悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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閑話 アルバート視点 ①

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「タイラー!待てタイラー!」


タイラーが執務室を出て行った。

追いかけなくて良いのか?いや、追いかけないといけない。追いかけないとこのままタイラーとは疎遠になる、そう思った。

幼い頃から友でお互いの性格も把握している。変わり者、タイラーは昔から皆にそう言われている。それでもタイラーは変わり者ではない。確かに協調性はない、それでもタイラーの見る世界は広い。

幼い頃はその広さに嫉妬した時もあった。それでもタイラーは

『僕とアルバート、違うから一緒にいて面白いし楽しいんだよ。それに僕はアルバートはすごいと思う。何事にも一生懸命になれるってすごい才能だと僕は思うよ。だって僕、興味のないものに時間をかける事なんて出来ないもん。でもアルバートは例え興味がなくても向き合おうとするだろ?父様には見習えって言われるけど僕には出来ない事をアルバートは進んでやろうとする。そんなアルバートが僕には眩しいよ。僕、アルバートと友達で良かった。僕を僕のまま受け入れてくれるもん』

タイラーの性格は良く分かっている。だからこそ一度信頼を無くすと友ではいられない。

タイラーは良くも悪くも線引がはっきりしている。自分にとって善か悪か、そのどちらかしかない。

善の場合なら自分の身を顧みず手を貸してくれる。今までもそうだった。慈悲深い心を持っている。

悪の場合は一切交流をしない。その人が助けを求めても手を貸すどころかその人がどうなろうと構わない。無慈悲な所がある。


俺は友を失ったのか?

それとも、まだ……、


タイラーを追いかけようと席を立つ。

タイラーが出て行きイーサンが入って来た。今は扉の前にいる。


「陛下どちらへ行かれるつもりですか?」

「少し部屋を開ける」

「もうそろそろ父上がこちらに来ます」

「分かっているが、今はフォスター公爵よりも大事な用だ」

「いけません。約束を守るべきです」

「それは分かってる。だが、」


コンコン

イーサンが扉を開けた。入って来たのはフォスター公爵。


「おや、陛下どちらかへ行かれる予定でしたか?少し早かったかな」

「あ、良い、それで話は何だ」

「側室の事ですが」

「それは、反対の意見もある。それに子供を作る為だけに娶るのは違う」

「ではご寵愛されたらどうです」

「私が愛しているのは王妃のリリーアンヌだけだ。それは変わらない。それに王妃にも悪い」

「王妃殿下もご安心すると思いますよ。子が出来ない事が負担になっていると思います。眠れぬ夜を過ごす事もあるでしょう」

「そうだが、」

「今も心無い言葉を耳に入れたくなくてあの反逆者の後始末を進んでやっているとか」

「それは違う。私が頼んだのだ」

「そうでしたか。それでも王妃殿下には心無い言葉をかける者が多いのは事実です」

「そう、なのか?」

「はい。夜会では貴族から毎度言われています。王妃殿下が前王妃殿下のようにお茶会を開かないのも夫人から毎度言われるからです。子はまだか、と」

「そうか…、」

「王妃殿下の負担を軽くする為に私は側室を、と言っているんですよ。私も王妃殿下が心無い言葉で傷つく姿は見たくない。あんなに慈悲深い王妃殿下です。内心では王妃殿下も側室を賛成なさっておいでだと思います」

「そう思うか?」

「はい」

「そうか…、王妃にとっても子が出来ないのは負担だろうな」

「ええ、ご自分のせいだとご自分を責めているかもしれません。私は王妃殿下にご自分を責めてほしくない」

「私もだ」

「私の娘はまだ18歳で王妃殿下よりも若い。子が出来る可能性を秘めています」

「だが公爵を無視する事は出来ない」

「ええ、そこで提案なんですが」

「聞こう」

「側室は法で禁じられていますが、第二夫人は禁じられておりません。他国では妃とは別に夫人を持つ王もおります。立場に違いはあまりありませんが、それでも妃をたてる、私の娘は王妃殿下を崇敬しております。あの御方のようになりたいと、見習い真似ばかりしております」

「そうなのか?」

「はい」

「少し考えさせてくれないか」

「承知しました」


フォスター公爵が出て行き、一人執務室に残った。

タイラーに手紙を書き、


「イーサン」


執務室に入って来たイーサンにタイラーへの手紙を託した。

次の日、約束の時間になってもタイラーは来ない。タイラーに限って約束を守らない事はしない。

ああ、俺はもう線引をされたのか…


俺は机の上に両肘をたて手を組む。組んだ手に額をあて顔を俯ける。


コンコン

「陛下入りますよ」


入って来たのはフォスター公爵。


「陛下どうされました」


俺は顔をあげた。


「いや、」

「陛下、私をお側にお置き下さい。私は貴方を裏切らない。貴方様を崇敬し忠誠を誓っております。貴方は立派な御方だ。私はそのお手伝いをしたいと思います。

貴方を良き王に、それが私の望みです」

「公爵」

「陛下が築くこの国をこの国の未来を一緒に、貴方と共に、それが私の切なる願いです。アルバート王の名を永久に残しましょう」

「ありがとう公爵。今後も私の相談にのってくれるか?」

「勿論です。相談役としてお側にお仕え致します」

「心強い」



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