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34 最後の一人
しおりを挟む領民達を全員見送り最後に残ったのはハミルだけになった。
ハミルと子爵が眠る丘に来ている。
ハミルは花を供え暫く目を瞑り、そして立ち上がった。
「妃殿下、この度は本当にありがとうございました。領民達の無礼はお許し下さい」
「それは気にしていないわ。皆子爵を思えばこそだもの」
「妃殿下、私は帝国には行きません。皆を見送りここで、」
「ハミル、もし自害するとか言うのならそれはやめなさい」
私はハミルの言葉を遮った。
「ですが」
「ハミル、子息ではまだ領民をまとめる事は出来ないわ。元々暮らしている男爵領の領民とここの領民、いざこざが全くない訳ではないと思うの。経験の浅い子息では男爵領の領民達を抑える事は出来ないと思う。だからハミルが必要なの。
ハミルの気持ちは分かるわ。一蓮托生、家族や親族は何事にも共にある。子息達もそうだったけど貴方も家族の絆は強い。当主が処刑されるなら共に処刑される。
でもね、子爵を思うなら生きなさい。子爵の分まで生きなさい。それが貴方に与える罰よ」
私はハミルと見つめ合った。お互い目を離さず相手を見つめる。
少しの間聞こえるのは草が風に揺られる音、木の葉っぱが風に揺られ擦れる音だけ。
静かな時間が過ぎ、
「分かりました。罰を謹んでお受け致します」
「ハミル、帝国で子息と共に力を合わせて生きて」
「はい、ありがとうございます」
「ハミルには馬で帝国へ行ってもらう事になるけど大丈夫?」
「はい」
私がいつも乗っていた馬はここの領地に居た馬。
荷物はコークスが荷馬車で運び、コークスとの契約は終わる。
「気をつけて」
「はい」
「コークスもこれで契約は終わりよ。今後は遠慮しない」
「分かってる」
コークスは私をジッと見つめている。
「なに?」
「もし秘密裏に逃げたくなったらいつでも呼んでくれ。直ぐに逃してやる」
「ふふっ、その時はお願いするわ。貴方も気をつけてね。危険な事はやめなさいよ」
「俺はヘマはしない」
「そうね、そんな気がするわ。
コークス、何度もここと帝国を行き来させてごめんなさいね。数ヶ月ありがとう。これで貴方ともお別れね」
「ああ、じゃあな」
ハミルとコークスを見えなくなるまで全員で見送った。
ローレン隊長は私の横に来て、
「妃殿下、王宮へ帰られますか?」
「そうね。でもその前に領地を見て回りたいわ」
「分かりました」
「明後日にはここを出発しましょう」
私はテオと一緒に歩いて領地を見て回った。
「妃殿下誰か来ます」
私は遠くからこちらに向かってくる黒い物体を見た。誰かが他の領地から帰って来たのかもしれない。
「……う」
誰かが叫んでいた。
目視できる所まで近付いてきてようやく誰か分かった。
「コナー」
私は手を振った。
「お嬢ー」
コナーも手を振っている。
コナーが私の目の前に来て馬から降りた。
「コナーこんな所までどうしたの?」
「旦那に行けと言われたんだよ。お嬢も旦那も俺への使いが荒いんだよな」
「ふふっ、それは仕方がないわよ。コナー程使える人いないもの。
それより辺境まで送り届けてくれた?」
「ああ、皆無事に送り届けた。今は帝国に入ってるくらいじゃないか?」
「領地には辿り着いてないかもしれないけど帝国には入ったわよね」
「ここの領民達はどうなった?」
「さっき最後の一人を見送って全員帝国へ行ったわ。今はとりあえずトネードに頼んであるわ」
「ゲッ!」
「コナー」
私とコナーは顔を見合わせ笑いあった。
コナーは馬の手綱を私の後ろに居るテオに渡し、
「悪いがお嬢と二人きりにしてほしい」
「ですが」
「テオ、ごめんなさい、コナーと久しぶりに二人きりで話がしたいの」
「分かりました」
テオはコナーの馬を引いて邸に歩いて行った。
「どうしたの?」
「アルバートが第二夫人を娶った」
「そう」
「おまけに…、」
「おまけに何?」
「子が出来た。実際には出来てないだろうが」
「…………そう。そういう行為をしたって事ね」
「ああ。それで慌てて婚姻式を挙げた」
「お父様は?」
「招待もされてない。旦那だけじゃなくて側室を反対していた者は全て招待されなかった」
「そう」
「それだけならまだ良かったんだが、」
「良いわ、はっきり言って」
「反対していた者達は公爵に制裁をされた」
「どんな?」
「取引先に圧力をかけたり、税の徴収をされたり、有る事無い事でっちあげた。で、その貴族達は今は火の車になってる家もあれば立場が弱くなった家もある。まあ旦那が裏から手を回しているけどな」
「そう」
「なあお嬢、このままで良いのか?」
「アルバートはフォスター公爵を相談役に置いた。そして公爵は好き勝手している。アルバートに不満を募らせる貴族は多くなる。
貴族達の謀反、民達の暴動、
フォスター公爵を側に置いた時点でアルバートはこの国の王ではないわ。傀儡になった王」
「お嬢それだけじゃない。戦が起きるぞ」
「ええ。そっちは私がアルバートと離縁すれば済む話よ」
「それはどうだろうな、あいつはそんな事で許す相手じゃない」
「そうかしら」
「お嬢、お嬢も分かってるだろ?あいつは絶対に許さない。アルバートは死ぬ」
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