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44 反対派 ①
しおりを挟む「まさか貴方が第二夫人反対派だとはね」
私の目の前に座るのはウイング侯爵。
「てっきり貴方は賛成派だと思っていたわ」
「以前の私なら賛成していました。ですがあの天災の時から私は王妃は貴女しかいないとそう思っています」
「だけど第二夫人を娶っても私が王妃なのは変わらないわよ」
「妃殿下、私は一国に王が一人なら妃も一人、それが望ましいと思っています。以前の私なら第二夫人を賛成したのではなく、貴女を廃妃させ新たな妃を、そう声を発したでしょう。
妃殿下は今のこの国をどうお思いか。第二夫人を娶りどうなったとお思いか」
「二分しているわね」
「はい。二分していてはいずれ軋みが生じ亀裂が入ります。国の中で争いが起こります」
「ええ。謀反、暴動、国中で争い王妃派、第二夫人派、どちらが勝っても負けてもこの国の痛手には変わらないわ」
「だからこそ第二夫人は反対なのです。そして貴女こそ王妃の器に相応しい者もいない」
「そうかしら。第二夫人のナーシャ様でも王妃の器はあるかもしれないわ」
「前王妃のような器ならあるでしょう。
ナーシャ妃が今のこの国の状態を把握していますか?もし把握しているなら何故何もしないんです?」
「それはフォスター公爵が、」
「それでは困るんです」
ウイング侯爵は私の言葉を遮った。
「フォスター公爵は何の権限もない一貴族です。第二夫人のナーシャ妃の方が立場は上。それなのにフォスター公爵に任せきり。今や王宮はフォスター公爵の手の内です。権限もない一貴族のフォスター公爵が、です」
「そうね、陛下の相談役と言っても一貴族なのは変わらないわ」
「あの天災で私は陛下から何のお咎めもなかった。ですがその後、妃殿下から手紙を頂きました。
《陛下が咎めないのなら私は何も言いません。それでももし貴方の心が咎めたのなら子爵家と男爵家、辺境へ行った元領民達の為に取引先を変えなさい。元領民達の分を補填できるだけの取引をしなさい》
あの手紙で私は子爵家と男爵家に取引先を変えました。辺境には武器の提供、物資を寄付という形で贈っています。
あの時きちんと咎められていたら、罰を受けていたら、そう思いました。
初めは咎められなかった事に安堵しました。あれから何度も領地へ行き領地を見て、薬品の匂いがまだ残る中、何度も馬車が通った跡、柵で囲われた被害のあった土地、残った領民達の顔、私はその光景が未だに忘れられません。もし妃殿下が領民達を助けていなかったら流行り病はこの国中に広がっていたでしょう。大勢の人が亡くなり大切な人が苦しみながら死んでいく。
恨みの矛先は私と私の家族。妃殿下は領民達だけでなく私達を救ってくれました。そして私は安堵した自分を恥じた。私はいつの間にか貴族の悪の部分を大事にしていたと。己の立場、己の保身、護るべきは我々だと。貴族あっての領民だと。
ですが本来は領民あっての貴族。王都での立場より領民にとってよい当主、それが貴族のあるべき姿。それを私は忘れていた」
「ええ、護るべきは己の立場ではなく民。私は民を護る為に手を差し伸べた。そして流行り病を国中に回らないようにしただけ」
「ええ、そしてその手柄は陛下が手にした」
「民から民へ、アルバート王の名は広まるわ。王は民を見捨てない、自分達を大事にしてくれている。その声が大きくなればなるほどアルバート王の存在は大きくなる」
「そこまでして陛下の名声は大事ですか?」
「大事よ。揺るぎないものにする為に」
「だから今も影から支えていると?」
「ええ。この国を護る為に。この国の民を護る為に。それから、アルバートが王としていられるように…」
「今日私に第二夫人をなぜ反対したのか確認を取りに来ただけではないのでしょう?」
「ええそうよ。貴方は侯爵の中でも上位。それに顔も広い。国中の事も国外の事も全て把握している」
「帝国が武器を仕入れているのと関係があるのですね」
私は目を瞑った。
やっぱりこの人は侮れないわね。
私は目を開け侯爵を真っ直ぐ見つめた。
「帝国はこの国に攻めてくる。だから貴方にお願いがあるの。
帝国が声明を出したら私に何があろうと邸から出ないで。そして邸の庭にある花壇の花を全部抜いて。そして戦う気はないと降伏して」
「それにも意味があると?」
「ええ、声明が出たら一気に攻めてくる。黒い悪魔が先陣きってね」
「皇帝が先陣…」
「その意味は貴方なら分かるわよね」
「はい、この国を滅ぼす」
「そう、この国を滅ぼす為に。アルバートの首だけじゃない。貴族の首も…。
貴方が貴族の中でこの人には生きてほしいと思った人がいるなら伝えて。邸に留まり花壇の花を全部抜く。そして剣を捨て降伏して。そしたら助かるから…」
「妃殿下は何をするつもりです」
「私は皇帝を止める為に離縁をしたい」
「その意味を私にも教えて頂けませんか」
「子供の頃の次期王二人が交わした約束の誓い。その二人がお互い王になった。誓った約束を違えた時、宣戦布告と受け取ると約束した。一人の王は約束を忘れ、一人の王は約束を護る。
王同士の約束の誓い。それでもこれは私的な事。私的な事でこの国を巻き込むのは違うわ」
「妃殿下、子供の頃の戯言でも王として誓った以上責任がある。それが私的な事だとしても、いくら忘れたとしても、誓いを立てた王が報いるのは仕方がない事です。
分かりました。私が本当に助けたいと思った者には声をかけましょう」
「ありがとう、お願いするわ」
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