ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎

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第25話 ゴブリン掃討戦(前編)

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 ゴブリンの巣の報告をしてから三日後、俺はギルドに呼び出された。

「ディーノ、よく来てくれた。ゴブリンの巣の規模が判明した。どうやら想定よりもかなり大きいようでな。領主様が軍を出して下さることになった」
「支部長、そんな大規模だったんですか?」
「ああ。偵察の結果、ディーノが見つけれてくれた巣は規模としてはおよそ三百。報告の通りだった。だが問題はここからで、この巣はメインとなる大きな巣から飛び出した一団に過ぎなかった。似たような巣が他に五つ、更にメインの巣は大きさすらわからない有り様だ。正直、冒険者ギルドだけでどうにかできるレベルを超えている」
「そんなにたくさん!」
「ああ。しかも分離した巣は全てゴブリンメイジが率いていたのだが、これは偶然では起こりえない。だから分離した巣もメインの巣の影響下にあるのだろう。そう考えると例えばゴブリンロードのような更に上位種が巣を率いている可能性だってあるぞ」

 支部長はそう言って大きなため息をついた。

 ゴブリンロードといえばランクAの有名な魔物で、体格も普通のゴブリンとは比べ物にならないほど良く、魔法も使ううえに配下のゴブリンを強化・統率するとされる恐ろしい魔物だ。

 一方のゴブリンメイジはCランクの魔物で、魔法を使う頭の良いゴブリンだ。もしあの時俺が五十匹のゴブリンを殲滅してやろうなどと考えていたら確実に俺はゴブリンメイジに殺されていたことだろう。

「それにしても、ディーノはお手柄だった。これが冬まで発見されていなかったら確実にスタンピードが発生し、大挙して近隣の村を襲っていただろうからな」
「そうなる前に見つけられて良かったです」
「ああ。そうだな。それで討伐作戦は三日後で、俺たち冒険者ギルドも討伐隊を出す。お前は『蒼銀の牙』と仲が良いんだったよな? だからあいつらと協力してお前が自分で見つけた巣を駆除してもらう」
「わかりました。ところで、領主様の軍も一緒に戦うんですか?」
「いや。巣ごとに担当を分けている。領主様の軍はメインの巣とその次に規模の大きい巣を担当してもらう事になっていて、残りの四つの巣は俺たち冒険者ギルドがやる」
「なるほど」
「それと、領主様から傭兵の勧誘があると思うが絶対に受けるなよ。まともな扱いはされないからな」
「はい」

 俺はこうして北の森に巣食ったゴブリンの掃討作戦に参加することになったのだった。

****

 そして掃討作戦の日がやってきた。俺はこの日のために痛んできた銅の剣の代わりに新調した鋼の剣を腰にぶら下げている。

 冒険者ギルドと提携している店で駆け出しの冒険者向けに販売している品物ではあるが、きちんとした鍛造品であり冒険者の用途と腕を考慮して頑丈に作られているのだそうだ。

 重さも長さも銅の剣とそれほど大きくは変わらないため、今の俺としても使いやすい。
 これは中々良い買い物ができたのではないかと思う。

 ちなみに防具は鉄の盾に皮装備といういつもの格好だ。

「やあ、ディーノ君。今日はよろしく頼むよ」
「はい。よろしくお願いいたします」

 俺が門の外の集合場所へ行くとそこには既にカリストさんがおり、『蒼銀の牙』の皆さんも勢揃いしていた。更に見知らぬ冒険者たちが二十人ほど集まっており、カリストさんが彼らに対して大きな声で演説を始めた。

「僕は『蒼銀の牙』のリーダー、カリストだ。Cランク冒険者として君たち討伐隊のリーダーを任された。敵はゴブリンメイジの率いる三百規模のゴブリンの巣だ。今回は別の巣でゴブリンロードの存在が疑われているので、たかがゴブリンといえども予想外の強さとなっている可能性が高い。気を引き締めてかかってほしい」

 カリストさんの言葉に周りの冒険者たちはうんうんと頷いている。

「この場にいる者は一人前の戦力と認められた者だけだ。こちらには治癒魔法があるが、それがあるからと慢心せずに自分の身は自分で守ってほしい」
「「「「おう!」」」」

 冒険者たちは当然とばかりにそう答えた。

「よし、それでは巣に向かって出発する。ディーノ君。道案内を頼むよ」
「はい。任せてください」

 俺は冒険者たちの先頭に立って北の森へと向かって歩き出そうとしたが、突然声をかけられた。

「おい! ハズレ野郎。お前は隅でただのゴブリンを相手してろ! 俺たちはメインの戦場だからな。これで手柄を立てれば俺たちは騎士だ。格の違いってやつを教えてやるよ!」

 他の冒険者たちがいるというのにフリオが意味不明な罵声を俺に浴びせてきた。

「おい! そこ! 冒険者などに構っていないでさっさと進め!」 
「ぐ……くそ。覚えてろよ」

 フリオは騎士にどやされると俺をもう一睨みしてから歩いて行った。

 なるほど。どうやらあいつは手柄を立てるために傭兵になったらしい。

 まともな扱いを受けないと聞いたが、どうなることやら。

「ディーノ君。気にしなくていいよ。僕たちは僕たちの仕事をしよう」
「はい」

 こうして俺たちはフリオの部隊とは別の方向へと歩き始めた。

「あーあ。あのガキ、死んだな。傭兵なんてただの捨て駒なのにな」

 俺の後ろで誰かのそう呟く声が聞こえたのだった。
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