げ、そしてそのまま大声で泣きだした。
「あ……」
どうしていいか分からずに困っていると、後ろからハロルドがやってきて将司に声をかける。
「ショーズィ殿、お手柄ですぞ。抱き上げや落ち着けてやるのですぞ」
「はい」
ショーズィが女の子を抱き上げると、そのままショーズィの胸に顔を埋めてワンワンと泣きだした。
「ああ! こんな幼子が! 魔族め! なんということを!」
ハロルドは怒りに身を震わせながら、目からは大粒の涙をボロボロとこぼす。
「魔族……なんてことを。俺が、俺が頑張れば……」
女の子の背中をあやすようにポンポンと叩きがら、将司は決意のこもった目でそう呟いたのだった。
================
ラントヴィルで村人たちが全員惨殺されたとの一報がボーダーブルクにもたらされたころ、将司は聖導教会聖騎士団の一員としてズィーシャードの町にやってきた。
ここはコーデリア峠に最も近いシェウミリエ帝国の軍事要塞都市だ。
「おお! アンタらが聖導教会の! よく来てくれたぜ!」
「ガーニィ将軍でありますな。私は聖導教会聖騎士団副団長ハロルドですぞ」
「おお! アンタがあの! 楽しみにしてるぜ! 俺とアンタがいりゃ魔族なんざイチコロだぜ!」
「はは。私よりもこちらのショーズィ殿のほうが魔力においては遥かに上ですぞ」
「なんだって? そいつぁすげぇな」
「ショーズィ殿、この方はガーニィ将軍ですぞ。シェウミリエ帝国軍きっての猛将で、私と変わらないくらい魔力を持っているのですぞ」
「ガーニィ将軍、ショーズィです。よろしくお願いします」
「おう! それよりお前、魔族みたいな髪の色してんな?」
「え?」
「ガーニィ将軍、ショーズィ殿は間違いなく人族、聖導教会の誇る勇者なのですぞ。ただ、ショーズィ殿は今回の戦が初陣なのですぞ」
「はーん、なるほどねぇ。まあ、いいぜ。初陣の奴に戦果は期待しねぇからな。きっちり生き残れよ。そのためにわざわざアンタがいるんだろ?」
「そのとおりですぞ」
「じゃ、勇者クン。よろしくな。早速タイマンすっぞ?」
「え?」
「タイマンすんだよ。初陣の奴がどんな実力か分からねぇで戦場に連れてけるわけねぇだろ?」
「は、はい」
こうして将司はズィーシャードの町へと入るやいなや、ガーニィ将軍と一騎打ちをすることになったのだった。
◆◇◆
ズィーシャードの練兵場に剣戟の音が響き渡る。
「はっ! やるじゃねぇか! 素質だけはピカイチだなぁ!」
「くっ」
余裕そうな表情で将司の剣をいなすガーニィ将軍に対し、将司は攻めながらも中々一太刀を入れられずにいる。
「今度はこっちから行くぜぇ! オラオラオラァ!」
「く、くそっ!」
流れるようなガーニィ将軍の攻撃に将司は防戦一方となってしまう。
「あんだぁ? その魔力は飾りかぁ? 勇者らしいとこ、見せてみろよ!」
「くそっ! 負けるもんか!」
将司がそう叫ぶと、体全体にオーラのようなものを身に纏った。
「そうだそうだ! 身体強化! やればできるじゃねぇか! こっちもいくぜぇ!」
ガーニィ将軍も同じようにオーラのようなものを纏い、将司に迫っていく。
先ほどまでとは段違いのスピードと威力の攻撃が繰り出されるが、将司は追いついてそれに対処する。
「まだまだぁ!」
ガーニィ将軍はさらにスピードをあげて攻撃を繰り返すが、将司はオーラをさらに強くしてそれに対抗する。
そのまま一進一退の攻防を繰り広げる二人だが、将司が受けた剣を強く弾いた瞬間ガーニィ将軍の体勢が崩れた!
「ここ!」
それを好機と見た将司はとどめと言わんばかりに渾身の一撃を繰り出した。
「なんてな」
ガーニィ将軍はニヤリと笑うと大ぶりとなった隙をついて目にも止まらない速さの一撃でカウンターを入れた。
「あ、が……」
将司はその一撃を受け、がっくりと地面に膝を突いてしまった。
「いやー、やるじゃねぇか。勇者クン、才能あるぜぇ。魔力だけならもう魔族並みじゃねぇか?」
「で、ですが……」
「あ? 負けて当たり前だよ。そもそも勇者クンはまだ剣を握って一年も経ってねぇんだろ? これから経験積んで、魔族どもから大切なモンを守れるくらい強くなりゃいいンだよ」
「……」
将司は悔しそうに俯いた。
「ま、勇者クンが本当に勇者んなって、人族を救えるのかはアンタ次第だぜ? アンタは若いんだ。いくらでも伸びしろはある。だから、初陣で死ぬんじゃねぇぞ?」
「……はい。ありがとうございました」
◆◇◆
翌朝、将司は朝早くから呼び出され、兵舎の会議室にやってきた。
将司がハロルドの隣に着席すると、すぐにガーニィ将軍が入ってくる。
「朝早くに呼び出してすまねぇ。アンタらも魔族どもが俺らにゾンビ発生の責任をなすりつけた挙句、警備中の俺の部下を殺しやがったのは知っているだろう」
「そんなことが……」
ガーニィ将軍の言葉に将司は眉をひそめ、小さくそう呟いた。
「だがな、さっきとんでもねぇ報せが入ってきやがったんだ。魔族どもはついにジャーミー峠(※コーデリア峠のシェウミリエ帝国名)を越えやがった。そんで国境の町ゾンシャールはあいつらの奇襲を受け、全滅した」
「え?」
「全滅ですと!?」
「そうだ。全滅だ。兵は皆殺し、それに民間人も殺されたそうだ」
「なんということを!」
「だが攻撃に気付いた兵が女子供を脱出させてくれた。おかげで状況が分かったんだ」
「……奇襲を受けたとなると」
「ああ、もたもたしているとここにも攻めてくるかもしれねぇ。正直あれだけ守りの強固なゾンシャールが落ちるとは思わなかった。だが、敵だって奇襲に頼らざるを得なかったんだ。万全じゃねぇ。今出て、ゾンシャールを奪還する!」
ガーニィ将軍はそう力強く宣言した。
「え? でも敵がどれだけいるか分からないのに行くんですか?」
「当たりめぇだろう。相手は魔族だぜ? あんなところに拠点を作らせるわけにゃいかねぇんだよ。それともなんだ? 勇者クンはおじけづいたのか?」
「そんなことは!」
「ショーズィ殿、ここはガーニィ将軍の言うとおりですぞ。魔族は個々の能力では人族よりも圧倒的に勝っているものの、数で回るのは我々なのですぞ。魔族に勝つには大軍をぶつけ、数で討ち取るのが定石なのですぞ」
「でも……」
「ショーズィ殿! ガーニィ将軍の言うとおりですぞ!」
ハロルドがそう強く言い聞かせると、将司の胸元で教皇からもらったネックレスの赤い宝玉がわずかな光を放った。
すると将司の表情がすっと穏やかなものとなった。
「……そうですよね。わかりました」
「ご理解頂けて何よりですぞ」
ハロルドは満足そうにそう頷いたが、その光に気付いたものは誰もいなかったのだった。
◆◇◆
すぐさまズィーシャードから総勢一万を超える兵士が出発し、その日の夕方にゾンシャールへと到着した。
しかしそこは完全な廃墟と化しており、つい先日まで人々の営みが行われていたとはとても思えないような惨状だった。
「ひどい。何もここまでやらなくても……」
「これが、魔族なのですぞ」
眉を顰めた将司にハロルドは悲しそうにそう言った。それに対して将司は返事をせず、小さくため息をつく。
すると、崩れかけた建物の中から物音がした。
「何者だ!」
兵士たちに緊張が走るが、中からは小さくすすり泣く声が聞こえてくる。
「生存者だ!」
「危ないですぞ!」
将司はそう叫ぶと、ハロルドが止めるのも聞かずに崩れかけた建物の中へと駆け込んだ。
するとそこには三歳くらいの幼い女の子が膝を抱えながらすすり泣いていた。
「大丈夫? 助けに来たよ?」
「ふぇ?」
将司に声をかけられた少女は顔を上げ、そしてそのまま大声で泣きだした。
「あ……」
どうしていいか分からずに困っていると、後ろからハロルドがやってきて将司に声をかける。
「ショーズィ殿、お手柄ですぞ。抱き上げや落ち着けてやるのですぞ」
「はい」
ショーズィが女の子を抱き上げると、そのままショーズィの胸に顔を埋めてワンワンと泣きだした。
「ああ! こんな幼子が! 魔族め! なんということを!」
ハロルドは怒りに身を震わせながら、目からは大粒の涙をボロボロとこぼす。
「魔族……なんてことを。俺が、俺が頑張れば……」
女の子の背中をあやすようにポンポンと叩きがら、将司は決意のこもった目でそう呟いたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる