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39 お馬鹿さん
しおりを挟む次の日の朝、私はアルバートの執務室へ来た。
「陛下、私と離縁して下さい」
「またその話か。昨日も言っただろ。俺はリリーアンヌと離縁するつもりはない」
「なら昨日はどちらで眠ったのです?」
「それは、」
「あぁ、ナーシャ様と閨を共にしたのですね」
「なぁ、」
私はアルバートの言葉を遮り、
「歴代王妃の私室も今は第二夫人のナーシャ様の私室のようですし、ね?」
アルバートと目があい、私は笑顔を向けた。
「歴代王妃の私室にいるナーシャ様がやっぱり王妃様なんだわ。陛下もそう思い歴代王妃の私室を与えたのよね。あら、納得!
私は王宮の居候だとお思い下さい。私もこれからは優雅に過ごさせて頂きます。あ、それと居候の私は今日、街へ遊びに行きますので、ではご機嫌よう」
「お、おい!」
私は執務室を出て私室へ戻り、ローレン隊長だけ連れて王宮から直ぐに出た。
夜になり王宮へ帰って来た私を、
「妃殿下、こんな遅くまでお出かけですか?」
「イーサン、何かしら。陛下の私室も王妃様の私室もここじゃないわ。ここは用済みの居候の私室。
それと私を妃殿下なんて言わないでほしいわ。もう私は妃殿下ではないもの。妃殿下は貴方の妹のナーシャ様よ?だって第二夫人なんでしょ?王妃が不在の時の王妃の代わり。第二夫人の役目ってそうよね?」
「陛下への当てつけですか?それで陛下から寵愛をもらえるとでも?」
「寵愛?そんなものいらないわ。私は王妃でも陛下の妻とももう思っていないもの。離縁してくれればこんなところさっさと出ていくわ。
それに、王妃は陛下の寵愛を受けてる人がなるべきだわ。王と王妃は一対、愛がなければ支える事もできないもの。この国を思い、この国の民を思う。陛下と志を一つに。
私は陛下を信用も信頼もしていない。そんな私がどうして陛下を支えないといけないの?そうでしょ?
ねぇ、イーサン、貴方からも陛下に言ってくれないかしら。早く離縁して可愛い妹を王妃にしてくれ、って」
「妹は王妃の椅子に興味はありませんから」
「あら、私も王妃の椅子にもう興味もないわ。案外ナーシャ様と話が合うかもしれないわね」
「妃殿下」
「誰のこと?私はリリーアンヌよ」
「分かりました。以前の約束を致しましょう」
「以前?何か約束したかしら?」
「陛下が妹と夜を共にする間、私が妃殿下の相手をしますよ」
「ふふっ、あらやだ。あんなの本気にしたの?でもごめんなさいね、悪いけど私、貴方の事好みじゃないの。私だって好みの男性が良いし私にも選ぶ権利はあるわ。だからね、貴方は他をあたって下さる?
ローレン来て」
ローレン隊長と私室の中に入った。
「妃殿下」
「シッ」
私はローレン隊長に扉の方を向いて目配せした。
暫くしてイーサン隊長の遠ざかる足音が聞こえ、
「ローレン隊長、明日から私の護衛はしなくて良いわ」
「妃殿下!それはいけません」
「私にはコナーがいるから。少しの間コナーと行動を共にするつもりよ。明日からは王宮を出たら実家へ行って。そしたら貴方達は帰って」
「妃殿下、私には理由を教えて下さい」
「そうね、謀反を起こさせない為、かしら」
「どういう意味です」
「それは追々ね」
「分かりました」
「私は貴方達を信じてる。でも今は少し待って」
私は毎日アルバートに会う為に執務室へ行き「離縁してほしい」と訴え続けた。そしてアルバートから良い返事がもらえないとそのまま実家へ帰り、夜遅く王宮へ戻る。
毎日イーサンは私の私室の前で待ち、
「貴方って暇なの?」
思わず言ったのは無理もない。
「そんなに私の相手をしたいとは思わなかったわ」
「なっ、馬鹿な」
「あらそうなの?なら毎日部屋の前で待つのはやめてくれる?
あ!もしかして夜這い?夜這いなら夜這いらしくしてくれれば良いのに。
ふふっ、貴方ってお馬鹿さんね?」
次の日、イーサンは部屋の前で待って居なかった。
私はマイラと代わり、マイラは私のベッドで寝ているふりをしている。
私は隣のミーナとマイラの部屋に隠れ、
ガチャ
隣の部屋の扉を開けた音。
私とローレン隊長、数人の騎士達は物音たてずに隣の部屋から出て、私だけ私室に入った。
私室に入った私は直ぐに明かりを灯す。
「イーサン!何をしてるの!」
「妃殿下?え?」
イーサンは布団を捲った。
「イーサンが私のメイドを襲っているわ!」
私室の扉は開いたまま。私は大きな声をあげた。その声に廊下にいたローレン隊長と騎士達が私室に入りイーサンを羽交い締めにする。
私の私室の近くには近衛隊の夜の間だけの待機部屋がある。私の声に他の騎士達が集まる。
「イーサン!貴方、何をしたの?もしかして!彼女を…無理矢理…」
「違う!私は潔白だ!」
「潔白?私付きの騎士でもない貴方がなぜ私の私室に入ってるの?それにベッドの上で何をしていたの!」
「妃殿下、貴女は…」
私は笑顔をイーサンに向けた。
そしてマイラを見るふりをしてイーサンに近付き、イーサンの耳元でイーサンにしか聞こえないように囁いた。
「貴方って案外お馬鹿さんだったのね、ふふっ」
「ッ!」
私は、イーサンさんから離れた。
「早く、早くこの強姦魔を連れて行って」
待機部屋に居た騎士達に連れられてイーサンは部屋を出て行った。
ふふっ、これで私に近づく事は出来ないわ
イーサンは謹慎処分を受けた。
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