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54 ローレン隊長宅
しおりを挟む私はコナーからローレン隊長に向き直した。
「ごめんなさい、話を戻すわね。お兄様がまだこの国で暮らしていた時にアルバートと約束を誓ったの。次期王二人が王として誓った約束。
私以外の女性に心変わりをしない事、どんな理由でも第二夫人や側室、妾を持たない事、私だけを生涯の妻とし愛す事。
約束を違えた時、宣戦布告と受け取りこの国を滅ぼす。そしてお兄様自らアルバートの息の根を止める。
たかが約束されど約束なの。お兄様は必ずこの国を滅ぼす」
「妃殿下、だから離縁ですか」
「ええ、その方法が一番被害が少なかったの。でももう手遅れよ」
私は姿勢を正しローレン隊長を真っ直ぐ見つめた。
「私はもう全ての人を助けたいとは思わない。それでも助かってほしい人は助けたい。お兄様は平民には手は出さない、護るべき民だから。でも貴族は違う。女性だから子供だからと助ける人ではないの。女性を助ければ慰め者にされる。子供を助ければ己に牙を剥く存在になる。
お兄様が皇帝になり小国を滅ぼした時残ったのは平民だけになったの。帝国の一部になった元小国の平民達はお兄様が信頼する者の領民になったわ。その一つが伯爵領。皇帝の父に叙爵された爵位と領地。
そしてここからが本題よ」
私はローレン隊長の奥様に目を向け、ローレン隊長を見た。
「ローレン隊長、貴方が大切だと大事だと思う者、助かってほしい助けたいと思う者、そして絶対に裏切らない者。その人達に助かり方を教えるわ。
それからこのことは貴方の隊全員に確認して伝えてほしいの」
「分かりました」
「そこには賛成派だったご両親も入ってるのよ」
「いえ、第二夫人を賛成した以上、陛下と共に罰を受けるべきです。それに助かり方を教え父上が裏切らないとは言えません。
私は妻と子供達だけ生き残ってほしい」
「奥様ともきちんと話し合って」
「妃殿下、私も旦那様と同じ意見です。両親は大切です。ですが私は第二夫人を賛成出来ません。私も妻です。もし旦那様に愛人がいるのなら私と離縁しその愛人を愛せばいい。二人の女性を同じように愛せるとは思いません。
他国では法で定められている国もあります。ですがこの国の法では定められていません。貴族が法を破っては示しがつきません。それに、第二夫人を賛成した両親を私は信用出来ません。
妃殿下、貴女が今まで救ってきた人達がどれだけこの国にいるとお思いですか。孤児院の子供達もそうです。領民もそうです。そして今も私達を救おうとしています。
陛下が何をしましたか?
妃殿下の功績の上で成り立っている立場という事を陛下は知るべきです。妃殿下を無下に扱いすぎです。
妃殿下、今日私も同席してほしいと言うのには何か私にしてほしい事があるからですね」
「ええ、ローレン隊長が騎士達に確認した後で騎士達の奥様や子供達を連れて隣国へ避難してほしいの。隣国との辺境でもいいわ」
「避難ですか?」
「正確にはジェイデン王子に助けを求めに行く、かしら。旦那様達が私と愛人の関係にあり助けてほしいと」
「その理由をお伺いしてもよろしいですか」
「一つ、ローレン隊長はじめ騎士達を王宮から帰せないから。私の代わりに動いてほしいの。
一つ、貴女達を迎えに行く体で別任務を頼みたいから。
一つ、ジェイデンにグレイソンを隣国へ連れて行ってもらいたいから。グレイソンを無理矢理連れて行けるのはジェイデンだけなの。辺境伯に言えばジェイデンに伝わるわ。だから辺境でも良いの」
「ですがジェイデン殿下なら手紙でも伝えられると思いますが」
「確実に伝えたいの。手紙だと奪われたら終わりだわ。でも貴女達を襲う事は出来ない」
「ですが女性や子供だけでは賊やその類いの者に狙われやすいと思います」
「きちんと護衛は付けるわ。それに貴女達は貴族夫人。どういう理由で隣国へ向かおうともあの狸は手を出さない」
「分かりました。私達は離縁もあり得ると怒って出て行きます。狸をも化かす狐になりますね」
「ふふっ、ありがとう」
「メイドは連れて行っても良いでしょうか」
「ええ、問題はないわ。ただメイドにも理由は隠してほしいの」
「それは勿論です」
「貴女には奥様達の先頭になってもらいたいんだけどお願いできるかしら」
「分かりました。私も彼女達に口添えをします。ですが妃殿下の悪名が増えてしまいます」
「ふふっ、一つ二つ増えた所で一緒よ。ローレン隊長が騎士達に確認し準備ができ次第出発してもらえる?貴女達を護衛する騎士達もそれまでに揃えておくわ」
「妃殿下、無理だけはしないで下さい。旦那様はじめ騎士達を手足のように使えば良いんです。だから無理だけは絶対にしないで下さい」
「ええ、ありがとう」
「妃殿下はもう一人の身体ではありませんから」
「どういう意味?」
「妃殿下の為に命をかける者がいます。妃殿下を助ける為に動く者がいます。妃殿下を失えば悲しむ者が大勢います。
御身体を大切になさって下さい」
「そうね、自分自身でいたわらないとね」
「はい」
ローレン隊長の奥様はとても優しい顔を私に向けた。
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