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第62話 魔王からの呼び出し
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キエルナの寮に戻ってきてから二週間ほどが経過した。
特別に何かの用事があったわけではないのだが、ニール兄さんがせっかくだから羽根を伸ばせと言ってくれたこともあってダラダラと観光をして過ごしてしまったのだ。
エルドレッド様はとても忙しそうにしていたけれど、その合間にニール兄さんの義手の微調整をしてくれたし、私はそろそろホワイトホルンに帰ろうと思う。
もうホワイトホルンの雪解けがかなり進んでいるころだ。できれば春のゾンビ退治には間に合わせたい。それに近所の人たちには薬が近くで買えず、不便な思いをさせてしまっていることだろう。
そう考えた私はニール兄さんを誘い、エントランスホールの掃除をしていたブリジットさんに声をかけた。
「ブリジットさん」
「はい、なんですか?」
「私、そろそろホワイトホルンに帰ろうと思うんです。だからエルドレッド様とニコラさんにご挨拶がしたいんですけど」
「まあ、そうなの。寂しくなりますねぇ。ニコラさんは多分研究室にいますよ。でも坊ちゃまはねぇ……」
ブリジットさんはそう言って表情を曇らせた。
「エルドレッド様、何かあったんですか? 最近とても忙しそうですけど……」
「ボーダーブルクからお一人で戻ってらして以来、ほとんどお城に行ってらっしゃるんでよねぇ」
「そうですか。じゃあ、ニコラさんにだけご挨拶して帰ることにします。その、エルドレッド様には……」
「ええ! お任せください。きちんとお伝えしておきますよ!」
「ありがとうございます」
そうして私はニール兄さんと一緒にニコラさんの研究室へ向かおうとしたそのときだった。寮の扉が開かれ、一人の衛兵さんが入ってきた。
「あら、何か御用ですか?」
ブリジットさんが衛兵さんのところに駆け寄っていった。
「あちらの女性がホワイトホルンのホリーさんですか?」
「え、ええ。そうですが……」
ブリジットさんは遠慮がちにそう答えた。
「我々は魔王陛下の命でホリーさんをお連れしに参りました」
「えっ!?」
その言葉が聞こえ、私は思わず声をあげてしまった。
衛兵さんたちは私の前までやってきて、一枚の紙を手渡してきた。
「こちらは魔王陛下からの招待状となります。魔王陛下がぜひホリーさんとお会いしたいとのことですので、一週間以内に魔王城への登城をお願いいたします」
「わ、私にですか?」
「はい。ご都合のよろしい日時をお知らせいただけますか?」
「え? ええと……」
「ホリー、そういうことなら早いほうがいいだろう。衛兵さん、明日でも大丈夫ですか?」
ニール兄さんが横から会話に割り込んできた。
「……失礼ながらあなたは?」
衛兵さんは怪訝そうな表情でニール兄さんに聞き返す。
「失礼しました。俺はホワイトホルン衛兵隊所属のニールです。ホリーとは幼馴染で、ホリーの護衛も兼ねています」
「なるほど。そういうことでしたらニールさんもご同行いただいて構いません。それでは明日の午前九時三十分にお迎えに上がります。我々はこれにて失礼いたします」
衛兵さんたちはそう言い残すと、そのまま寮から出て行った。
「あ、えっと……」
「きっと、ホリーの奇跡の話がエルドレッド殿下から伝わって、それで見てみたいっていうんじゃないか?」
「うん、そっか。そうだよね。それに魔王様に会えるなんて、帰ったら自慢できるね」
「ああ、そうだな」
「そうですね、ホリーさん。ということは、明日は陛下にお会いするためにしっかり身支度しましょうね」
「え?」
「まずはその髪のお手入れからですよ。それだけ長いんですからね」
「え? え? 今からやるんですか?」
「もちろんですよ。この前は中途半端にしかできませんでしたからね」
「ええっ!? あれで中途半端だったんですか?」
「そうですよ。さぁさぁ、さぁさぁさぁ」
こうして私はブリジットさんに連れられて行くのだった。
◆◇◆
翌朝、私は長い身支度を終えて寮のエントランスにやってきた。
半日近くをかけてブリジットさんとマーサさんに磨いてもらい、まるでお姫様が着るようなドレスとアクセサリで着飾ってもらったおかげで私はもはや完全に別人に変身した。
特に変わったのは髪で、自分のものとは思えないほど艶やかで光沢を放っている。それにお肌もこころなしかもちもちしているような気がする。
エントランスホールではホワイトホルンの衛兵の服を着たニール兄さんと昨日の衛兵さんが待っていてくれたのだが……。
「……ホリー」
「ニール兄さん……」
「行くか」
「……うん」
ニール兄さんは素っ気なくそう言うと、すたすたと歩いていってしまった。
前も思ったが、少しくらいは褒めてくれてもいいのではないだろうか?
それから私たちは寮の前に停車していた魔動車に乗り込み、魔王城へと向かう。
しかしニール兄さんはなぜか車中でもずっと素っ気ない態度のままだった。
あれ? 私、何か怒らせるようなことでもしたっけ?
特別に何かの用事があったわけではないのだが、ニール兄さんがせっかくだから羽根を伸ばせと言ってくれたこともあってダラダラと観光をして過ごしてしまったのだ。
エルドレッド様はとても忙しそうにしていたけれど、その合間にニール兄さんの義手の微調整をしてくれたし、私はそろそろホワイトホルンに帰ろうと思う。
もうホワイトホルンの雪解けがかなり進んでいるころだ。できれば春のゾンビ退治には間に合わせたい。それに近所の人たちには薬が近くで買えず、不便な思いをさせてしまっていることだろう。
そう考えた私はニール兄さんを誘い、エントランスホールの掃除をしていたブリジットさんに声をかけた。
「ブリジットさん」
「はい、なんですか?」
「私、そろそろホワイトホルンに帰ろうと思うんです。だからエルドレッド様とニコラさんにご挨拶がしたいんですけど」
「まあ、そうなの。寂しくなりますねぇ。ニコラさんは多分研究室にいますよ。でも坊ちゃまはねぇ……」
ブリジットさんはそう言って表情を曇らせた。
「エルドレッド様、何かあったんですか? 最近とても忙しそうですけど……」
「ボーダーブルクからお一人で戻ってらして以来、ほとんどお城に行ってらっしゃるんでよねぇ」
「そうですか。じゃあ、ニコラさんにだけご挨拶して帰ることにします。その、エルドレッド様には……」
「ええ! お任せください。きちんとお伝えしておきますよ!」
「ありがとうございます」
そうして私はニール兄さんと一緒にニコラさんの研究室へ向かおうとしたそのときだった。寮の扉が開かれ、一人の衛兵さんが入ってきた。
「あら、何か御用ですか?」
ブリジットさんが衛兵さんのところに駆け寄っていった。
「あちらの女性がホワイトホルンのホリーさんですか?」
「え、ええ。そうですが……」
ブリジットさんは遠慮がちにそう答えた。
「我々は魔王陛下の命でホリーさんをお連れしに参りました」
「えっ!?」
その言葉が聞こえ、私は思わず声をあげてしまった。
衛兵さんたちは私の前までやってきて、一枚の紙を手渡してきた。
「こちらは魔王陛下からの招待状となります。魔王陛下がぜひホリーさんとお会いしたいとのことですので、一週間以内に魔王城への登城をお願いいたします」
「わ、私にですか?」
「はい。ご都合のよろしい日時をお知らせいただけますか?」
「え? ええと……」
「ホリー、そういうことなら早いほうがいいだろう。衛兵さん、明日でも大丈夫ですか?」
ニール兄さんが横から会話に割り込んできた。
「……失礼ながらあなたは?」
衛兵さんは怪訝そうな表情でニール兄さんに聞き返す。
「失礼しました。俺はホワイトホルン衛兵隊所属のニールです。ホリーとは幼馴染で、ホリーの護衛も兼ねています」
「なるほど。そういうことでしたらニールさんもご同行いただいて構いません。それでは明日の午前九時三十分にお迎えに上がります。我々はこれにて失礼いたします」
衛兵さんたちはそう言い残すと、そのまま寮から出て行った。
「あ、えっと……」
「きっと、ホリーの奇跡の話がエルドレッド殿下から伝わって、それで見てみたいっていうんじゃないか?」
「うん、そっか。そうだよね。それに魔王様に会えるなんて、帰ったら自慢できるね」
「ああ、そうだな」
「そうですね、ホリーさん。ということは、明日は陛下にお会いするためにしっかり身支度しましょうね」
「え?」
「まずはその髪のお手入れからですよ。それだけ長いんですからね」
「え? え? 今からやるんですか?」
「もちろんですよ。この前は中途半端にしかできませんでしたからね」
「ええっ!? あれで中途半端だったんですか?」
「そうですよ。さぁさぁ、さぁさぁさぁ」
こうして私はブリジットさんに連れられて行くのだった。
◆◇◆
翌朝、私は長い身支度を終えて寮のエントランスにやってきた。
半日近くをかけてブリジットさんとマーサさんに磨いてもらい、まるでお姫様が着るようなドレスとアクセサリで着飾ってもらったおかげで私はもはや完全に別人に変身した。
特に変わったのは髪で、自分のものとは思えないほど艶やかで光沢を放っている。それにお肌もこころなしかもちもちしているような気がする。
エントランスホールではホワイトホルンの衛兵の服を着たニール兄さんと昨日の衛兵さんが待っていてくれたのだが……。
「……ホリー」
「ニール兄さん……」
「行くか」
「……うん」
ニール兄さんは素っ気なくそう言うと、すたすたと歩いていってしまった。
前も思ったが、少しくらいは褒めてくれてもいいのではないだろうか?
それから私たちは寮の前に停車していた魔動車に乗り込み、魔王城へと向かう。
しかしニール兄さんはなぜか車中でもずっと素っ気ない態度のままだった。
あれ? 私、何か怒らせるようなことでもしたっけ?
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