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閑話 タイラー視点
しおりを挟むリリーアンヌが子爵領へ向けて旅立って3週間、僕はアルバートに呼ばれ、アルバートの執務室へ来た。
執務室には僕とアルバートの二人だけ。それでも扉の前にはフォスター公爵の子息が護衛として立ってるだろう。
「タイラー、タイラーは俺の相談役だよな?俺の幼馴染みで友だよな?」
「そうだけど、どうしたの?」
「タイラー、ルヴェンド公爵とシャドネー公爵を説得してくれないか」
「説得?何を説得するんだ?」
「側室の事はタイラーの耳にも入っているだろ?側室を娶る事を説得してほしい」
「アルバート、父上も叔父上も何も間違った事を言っていない。側室を娶らない事は法で定められている。それにアルバートが側室を娶る意味はないだろ」
「俺だってリリーアンヌとの間に子が出来てればこんな事言わないさ。俺達婚姻して5年だぞ」
「その5年の間に何があったと思う。ジェイデンの抜けた穴を必死で埋め、陛下の体調不良、陛下のご逝去、アルバートの国王戴冠。子供が出来ないんじゃなくて作れなかったんだろ」
「それは分かってるよ。作る時じゃなかった。でももう出来ても良いだろ?」
「行為をすれば直ぐに出来るとそう思っているのか?」
「そうじゃない、そうじゃないが」
「アルバート、アルバートに子が出来なければグレイソンの子がライアンの子が次期国王になる。それも法で定められている。側室を娶ってまで子を作る意味はない」
「この国の王は俺だ!俺の子が王位を継ぐのが望ましい、違うか?」
「ならもしジェイデンがこの国の国王になったとする。ジェイデンには子が出来なかった。大公になったアルバートには子供がいる。ジェイデンからアルバートの子に王位を継いでほしいと言われたらアルバートは断るんだな。俺の子は王の子ではないと断るんだな」
「それは、」
「法を変えてまでジェイデンの子を作れと言うんだな。法はそんな軽いものか?簡単に変えれるものか?
なあアルバート、子は大事だ。自分の子を王位に、そう思う気持ちも分かる。それでもそれよりも大事な事があるだろ。
アルバート、約束を忘れたのか?」
「覚えている。婚姻式の前日にタイラーに約束した事だろ?
もし側室を娶っても俺が愛しているのはリリーアンヌなのは変わらない。これからも幸せにする。リリーアンヌを蔑ろにはしない」
「違うだろ!」
「他にも約束したか?」
「僕が教える義理はない。自分で考えるんだな。
アルバート、僕も側室は反対だ。この国を護る為にもこの国の民を護る為にも、側室は断固反対する」
「タイラー!」
「アルバート、父上も叔父上もアルバートとリリーアンヌの間に子が出来る事が一番望ましいと思っているよ。
それに側室を娶る事を反対しているのは何も法だけの話じゃない。
アルバート、最近フォスター公爵と懇意にしているそうだね」
「ああ、色々相談や助言をもらっている」
「相談役の僕が居るのに?」
「タイラーは貴族の事には疎いだろ」
「僕は貴族との付き合いはない。それでも情報を把握していない訳ではないよ。
それに、
フォスター公爵は口が上手いペテン師だ」
「タイラー!言って良い事と悪い事があるぞ!」
「アルバート、子を作る為の側室を娶る事は禁じられている。もし愛しい人を側室にしたいならリリーアンヌとは離縁してからその女性と婚姻すれば良い。
父上と叔父上の懸念は何だと思う。側室に娶る予定がフォスター公爵の娘だと言う事だ。
アルバート、友からの最後の助言だ。
もしフォスター公爵の娘を娶るなら、この国を無くす覚悟を持った方が良い。
あっ、それと相談役を外すなら外してくれて構わない。アルバートが信用し信頼しているフォスター公爵を相談役にしたいなら僕は何も言わないよ。フォスター公爵と最期まで一緒にこの国にしがみついていなよ。最期まで共に、素晴らしいじゃないか」
僕はアルバートの執務室を出た。後ろから僕の名を呼ぶ元友人の声が聞こえる。僕はそれを無視した。
それから2日後、僕は相談役を外され、新たな相談役としてフォスター公爵が任命された。
リリーアンヌ、この国は終わったね…。
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