悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

文字の大きさ
5 / 107

4 18歳 ②

しおりを挟む

数日後ジェイデンが隣国の王女と婚約した。


王宮で学んでいる王子妃教育が終わりアルバートの私室へ向かう途中、


「リリーアンヌ」


怒った顔をしたジェイデンが私の前に立った。


「どうしましたジェイデン王子」

「リリーアンヌ」


私を睨むジェイデン。


「分かったわジェイデン。どうしたの?」

「俺が怒ってる理由、リリーアンヌなら分かってるよね?」

「ええ」

「どうして俺なの?そんなに俺が側に居るのが嫌?」


真っ直ぐ私を見るジェイデン。

(ええ、ジェイデン、貴方はこの先アルバートの脅威になる。貴方の王の素質、それは私も認めてるの。貴方が王位を継ぐつもりも王位争いをするつもりがないのも知ってる。それでも貴方は担がれる。貴方の意思とは関係なくね。それが私は怖い。だから貴方を排除した。王位争いの火種になる貴方をこの国から排除したの。ごめんなさい。貴方は私の可愛い弟。幼い頃から一緒に過ごした貴方が可愛くない訳がない。大事な弟だと本当に思っているの。でも分かって。私が叶えたい夢はアルバートとタイラー、二人の夢を側で見守る事なの)


「俺がそんなに邪魔?」

「違うわ。アルバートではこの国を隣国から護れない。私とジェイデンは言わば運命共同体なの。ジェイデンは隣国から、私はこの国で、この国を護る為に、この国の民を護る為に、そしてアルバートを支える為に、私とジェイデンで手を取り合って護り支えたい。私はそう思ったからよ?

ねぇジェイデン、私と一緒にアルバートを支えてくれるわよね?私を助けてくれるわよね?ジェイデンが私を裏切らないって私は信じてる」

「俺はリリーアンヌにとって弟?」

「ええ」

「俺はいつかリリーアンヌを兄上から奪うつもりだった」

(それも分かっていたわ。そしてジェイデンならそれが出来るとも。優しさも非情さも持ち合わせている貴方だもの。アルバートの王位が揺るがない為に他国の王女を伴侶に、そう仕向けるつもりだったんでしょ?だから私は先手を打ったの)


ジェイデンと見つめ合う。


「俺は一人の女性として幼い頃からリリーアンヌが好きだった」

(それも知ってる。貴方が姉として慕っていたのではない事くらい知っていたわ。何年一緒に居たと思ってるの?)

「ジェイデン、貴方の私への思い、それはアルバートの真似をしているだけよ?」

「違う」

「違わないわ。アルバートが剣の稽古を真剣に取り組みだしたら貴方も真剣に取り組みだした。アルバートが僕から俺と言うようになったら貴方も俺と言うようになった。勉強だってそうよ?貴方はアルバートの真似をしたいだけなの。だから私への思いもアルバートの真似をしているだけ。それを貴方は本気で好きだと勘違いしてるだけよ?」

「俺の気持ちは俺にしか分からない。リリーアンヌには分からないだろ。何年も思い続けてきたこの気持ちは俺のものだ」

「ジェイデン、私は幼い頃から貴方を見てきた。だって私の可愛い弟なんだもの」

「リリーアンヌの気持ちは分かったよ。それでも俺はリリーアンヌが好きだ。その気持ちに嘘はない。今更捨てろと言われて捨てれる訳がないだろ」

「私もジェイデンが好きよ?」

「俺の気持ちと一緒にしないでほしい」

「そう、残念だわ」

「いつか、いつか、後悔する時がきっとくる。その時リリーアンヌがどう決断するのか俺は隣国から見守るよ」


踵を返してジェイデンは去って行った。私はジェイデンの背中を見つめる。

(ジェイデンごめんなさい。貴方を好きなのは本当よ?弟としてだけど、それでも貴方を大事に大切に思っているの。でもね、同時に貴方が怖い。アルバートの脅威だから、それも一つの理由。だから貴方の私に対する気持ちを利用するわ。

あと一つ、貴方の真っ直ぐな気持ち、それが私は怖い。なぜ怖いのか今の私には分からない。それでも貴方が私を見つめる瞳、貴方が私を真っ直ぐに思う気持ち、それが恐怖なの。だからアルバートから、私から、貴方を遠ざけた。

いつかきっと後悔するかもしれない。それでも貴方の幸せを私はこの国から祈ってる)


見えなくなったジェイデンの姿。


この時、私の未来が決まった瞬間だった。



しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

処理中です...