悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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24 24歳 ⑨

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朝を迎え私はローレン隊長と塔に入る。その後を騎士達も入る。今日のこの日、休日の騎士達も子爵の最期を見届ける為に集まった。

塔に入った先に、子爵は正装し背筋を伸ばし椅子に腰掛けていた。


「王妃殿下、私は国王陛下に刃を向けました。その罪を償う為に私の意思で自害します」

「分かりました」


私は毒を杯に入れ子爵の前に置いた。

『目を背けてはいけない。きちんと見るの。それが私のすべき事』

私は何度も何度も心の中で呟いた。

震える足を震える手を隠すように私は子爵を見つめる。

子爵は周りにいる騎士達を見回し、私と目を合わせた。

フッと優しい顔で笑った。


「確かに貴女は甘いのかもしれません。そんな泣きそうな顔を見せてはいけない。毅然としなさい。

貴女の進む道に幸あらんことを」


子爵は杯を手に取り、躊躇う事もなく一気に飲み干した。

椅子から崩れ落ちた子爵は床に寝転がり、苦しいはずなのに毅然とした態度で私に手を伸ばす。

私は子爵の手を握る。

見つめ合う瞳、


「貴女が王になりなさい。その方がこの国はこれからもっと繁栄する。貴女の作る国を…み…と……ど………け……………………」

「子爵?ねぇ子爵?子爵ーーーーー!」


私の目から溢れ出る涙の雫が優しい顔をしている子爵の顔にポタポタと落ちる。


「妃殿下」


子爵と繋がれた手をローレン隊長の手が包んだ。


「妃殿下、手を」


私は顔を横に振った。


「妃殿下」

「嫌よ。どうしてこんな良い人がこんな死に方になるの?どうしてよ、ねぇローレン、どうして?元を正せばアルバートがあんな法案を通したのが間違いでしょ?今まで通行料を取った事なんてなかったじゃない。それをアルバートが、」

「しっかりしなさい!」


ローレン隊長は子爵を見ていた私の頬を、両手を頬にあて顔を上げた。


「しっかりしなさい。今更過ぎた事を悔やんでも子爵は死んだんです。この安らかな顔を見て貴女のすべき事はなんです。悔やみ嘆く事ですか?子爵の亡骸から離れない事ですか?

貴女がすべき事は子爵の死を無駄にしない事です」

「……そうね。子爵が安らかに眠れる場所、子爵が愛した領地に埋葬しましょう。子爵を柔らかい布で包んでほしいの。荷馬車に揺られる事になるから…。

子爵領へ行きます」

「承知しました」

「少しの間だけお別れをさせてくれないかしら」

「ええ、少しの間だけ我々は外に出ています」

「ありがとう…」


ローレン隊長や騎士達が塔の外に行き私は声を出して泣いた。

悔やみ嘆くのはこれで最後にする。

だから…、今だけ…、悔やみ嘆かせて……。

どうして、どうしてよ、と…。

あのときアルバートに言うべきだった。通行料の設定を強く言うべきだった…。私の内でアルバートを信じたい思い、アルバートに嫌われたくない思い、それが私の判断を鈍らせた。

貴族なら分かるだろうと、無茶な設定はしないだろうと、

貴族も人間、自分の財を増やす為に良いようにするのは分かっていたのに…。

目が曇っていたのは私。

子爵は自害すると言った。それでも子爵を死に追いやったのはアルバートと私。この国に子爵は殺された…。


私はもう間違わない。

私の信じる道を私は行く。それがどんな道に繋がっていようとも。

私は強くなる。


私は最後の別れを子爵とし、塔の入口の扉を開けた。

眩しい光に目を瞑る。「ふぅ」と一息吐いて目を開ける。

目の前にいる私付きの騎士達


「ローレン、今から陛下の所に行きます。子爵の亡骸はテオに任せます。丁重に扱いなさい。ルーク、急いで公爵家へ行き、午後から訪問すると先触れを出しに行って」

「「「はい」」」


私はアルバートが居る執務室へ向かった。


コンコン

「リリーアンヌです。入ります」


返事を待たずに執務室へ入り、机に座るアルバートの前に来た。


「妃殿下」


私はイーサンを手で制した。


「陛下、子爵の処刑が終わりました」

「……そうか」

「私は子爵領へ今から行き領民達の受け入れ先を探し見届けるまでこちらには帰りません」

「ああ、頼む。子爵の親族はどうした」

「全員処刑しました」

「全員か?何故だ」

「何故?反旗を翻した親族を残してどうなります。恨みはまた新たな恨みを買います。また貴方は刃を向けられたいと?そんな馬鹿ではないと思いますが」

「そうだが…」

「私が居ない間、陛下が下す案件は全て陛下が責任が取れるものだけにして下さい。子爵のような臣下がこの国に、陛下に、必要だった事をお忘れなく」

「分かっている」

「では私は出立します」

「ああ、気をつけて行ってくれ」


私は踵を返し執務室を出た。

執務室を出た所にいるローレン隊長に、


「数ヶ月留守にするわ、騎士達の準備を。それと騎士達は全員連れて行くからそのつもりで」

「はい」


私は私室に戻り、メイドに頼み旅準備をしてもらった。


玄関ホールにはローレン隊長をはじめ騎士達も集まり、


「ルーク悪いけど孤児院へ行ってこれをアンネに渡して来てくれない?」

「分かりました」

「その後で公爵家へ来て」


私はアンネと約束した紙と色鉛筆を渡した。それから皆が大好きなクッキーも渡した。

昼過ぎ、私達は王宮を後にした。


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