57 / 107
50 コナー ②
しおりを挟む「しょうめいしょがないならわたしのじゅうしゃになれば?」
「じゅうしゃ?」
「わたしのそばでつかえるひと」
「それは、おれでも、…できるか?」
「うん」
コナーと目が合った。真っ直ぐ私を見るコナー。
「おれでいいのか?」
「わたしはコナーがいいの。だからわたしのそばにいてくれる?」
「ああ…」
コナーはポロポロと涙を流した。後にも先にもコナーの涙を見たのはこの時だけ。
ご両親が亡くなりきっと一人で生きてきた。他人が残した物を拾い懸命に生きてきた。
お父様は離れた所からずっと私達を見ていた。
お兄様の護衛として付いてきたトネード達にも手を出させず、只只見守っていた。
お父様が側に来て右手でお兄様の頭を左手でコナーの頭を撫でた。
「二人共今日から俺の息子だな。よし、今日はここで宿に泊まるか」
ハリーが手続きを済ませ帰って来たら、今度は宿屋を探しに行った。
宿屋に移動した私達。
「トネード、悪いがこの子を風呂に入れてくれるか?」
「分かりました」
コナーはトネードに連れられて違う部屋に入って行った。
「アダン、アダンも今日から俺の息子だ」
そう言うとお父様はお兄様を抱きしめた。
「おとうさま、おにいちゃんがわたしのおにいさま?」
「そうだ」
そう言うとお父様は私とお兄様を一緒に抱きしめた。
「アダンおにいさま」
私はお兄様の手を繋いだ。お兄様は戸惑いながら繋がる手に力を入れた。それはまるで返事をしているように思った。
トネードに洗われたコナーはハリーが準備した服に着替え、ハリーと髪を切りに行った。
私はお兄様と手を繋いで辺境の街を見て回った。コナーとハリーも合流し、皆で夕食を食べた。
私の右手はお兄様と繋がれ左手はコナーと繋いでいる。
「あれたべたい。おにいさまは?」
お兄様はコクンと頷いた。
「コナーは?」
「おれは、」
「たべたいの?たべたくないの?どっち?」
「……たべたい」
「うん。ならみんなでたべましょ」
果物が入ったカップを一人づつ買ってもらい、私が一口食べてお兄様のカップと交換した。お兄様は交換された果物を食べ、コナーはあっという間に食べ終わっていた。
コナーは私の従者になるより騎士になりたいとトネードから剣の指導を受け、公爵家へ着いてからもトネードに鍛えられた。そこにお兄様も私も交ざりトネードの指導を3人いつも一緒に受けた。
コナーはいつも私の側に居た。一緒にタイラーを護ろうと、そして私を護るんだと、どんどん強くなっていった。
この国では珍しい赤い髪。誰に何を言われようがコナーは気にしなかった。一度話すとなぜか可愛がられるコナー。
この国に入国した時にコナーが私に言った言葉。
『おれのいのちをおまえにわたす。それくらいしかわたせるものもないしな。しぬときはいっしょだ』
私はそんな事を言ってほしい為にコナーを助けた訳じゃない。それでもコナーの心は変わらなかった。それは今でも…。
「コナー、コナーは生きたいように生きてね。今までずっと私を護る為に恋人だっていなかったでしょ?私はコナーにも幸せになってほしいの。トネードの跡を継ぐ、それだってとても素敵な事よ?」
「お嬢、俺は変わらない。死なばもろとも、それが俺の幸せだ」
『お前』からいつの間にか『お嬢』と呼び方が変わり、私の騎士になると言ったように私を護る騎士になった。私が動けない代わりにコナーが私の手となり足となり率先して動いてくれた。
20年、長い年月でコナーは私の一部になってる。兄のような友のような、同じ師匠の元で学んだ仲間のような、競争相手のような、弱みも見せられ、甘える事もできる。誰も気づかない些細な変化も見逃さない。コナーに隠し事は出来ない。
「なあお嬢、一つ聞いて良いか?」
「なに?」
「まだアルバートを好きか?」
「好きよ」
「………そうか、分かった」
それでも、コナーに隠し通さないといけない。
少しでも躊躇うとコナーはアルバートを許さない。コナーはお兄様と同じだから。
それでもお兄様と違うのは私の気持ちを察してくれる所。私の嘘を見抜いてもその嘘に付き合ってくれる。
私が嘘をつき続ける限りは…
5
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる