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第44話 作戦会議
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それから一週間ほどにわたり色々と方法を試したが未だにあの第二階層を突破することはできていない。
まずは弓矢や魔法で上にいるゴブリンたちを倒すという方法を試した。だがただでさえ上を取られて不利なうえに魔石を回収することもできないため、迷宮にほとんどダメージを与えることはできなかった。
そして次は盾を構えて強行突破を試みようとしたがこれも火の玉を雨あられのよう降らされてるという執拗な攻撃の前に撤退を余儀なくされた。
そして現在検討されているのはどうにか上に登ってゴブリンたちを一掃するという手段を考えているのだが、その上に登る手段が無いため困っている。
「地下にあんなキルゾーンがあるのは反則だわン」
何度目かわからない作戦会議でそう呟いたトーニャちゃんも頭を抱えては大きなため息を一つ吐いた。
「さあ、みんな。どんな案でもいいから出してもらえるかい?」
そう俺たちに呼びかけるのはカリストさんだ。何だかんだでいつの間にかカリストさんは俺たち迷宮攻略隊のまとめ役のようなポジションに落ち着いている。
だがそんなカリストさんの呼び掛けに応えて意見を出す人はいない。もうすでに皆、考えられるアイデアは話してしまった後なのだ。
「じゃあ、ディーノ君。君はまだまだ経験がない。だからこそ僕たちの常識に囚われない発想ができると思うんだ。ほんの思いつきというレベルでも構わないから何かアイデアはないかい?」
「え? 俺ですか?」
まさか自分に話が振られると思っていなかった俺は動揺しつつも考えていたことを話してみる。
「ええと、単なる思いつきなんですけど、例えば階段から穴を掘って繋げるっていうのはどうですか?」
俺がそう言うと周りから失笑のような笑い声が漏れてきた。
あれ? 何かおかしなことを言ったのだろうか?
「なるほど。面白いアイデアだね。他にはあるかい?」
だがカリストさんは笑わずに俺に次のアイデアを促してくる。
「じゃ、じゃあ、毒ガスを流すっていうのはどうですか?」
「毒か。なるほど。他にはあるかい?」
「ええと、そうですね。あとは、閃光弾みたいなのはできないですか?」
「ん? 閃光弾って何だい?」
「強力な光と音を出して目潰しをするような感じ、でしょうかね?」
「なるほど? 目潰しというのは面白いアイデアだね。それで、それは一体どうやるんだい?」
「すみません。そこまでは。どこかにそんなようなものは無いですか?」
「うーん。僕は聞いたことがないね。誰か心当たりがある人はいるかい?」
カリストさんのその呼びかけに応える人はいない。
「誰も心当たりはないみたいだね。じゃあ、他にはないかい?」
「じゃあ、登るって事を考えて、ひたすら岩を運び込んで埋めるって言うのはどうでしょうか?」
「埋める?」
「はい。こう、階段のところからひたすら岩を投げてですね。段差を埋めてしまう感じです」
「ああ、なるほど。地道だけどそれならできそうだね。みんなはどう思う?」
「そうだな。投げるかどうかはさておき、それならイケるかもしれないな」
さっき失笑していた冒険者の一人がそう答えた。
「ああ、良いと思うぞ。時間はかかりそうだが梯子を掛けるよりは……いや、むしろそいつを囮にして梯子を掛けるってのはどうだ?」
「そいつはいいな。だが梯子だと目立ちすぎるからフック付きのロープを投げて登るのはどうだ?」
「それだ! そうするとその隙を作るにはゴブリンどもの目を引きつけておくひつようがあるな。だったら……」
こうして議論は進み、あれよあれよと次の作戦が決まったのだった。
会議が終わった後、俺は気になっていたことをカリストさんに質問してみた。
「あの、カリストさん。どうして穴を掘ると言ったときにみんな笑ったんですか?」
「それはね。迷宮の壁は壊せないからだよ。どんなに強力な攻撃をしたとしても迷宮の壁には傷一つつけることができないんだ。理由はわからないけどね」
「そうだったんですか……」
どうやら知らずにかなり恥ずかしい事を提案してしまっていたようだ。
「ははは。そんなに恥ずかしがることはないよ。僕はディーノ君には知識が無いと思っているからこそ君に意見を求めたんだ。おかげで議論が進んだじゃないか」
「それは、そうですけど……」
「聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥だからね。こうしてここで知れてよかったじゃないか」
カリストさんはそう言って俺の肩をポンと軽く叩いてくれたのだった。
まずは弓矢や魔法で上にいるゴブリンたちを倒すという方法を試した。だがただでさえ上を取られて不利なうえに魔石を回収することもできないため、迷宮にほとんどダメージを与えることはできなかった。
そして次は盾を構えて強行突破を試みようとしたがこれも火の玉を雨あられのよう降らされてるという執拗な攻撃の前に撤退を余儀なくされた。
そして現在検討されているのはどうにか上に登ってゴブリンたちを一掃するという手段を考えているのだが、その上に登る手段が無いため困っている。
「地下にあんなキルゾーンがあるのは反則だわン」
何度目かわからない作戦会議でそう呟いたトーニャちゃんも頭を抱えては大きなため息を一つ吐いた。
「さあ、みんな。どんな案でもいいから出してもらえるかい?」
そう俺たちに呼びかけるのはカリストさんだ。何だかんだでいつの間にかカリストさんは俺たち迷宮攻略隊のまとめ役のようなポジションに落ち着いている。
だがそんなカリストさんの呼び掛けに応えて意見を出す人はいない。もうすでに皆、考えられるアイデアは話してしまった後なのだ。
「じゃあ、ディーノ君。君はまだまだ経験がない。だからこそ僕たちの常識に囚われない発想ができると思うんだ。ほんの思いつきというレベルでも構わないから何かアイデアはないかい?」
「え? 俺ですか?」
まさか自分に話が振られると思っていなかった俺は動揺しつつも考えていたことを話してみる。
「ええと、単なる思いつきなんですけど、例えば階段から穴を掘って繋げるっていうのはどうですか?」
俺がそう言うと周りから失笑のような笑い声が漏れてきた。
あれ? 何かおかしなことを言ったのだろうか?
「なるほど。面白いアイデアだね。他にはあるかい?」
だがカリストさんは笑わずに俺に次のアイデアを促してくる。
「じゃ、じゃあ、毒ガスを流すっていうのはどうですか?」
「毒か。なるほど。他にはあるかい?」
「ええと、そうですね。あとは、閃光弾みたいなのはできないですか?」
「ん? 閃光弾って何だい?」
「強力な光と音を出して目潰しをするような感じ、でしょうかね?」
「なるほど? 目潰しというのは面白いアイデアだね。それで、それは一体どうやるんだい?」
「すみません。そこまでは。どこかにそんなようなものは無いですか?」
「うーん。僕は聞いたことがないね。誰か心当たりがある人はいるかい?」
カリストさんのその呼びかけに応える人はいない。
「誰も心当たりはないみたいだね。じゃあ、他にはないかい?」
「じゃあ、登るって事を考えて、ひたすら岩を運び込んで埋めるって言うのはどうでしょうか?」
「埋める?」
「はい。こう、階段のところからひたすら岩を投げてですね。段差を埋めてしまう感じです」
「ああ、なるほど。地道だけどそれならできそうだね。みんなはどう思う?」
「そうだな。投げるかどうかはさておき、それならイケるかもしれないな」
さっき失笑していた冒険者の一人がそう答えた。
「ああ、良いと思うぞ。時間はかかりそうだが梯子を掛けるよりは……いや、むしろそいつを囮にして梯子を掛けるってのはどうだ?」
「そいつはいいな。だが梯子だと目立ちすぎるからフック付きのロープを投げて登るのはどうだ?」
「それだ! そうするとその隙を作るにはゴブリンどもの目を引きつけておくひつようがあるな。だったら……」
こうして議論は進み、あれよあれよと次の作戦が決まったのだった。
会議が終わった後、俺は気になっていたことをカリストさんに質問してみた。
「あの、カリストさん。どうして穴を掘ると言ったときにみんな笑ったんですか?」
「それはね。迷宮の壁は壊せないからだよ。どんなに強力な攻撃をしたとしても迷宮の壁には傷一つつけることができないんだ。理由はわからないけどね」
「そうだったんですか……」
どうやら知らずにかなり恥ずかしい事を提案してしまっていたようだ。
「ははは。そんなに恥ずかしがることはないよ。僕はディーノ君には知識が無いと思っているからこそ君に意見を求めたんだ。おかげで議論が進んだじゃないか」
「それは、そうですけど……」
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カリストさんはそう言って俺の肩をポンと軽く叩いてくれたのだった。
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