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閑話 コナー視点
しおりを挟む「まだアルバートを好きか?」
「好きよ」
お嬢の嘘を見抜くくらい造作もない。
俺が留守の間にアルバートと何かあった、それは分かる。それでもお嬢が嘘をつくなら俺はその嘘を守る。
マイラに聞いても答えてはくれないだろうしな。マイラもお嬢が隠そうとしている事なら例え拷問しても口は割らない。
マイラも俺と同じで『死なばもろとも』腹を括った奴は『主と共に』だ。
俺がお嬢と会ったのは7歳の時。小国だった俺の国は海があって活気があった国だった。帝国は海を欲し、周りの小国は帝国に属していったが、俺の国は帝国に属するつもりはないと結果、戦をする事になった。男は戦に行き、女は怪我で運ばれてきた人達の世話をする。俺の父さんと母さんも『王が決めた事なら俺達は信じて付いていくだけだ』と言って剣を持った事もないのに戦に行った。
負けが決まっている戦に何の意味があるのか
当時3歳の俺にはどうして父さんと母さんが出て行ったのか分からなかった。俺は捨てられた、そう思っていた。3歳年上の兄ちゃんと子供だけ集められた所で暮らした。
あっという間に戦は負け父さんは帰らぬ人になり、母さんは毎日運ばれてくる怪我人のあまりの酷さに心が病んだ。自分が世話をした人が次から次へと亡くなる。母さんが悪い訳じゃない。それでも母さんは自分を責めた。もっと寝ずに看病すれば一人でも助けられたのではないか、あの時、あの時、と母さんはいつもぶつぶつ言っていた。心が病み体を壊し5歳の時母さんは死んだ。
それから兄ちゃんと二人で路上で暮らした。兄ちゃんが顔を腫らし持って帰ってきたパンを食べた。あの日、兄ちゃんは体中殴られフラフラになりながら戻ってきた。何も食べたくないと言った兄ちゃんが朝死んでいた。
俺は6歳から一人で路上生活をする。誰かが食べ残した物を拾い、俺より幼い子が食べている物を奪った。
俺も家族の元へ、何度思ったことか。それでも腹が減れば自然と物を食べた。
生きたくなくても生きている
朝目が覚めるといつも今日も死ねなかったと絶望する。その絶望を腹が鳴り掻き消した。
そんな頃にお嬢と会った。
お嬢は汚れた俺の手を躊躇いなく繋いだ。
街の中でも俺を見下し、ゴミのような目で見る者しかいなかった。目を合わせる事もなければ助けてくれる人もいなかった。
俺はおっさんに風呂でゴシゴシと何度も洗われた。
『おっさんたちはあいつのじゅうしゃか?』
『俺達は従者ではなく騎士だ』
『じゅうしゃときしとではなにがちがうんだ?』
『騎士はこの人と決めた人の為に己の命を掛けて護り戦う。主の為にこの身を捧げ剣にも盾にもなる。主が戦うなら共に戦い主に勝利を、主が死ぬなら共に死に共に地獄へ落ちる』
『どうしてじごくなんだ?』
『戦いには生と死しかない。それが赤子だろうと女だろうと主にとって邪魔な者なら俺達は躊躇いなく殺す。戦う術のない者だろうと主が殺せと言えば俺はお前も殺す』
『きしか…。おれもなれるか?』
『なりたいのか?』
『きしになったらあのこのそばにずっといれるよな?』
『リリーアンヌ嬢は公爵令嬢だから護衛騎士は付けるだろうな』
『おれ、あのこをまもりたい』
『そうか、お前は命をリリーアンヌ嬢に渡すんだな?』
『ああ、おれのいのちをわたすならあのこがいい』
『よし、なら俺が鍛えてやる』
『ほんとうか?』
『俺は厳しいぞ?音を上げるなよ?』
『おれはつよくなりたい。つよくなれるならなんでもたえる』
『ならまずは小綺麗にしないとな。お前汚すぎるぞ』
トネードのおっさんはそれから容赦なく俺を鍛えてくれた。泣き言なんて許されなかった。お嬢に手を抜いた時は張り倒された。
『その情けは騎士に必要ないものだ!稽古で手を抜く奴はいざという時も手を抜く。それにな、主の命令は絶対だが主の命を護る為なら命令を背く、それも騎士には必要だ。主が生きてこそ、俺達にとって大事なのは主の命だ。
それにリリーアンヌは自分に手を抜く奴を側には置かないぞ』
俺はリリーアンヌの一番の理解者になれるようにいつも側にいて表情一つ、動作一つ見逃さなかった。
リリーアンヌは嘘をつく時、ほんの少し声が高くなる。誰も気づかない程の些細な違い。本人も気づいていないと思う。俺しかその違いは分からない。
俺はソファーに寝転がり天井を見つめる。
『俺の代わりにあのくそ餓鬼を見張れ。くそ餓鬼がもしリリーアンヌを傷つけた時は殺せ。良いな、絶対だぞ。絶対に殺せ』
あいつが帝国へ帰る前に託された。
あいつも俺もお嬢に助けられた。俺達の主はお嬢だ。あいつはお嬢を傷つける奴は誰一人許さない。お嬢が望まなくてもあいつは全員殺すだろう。
でも俺はお嬢が悲しむ事はしたくない。例えアルバートを殺したくても。お嬢の望まない事なら俺はしない。
俺に生きる希望をくれた人
この人の為に生きたい
お嬢との出会いは俺の人生を変えた。
一人だった俺に家族と仲間をくれた。旦那や奥様は本当の両親だと思えと俺にもお嬢と同じように家庭教師を付けてくれた。部屋だって俺だけの部屋だった。流石に今は騎士の宿舎に移ったけど。騎士になりたいと言えば剣を買ってくれた。おっさんの指導で何本駄目にしたか分からない。それでも次の日には新しい剣が部屋に置いてあった。
お嬢やライアンと同じように接してくれる。あいつも俺も本当の親の愛情は覚えていない。だからこそ旦那や奥様を本当の両親だと思うようになった。
厳しく優しい
旦那はよく俺の頭を撫でる。奥様は俺を褒めて抱きしめてくれた。怒られる時もあったけど愛情もその分注いでくれた。
旦那と奥様に救われたんだ、あいつも俺も。
だから絆を大切に大事にする。本当の親には恵まれなかったけど両親には恵まれた。お嬢とライアン、妹と弟にも恵まれた。それにあいつ、友にも恵まれた。
タイラーやおじさんおばさん、カーター、旦那と奥様と同じようにあいつと俺を身内として接してくれた。
その優しさに俺はいつか返したい。
この身をかけて…
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