23 / 107
22 24歳 ⑦
しおりを挟む夜、私は子爵と子爵令息と塔の外で話をする。塔の敷地の周りをローレン隊の騎士達が警備し誰も入れないようにした。
「子爵令息、私は説明したわよね?それなのに貴方は馬鹿なの?」
「妃殿下が何を言いたいのかは分かっています。ですが父上と共に、が我々の出した結論です」
「そう。王妃として貴方達に命を下します」
「はい」
「子爵、並びに子爵の一族には帝国へ行ってもらいます。帝国で一からやり直しなさい。貴方達は平民になり陶器職人の手助けをしなさい。管理、売買、全て貴方達の仕事です。
そして子爵令息、貴方に帝国の男爵の爵位を譲ります」
「ま、待って下さい」
「どうしました子息」
「男爵の爵位とは」
「それは私が帝国で持っている爵位です。それを貴方が継ぎなさい。男爵領には陶器の原料の粘土が取れます。それを陶器にする職人はこれから移動してもらいます。貴方は男爵として領地を栄えさせ領民を護りなさい」
私は子息に男爵領を託した。
「王妃殿下、貴女は何を…」
「子爵、だから言いましたよね。力になれたと。
命は下りました。貴方達には拒否権はありません。
それと、ここから街へ出たらなるべく目立たないように。服とお金はこちらで用意します。野宿になる場合もあります。
遠回りにはなりますが隣国を通り帝国へ入国しなさい。それと貴方達は今日からディモルトと名乗りなさい。ディモルト男爵が帝国の名です」
「ですが辺境を抜けれるとは思いません」
「そこは大丈夫です。隣国側の辺境伯はこのことを了承済みです。隣国のジェイデン殿下も了承済みです。辺境へ行くまでの道中で見つからないように平民に紛れなさい」
「辺境伯はこの国を裏切るつもりですか」
「少し違います。辺境伯は陛下ではなく私に忠誠を変えただけです」
「ですが私は王に刃を向けた身、私が逃げ出す訳にはいきません」
「ええ、貴方を逃げ出させる訳にはいきません。だから貴方は自らの意思で逃げなさい。私は追わないだけです。多少の時間稼ぎは出来ますから」
「もし私だけ残った時は」
「その時は死をもって償ってもらいます」
「分かりました」
子爵と子爵令息と少し夜の散歩をする。私は二人の前を歩く。
「少し私のひとり言を聞いてくれる?
私も誰彼構わず助ける訳じゃないの。虚偽をすれば罰するべきだし、領民が迫害されていたら助けるべきだし、見捨てられたら手を差し伸べるわ。
子爵はアルバートに刃を向けた。それは決して許されない事よ。許してはいけない事。それでも貴方が今まで虚偽をする事なく、領民達を護り真っ当に生きてきた。王を敬い臣下として忠誠を誓う。まるで貴族の鑑のような人。理由が何であれ子爵を罰するのが私の役目。
でもね、やり直す機会を与えるのも私の役目なの。確かに今回は本当なら該当はしないわ。それでも生きていてほしい。貴方や貴方達みたいな貴族の鑑のような人はそうそういないのよ。
やり直すと言ってもこの国での貴方達は反逆者として名も残せず死んだ事になる。帝国へ向けてここを出た瞬間から貴方達の名はもうない。だから名を変える事になる。もし息子さんや娘さん、一族の若者がこの国に婚約者や好きな人がいても一緒に連れて行く事も帝国で結婚する事も出来ない。
それに今後はこの国との取引は出来ない。この国に一歩も入る事は出来ないの。完全にこの国と縁を切ってもらうしかないの。貴方達を生かすという事はそういう事よ。
それでも生きていてほしい。それは私の勝手な願い。ただ自分の手で、命で、人の命を奪うのが嫌なだけよ。
それが正当な理由であろうと人を殺した事には変わらないでしょ?人の命を決める、生か死か、その重さに私は耐えられないだけ…。
私は弱い王妃なの…」
私は振り返り二人と向き合う。
「私、これでも虚勢を張ってるのよ。子爵にも言われたけど私は小娘だから」
「王妃殿下、それは、」
「ううん、小娘なの。アルバートが優しい王なら私は甘い王妃。無慈悲になれない弱い王妃。それが私」
「王妃殿下、それは違う。確かに私からすればまだ若い王妃殿下は小娘です。貴女より年上の当主しかいないこの国で貴女を小娘だと馬鹿にするでしょう。実際私もしました。何も分かっていない、そう思っていました。
それでも違った。貴女はこの国を把握している。この国の為に最善を尽くしている。陛下が若い王なら王妃も若い。そんな事当たり前です。
弱いと思うなら強くなりなさい。甘いと思うなら厳しくなりなさい。まだ貴女は若い。若いから間違えても良いんです。次、間違えなければ良い。間違えながら成長していけば良いんです。
私は成長するお二人を、お二人が築くこの国を、側で、支え見守りたかった……」
「子爵、私も貴方に見ててほしかった。支えてほしかった。私とアルバートに教えてほしかった」
「なんて私は馬鹿な事をしたんだろう…」
子爵は頭を抱え蹲った。
12
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる