悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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閑話 ナーシャ視点

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お父様から


「ナーシャ、あの小娘が居ない今のうちにあの若造の気を引け。素晴らしいだの、立派だの、とりあえず褒め続けろ」


お父様にとってリリーアンヌ様は邪魔な存在。リリーアンヌ様がアルバート陛下の側に居る限り何も手出しが出来ない。


リリーアンヌ様はアルバート陛下の騎士


お父様はそう思っている。


「え~、アルバート陛下って私の好みじゃないのよね~。好きになんてなれないわ」

「好きになるんじゃない、好きにさせるんだ。そしたらお前はずっと贅沢三昧だぞ」

「私王妃なんて嫌よ」

「王妃はあの小娘がやってくれる。お前は陛下の寵愛だけ受け取り優雅に暮せば良い。好みの男とはその後で内密に会えば良いだけだ」

「それなら良いけど。私、責任とか取らされるのは絶対に嫌だから」

「その責任は全部小娘がとるさ」


お父様の言葉を信じてアルバート陛下を褒め称え続けた。時には手を繋ぎ、時には恥じらい、時には体を密着させた。

男って馬鹿よね

それだけで好きだとか勘違いするんだから。アルバート陛下も所詮男なのよ。一目見た時から好きだ、愛してるって。

リリーアンヌ様はこんな男のどこを好きになったの?

お父様の手のひらで転がされて、お父様は好きなように政務をしている。


あの日もお兄様から急に呼び出されて王宮へ行ったらアルバート様はお酒を浴びるように飲んでいて酩酊状態だった。


「ナーシャ、少し酒に媚薬を入れた。既成事実が一番手っ取り早い」


そう言われアルバート様の私室に入り、アルバート様の手を引いてベッドまで誘導した。

お父様が良く言ってるわ。素直と言えば聞こえは良いが、優しいだけの盆暗だ。


「リリーアンヌ、帰って、きた、のか?」

「ええ、早くアルバートに会いたくて」

「そう、か、」

「ねぇアルバート、私、やっぱり貴方から身を引くべきだと思うの。子が出来ない私では貴方に迷惑をかけるわ」

「離さない!俺が、絶対に、離さない!リリーアンヌ、愛してる」


そう言うとアルバート様は服を乱雑に脱いで私のドレスも乱雑に脱がした。

まさかと思ったけど、本当に素直?ね。普通私とリリーアンヌ様を間違える?でも既成事実は作れたわ。

私は第二夫人として王宮で暮らす事になった。


お父様は側室に反対していた貴族には制裁を与えたわ。流石に公爵家には何も手出ししなかったけど。


「ナーシャ、王妃が帰ってくるまでに陛下の寵愛を確実なものにしろ、良いな」


私は毎日夜になると陛下の私室へ行き閨を共にする。

昼間も執務室を除き、


「アルバート様、休憩しましょ。アルバート様のお顔、お疲れよ。いくらアルバート様が立派な王でも休憩は必要なのよ」


私はアルバート様の膝の上に座り頬を撫でる。それから手を引いて庭園まで来てお茶をする。


「ナーシャがこうやって引っ張ってくれるから俺は休息が出来る。それにナーシャの前では王の顔を見せなくて良いしな」

「そうよ。私の前では力を抜いてほしいわ。その為の私でしょ?」

「ああ、そうだ」


私を力強く抱きしめるアルバート様を私は優しく抱きしめる。


「ナーシャの側は落ち着くよ…」


それでもアルバート様の寵愛が全部私に向いている訳ではない。


私はいつものように執務室を覗く。


「どうしたの?」


手紙を読んでるアルバート様の顔が幸せそうな嬉しそうな顔をしていた。


「ナーシャか。いや、孤児院から届いた手紙なんだが、リリーアンヌはずっと変わらないな、と思ってな」


机の上にある絵を私は手にした。


「それは孤児院の子がお姉ちゃんに着てほしい服だそうだ」

「お姉ちゃん?」

「シスターからの手紙では妃殿下と約束したらしい。それに泥だらけの手でドレスを汚してしまい申し訳なかったと謝罪の手紙だ。その子がどうしてもお姉ちゃんに渡してほしいとシスターが手紙を書いたみたいだ」

「これ、アンネね」

「知ってるのか?」

「知ってるも何もこれ私だもの。この前孤児院へ行った時の話だと思うわ。私も第二夫人だもの、妃殿下って名乗っては駄目だった?」

「いや、駄目ではないが…、そうか、ナーシャか…」

「ええ。アンネ、約束通り書いてくれたのね」


私は絵を見てるふりをした。絵にアンネって書いてあるし、泥だってリリーアンヌ様なら気にしないわね。笑って泥くらいって言うでしょうね。


リリーアンヌ様がまだ公爵令嬢だった頃、お母様に連れられて孤児院へ行ったらリリーアンヌ様は子供達と遊んでいた。それこそドレスが泥だらけになろうと汚れようと気にせず。

私の近くに来た孤児院の子が私は汚いと思った。『そんな手で触らないで』私はその子をあっちへ行ってと押した。尻もちを付いたその子は服が汚れた。

その子はそのままリリーアンヌ様の方へ走って行き、リリーアンヌ様はその子を抱き上げた。自分の服が汚れようが、涙をドレスで拭いてようが気にせず。

私は公爵令嬢よ。それに私には真似出来ない。服が汚れるのも、孤児院の子達と手を繋ぐのも、孤児院の子達と遊ぶのも。

だってこの子達、捨て子よ?

それに服だってボロボロ、髪の毛も伸びっぱなし、汚いじゃない!

それに物乞いみたいで気持ち悪いわ!

私はその日以来孤児院へは行っていない。


例え第二夫人になっても孤児院へは絶対に行かない。ましてやこんな高価なドレスを汚す?いやいや、考えられないわ!

あんな汚い子達の将来なんて私には関係ないもの。


「そうか、ナーシャだったのか」


アルバート様は私を抱きしめ、


「俺にはナーシャだけ側に居てくれたら、それだけで良い。愛してるナーシャ」


この日、アルバート様の寵愛を完全に私のものにした。



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