ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎

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第47話 強行突破

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「それじゃあ、行くわよン」
「はい!」

 トーニャちゃんを先頭に『蒼銀の牙』の四人と更に数名の攻略隊の中でもトップクラスの実力を持つ冒険者たちでこの難所を強行突破することになったのだ。

 今回はさすがに俺はお留守番、かと思いきや引き続きメラニアさんの肉壁兼魔石拾い役として同行する。

 確かにこの鎧はゴブリン程度の攻撃では傷もつかないので肉壁役としては適任かもしれないが、行ったら最後作戦を成功させるまでは絶対に戻れないので恐怖はある。

 恐怖はあるのだが、もうここまで来たらやるしかない。

 俺は腹をくくってこの決死隊に遅れないように全力で走りだす。

 するとすぐに左右から矢と魔法が雨あられのように降り注ぎ、それを両手に持つ鉄の盾で受けて自分を、そしてメラニアさんを守る。

 そのまま数分間かけて矢と魔法の雨の中を進み続けると、フラウの言っていた通りの壁とそこに口を空けている入り口が見えてきた。

 そしてその左右には確かに上り階段がある!

「ディーノちゃん、ナイスだわン!」
「僕たちとディーノ君が左を担当します!」
「それじゃああたし達は右ねン」

 そして駆け抜けた先で二手に別れた俺たちは一気に階段を駆け上がる。

「オラァ!」

 リカルドさんがそう叫んでゴブリンたちの注意を引き、一斉に襲い掛かってきたゴブリンたちの攻撃を盾で受け止める。

 そこにルイシーナさんが魔法を撃ち込み怯んだところをカリストさんが切り込んで斬り捨てていく。

「シールドバッシュ!」

 カリストさんと入れ替わる様にして前に出たリカルドさんが気合と共にアーツを発動した。盾が淡く発光し、その盾を思い切り押し出すとそれにぶつかったゴブリンたちが大きく弾き飛ばされ、芋の子を洗うような状態だった彼らはまるで将棋倒しになるかのように次々と倒れていく。

『すごーい! ゴブリンたちがどんどん魔石になってるー』

 フラウが俺の周りのふわふわと飛びながら呑気にそんなことを言っている。

 俺は右手に持っていた盾を端に置くと断魔の聖剣を手に持った。

 俺たちの右側は壁であり、これからは右からの攻撃を気にする必要はない。であれば、リカルドさんたちが討ち漏らしてこちらに来たゴブリンを斬れるようにしておく方が良いと考えたからだ。

 そしてその考えはズバリ的中し、脇をすり抜けた四匹のゴブリンがこちら向かって突撃してきた。

 その手には剣を持っており、第一階層で戦っていたゴブリンよりも一回り体が大きい。

 俺はメラニアさんの前に立つと断魔の聖剣を右から横一閃に振るう。先頭のゴブリンは手に持ったボロボロの剣で俺の攻撃を受け止めようとするが断魔の聖剣はその剣ごとそのゴブリンの首を刎ねた。

 そして俺は剣を返して左に一閃し、二匹のゴブリンを斬り捨てる。

「最後ッ!」

 俺は鉄の盾を前に出して残る一匹の剣にぶつけて封じると断魔の聖剣を突き立てる。するとゴブリンは瞬く間に魔石となって地面に転がった。

「いや、これは……」

 自分でやっておきながらこの結果には少し唖然としてしまった。

 最初のゴブリンについては剣を弾くつもりだっただが、まさか剣ごと斬れるとは思わなかった。

 それにしても、勇者というのはこんなチート装備で戦っていたのか。そりゃあ大活躍するはずだ。

 そして今更ではあるが支部長がトーニャちゃんに断魔装備の一式を渡したがっていた理由を実感する。

「ディーノ様。頼りにしていますわ」
「あ、はい」

 そんなどうでもいい事を思っていたのだがメラニアさんの一言で現実に引き戻される。

 そして冷静になった頭で周囲の状況を確認すると、俺たちの前ではカリストさんたちが少しずつゴブリンを押し込んでいる。

 ひるがえって反対側の壁の上を見ると、トーニャちゃんたちが、いやトーニャちゃんが一人でゴブリンを殴り殺しており残った魔石を熟練の冒険者たちが拾っている。

 おっと、そうだった。俺も魔石を回収しなければ!

 思い出した俺は既に魔石拾いをしていたメラニアさんと一緒に魔石を回収していく。

 そしてそれから三十分くらいかけてゴブリンを倒し続け、俺たちはついに通路両側の壁の上を制圧することに成功した。

「こっちは回収終わったわよン。そっちはどうかしら?」
「こちらも回収が終わりました。特に異変はありません」

 トーニャちゃんが反対側から叫び、カリストさんがそれに大声で返事をした。すると、下の方から「よーし!」といった歓声が聞こえてきた。

「ディーノ君もお疲れ様。君がメラニアを守ってくれているから安心して前に集中できたよ」
「そんな……この剣のおかげです」
「そうかもしれないけど、それでも僕たちは君を信用していたからね。アントニオさんの厳しい修行をしっかりとこなして、そして勇気をもってこの場にこうして立ったんだ。そうした謙虚な姿勢は大切だけど、それでも少しは自分に自信を持っても良いんじゃないかな?」
「そう、でしょうか?」
「そうですわ。わたくしはディーノ様が守って下さると信じておりましたから、前の三人のサポートに集中できたのですわ」

 罵声を浴びせられたり殴られたりすることには慣れているがこうして褒められるのに慣れていない俺としてはどうにもこそばゆく感じてしまう。

「……ありがとうございます」

 それでもお礼の言葉を何とか絞り出した俺を見てリカルドさんがバシバシと俺の背中を叩いてきた。

「なんだその妙な態度は。こういう時はもっと胸張ってりゃいいんだ。こうやってな」
「ちょっと? こんないい子があなたみたいな体だけじゃなくて態度まで大きい悪い大人になったらどうするの!?」

 そう言って大げさにふんぞり返ったリカルドさんにルイシーナさんがツッコミをいる。

「何を? 誰が悪い大人だ!?」
「リカルドの事に決まってるでしょ?」
「くおらっ!」

 そんな二人の様子をみてカリストさんとメラニアさんが笑い合っている。

 ああ、やっぱり仲間って良いものだな。

 俺はそんな四人の様子を見て少し羨ましくなってしまった。

 だがそう思ったところで友達のいない俺にあんな仲間を作るのはかなり大変そうだ。

 そもそも同年代で会話をした相手なんてエレナと、あとは精々何かと絡んできたフリオくらいしかいなかった。エレナはすぐに殴ってくるのであんな素敵な関係になるのは無理だろうし、フリオに至ってはもはや完全な敵だ。

 そこまで考えた俺は今まで気づいていなかった重大な事実に気が付いてしまった。

 あれ? 俺ってもしかしてボッチなのでは?
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