悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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32 領民の移動

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手を挙げた一人の男の子


「俺はどうなる。俺は両親が居ない。今は領主様と暮らしている。領主様は帝国へ行けるのか?」

「本当ならハミルはもう処刑されていてもおかしくないの。だから貴方達を見送ったら罰を受けないといけない。当主と領主は一対、当主が反逆したらなら一対の領主もその罰を受ける。それは変わらないわ」

「なら俺はどうすれば良い!一人で暮せって言うのか!」

「ハミル、貴方ご家族は?」

「妻は病気で亡くなりました。元々子はいません」

「そう。どうしようかしら」

「俺がこれからは面倒を見る」


ルシーの父親が声を発した。


「ありがとう。ではお願いします。

皆さんもう一度よくご家族で話し合って下さい。そしてまた聞かせて下さい。それと帝国へ移住する事が決まった家族から帝国へ移動します。荷造りなどお願いします」


私はハミルと目配せし邸の中に入った。

ハミルと向かい合い座る。


「ハミル、貴方には全員が帝国や他の領地へ移ってから帝国へ向けて出発してもらいます。それまでは処刑されるつもりで領民達と接して下さい」

「理解しています」

「あの子にも悪い事をしてしまったわ」

「帝国で会えますから」

「そうね」

「その時に事情を説明します」

「そうしてもらえると助かるわ」


その日の夜、


「妃殿下、来客が」

「ありがとう」


私は玄関まで行き、


「貴方がコークスね」

「ああ、だが俺に頼んで良いのか?」

「ええ、貴方だから良いのよ」

「俺の噂を聞いていないのか?」

「知ってるわよ。出稼ぎの人達を帝国へ運ぶ商売をしているんでしょ?」

「まあそうだが」

「後は奴隷商人、だったかしら?」

「ああ」

「褒められた職業ではないわね」

「だが生きる為だ」

「本来ならここで捕まえるべきだけど、今はここの領民達を帝国へ運んでほしいの。決して奴隷じゃないから、そこは気をつけて」

「分かってる。破格の値段だしな、そこは守る」

「領民達を全員帝国へ運んだ後、私の目に入ったら捕まえるからそのつもりで」

「分かってるさ」


私は一枚の手紙を渡した。


「これを帝国側の辺境に着いた時に渡してほしい人がいるの」

「これをか?」

「ええ、毎度渡すから毎度その人に絶対に渡してほしいの」

「分かった。だが誰だ」

「トネード卿よ」

「トネードってあのトネードか?帝国の番人、赤い鬼神、あのトネードか?」

「ええ、そのトネード卿よ」

「なんでそんな奴に、」

「昔の知り合いなの。彼になら任せられるから。必ずトネードに渡してほしいの。騎士達に何を言われても何が何でもトネードに直接渡して、良い?」

「分かった。でもよ、俺は出稼ぎの者達を辺境へ送る商売を生業にしてるが、奴隷商人だと言う事も知られている。そんな俺がここの領民を辺境へ運んだら奴隷と思われても仕方がないぞ。後で文句を言われてもこっちも困る」

「それは大丈夫よ。どちらかと言えば奴隷と思われた方が良いの。だから貴方に頼んだの。家族総出で出稼ぎに行く人がいると思う?それに領地全員を帝国へ送るのよ?逃したと思われるより奴隷と思われた方が都合がいいもの。

逃したとなるとその後を追及されても困る。でも奴隷なら誰も追及はしないわ。助け出すにもお金が必要になる。助け出せないのに追及だけする人はいない。だって見てみぬふりをした人からすれば目覚めが悪いじゃない。奴隷の環境下は悪いわ、それを知っていて止めなかった。それを一生背負いたい人なんていないわ」

「確かにそうか」

「早くて明日から動いてもらうからそのつもりで」

「ああ任せろ」


次の日の朝、丘から戻ればハミルと一緒に2家族が邸の前に立っていた。


「どうしたの?」

「あの、俺達兄弟で、家族皆で帝国へ行こうと思っている」

「分かったわ。残す家族はいない?」

「いない。向こうでも一緒に暮らせるんだろ?」

「それは安心して」

「荷物を纏めればいいか?」

「ええ。明日の早朝にここを出発してもらうからそのつもりで」

「分かった」

「荷物を運び出すなら手伝うから遠慮なく言ってほしいの。荷馬車にも積みたいし」

「分かった」


ハミルに聞いて家を教えてもらいコークスと騎士達に荷物を積んでもらう。


「コークス、2家族だけど大丈夫?予定では1家族づつ移動させようと思っていたんだけど」

「ここから辺境までは1日あれば着く。馬の状態を見て休憩は挟むがほぼぶっ通しになるがな」

「無理はしないで。宿屋に泊まるならきちんと支払うわ」

「宿屋になんか泊まる訳ないだろ。出稼ぎの奴等は早くその地に着いて働きたいし、奴隷なら尚更秘密裏に移動するに決まってるだろ。やっても野宿だ」

「そう」

「見つかって俺も捕まりたくないしな。それに逃げ出されても困る」

「それもそうね」


次の日の早朝、コークスは眠い目を擦りながら御者の席に座っている。

私も今日は丘へ行かず家族が来るのをハミルと一緒に待っている。


「来ました」


騎士の一人が声を発した。

2家族が荷馬車に乗り込んだ。


「できればガキは奥に座らせてくれ」


コークスの声に子供を奥に座らせ、


「帝国で貴方達は生きるの。子爵の分まで幸せになって」


私は馬車が見えなくなるまで見送った。


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