34 / 107
閑話 アルバート視点 ②
しおりを挟む俺はフォスター公爵に相談する事が多くなった。それはただ単に公爵が毎日執務室に顔を出すからだが。
「陛下、一度娘とお会いして見ませんか?」
「公爵、第二夫人は考えさせてくれと言ったはずだ」
「勿論です。ですが相性もお有りでしょう。第二夫人に迎えてから相性が悪かった、では何の為に娶るのか分かりません」
「確かにそれも一理あるか」
「はい。臣下とお茶をする、別に何もやましい事ではありません」
「それもそうか」
俺は公爵の娘のナーシャ嬢と王宮の庭園でお茶をする。
「アルバート陛下、本日はありがとうございます。私、憧れの陛下とお会い出来てとても嬉しく思います」
「そうか」
「お父様から陛下がいかに素晴らしい御方で責任感が強く、政務にも力を注いでおられるか、毎日聞いております。陛下が護るこの国はこの国の民は本当に幸せ者です」
「そう思うか?」
「はい。現に今私は幸せ者ですもの」
頬を染めて顔を俯ける姿が可愛らしいと思った。
「陛下」
ナーシャ嬢は私を見つめ、私の手の上に手を重ねた。
「陛下も人です。いかに陛下が素晴らしい御方でも時には息を吐き、気を休める必要があると思います。そのお力に私がなれたなら、私はとても嬉しく思います」
「ありがとう」
「私はずっと陛下をお慕いしておりました。これからも私がお慕いする御方は陛下だけです。
陛下、」
ナーシャ嬢は俺と重ねた手を握り、俺の手を自分の頬に付け、恥じらいながらスリスリとさせた。
その姿に俺は心を奪われた。いや、もしかしたら俺の初恋かもしれない。リリーアンヌと一緒にいてもこんなに胸がドキドキと煩くなった事はない。
それからも毎日ナーシャ嬢とお茶をし、庭園を散歩する。
ナーシャを第二夫人に、
その気持ちが大きくなった。
コンコン
「陛下」
「入ってくれ」
執務室に入って来たのはフォスター公爵。
「公爵、第二夫人の件、進めようと思う」
「はい、それがよろしいかと」
「色々面倒をかけるが私を助けてくれるか」
「はい、陛下を崇敬する臣下として、相談役として、この国の公爵として、陛下のお力になりたいと存じます」
だが、ルヴェンド公爵とシャドネー公爵は断固として認めてはくれない。
『側室を娶らないというのは妃以外の女性を娶らないという事。第二夫人だから良いという訳ではない。もしフォスター公爵令嬢を娶りたいのなら、王妃と離縁しなさい』
リリーアンヌと離縁したい訳ではない。リリーアンヌほど王妃に相応しい者はいない。
ナーシャでは王妃は無理だ。それは話をしていても分かる。考えが幼い。それに母上と同様な気がする。それは自分の首を絞める事になる。父上が良い例だ。
王と王妃、助け合わなければこの国も民も護りきれない。実際リリーアンヌの采配は的確だ。俺の補填をしてくれているのも分かっている。
リリーアンヌを愛していない訳ではない。俺にとって無くてはならない存在。幼い頃から共に過ごし俺を一番理解してくれるのもリリーアンヌだ。離縁?そんな事は考えた事もない。
タイラー、俺はタイラーに聞いてほしい。俺はどうしたら良い?
なあ、タイラー
俺はその日、お酒を浴びるように飲んだ。途中から記憶もない。
朝、目が覚めると頭がズキズキと痛む。
「どれだけ飲んだんだ…」
隣の温もりに、
「リリーアンヌ帰っていたのか」
俺は後ろから抱き寄せた。
リリーアンヌとタイラーとは幼い頃からよく昼寝を一緒にした。そりゃそうだ、2歳頃から一緒に過ごしていれば昼寝も一緒にする機会は多い。リリーアンヌを真ん中にし、俺は左、タイラーは右。ジェイデンが入る事もあったが、タイラーは一人布団に包まって眠る癖がある。そして俺はリリーアンヌを後ろから抱きしめる癖があった。
1歳になる前に母上から離された俺は寝る時は人肌が恋しい。それでもリリーアンヌは嫌がらず俺を受け入れてくれた。
幼い頃からリリーアンヌの温もりに心が休まり休息が出来た。俺の唯一無二の場所。それは今でも変わらない。
少し寝ぼけながらにも何か違和感があった。
「アルバートさまぁ?」
俺は慌てて起き上がった。
「どうして、どうしてナーシャがここにいる」
「忘れちゃったの?昨日お兄様に用があって王宮に来たらアルバート様が私の手を引っ張ってこの部屋に」
俺もナーシャも裸。ベッドの周りには脱ぎ散らかした服が散乱していた。
「もしかして、」
「アルバート様、私、アルバート様の子が出来ました」
「な、なん、なんで分かる」
「母親の感?昨日の夜でアルバート様の子が宿った、そう感じました」
俺はベッドの布団をめくる。
「キャッ」
シーツにはナーシャの破瓜の印が残されていた。よく見るとナーシャの体にも情事の跡が残されていた。
俺はルヴェンド公爵とシャドネー公爵、その他の側室を反対する貴族を無視し、第二夫人にフォスター公爵令嬢を娶ると王命を出した。
2週間後、側室を賛成する貴族だけを招いてナーシャと婚姻式挙げた。
27
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる