63 / 107
55 女の勘
しおりを挟むローレン隊長の邸から塔へ抜ける通路の前。
「お嬢、俺は旦那の所に行くけど大丈夫か?」
「大丈夫よ」
コナーは私を抱き寄せた。
「アルバートの事は諦めろ。お嬢が護る価値もない男に成り下がった」
「うん、分かってる」
コナーに見送られ私とテオは塔に向かった。
裏口から中に入りミレの待つ小部屋に入りミレと女性を騎士に送らせ私は塔を出た。
「ルーク大丈夫だった?」
「はい。行為が始まったら帰って行きました」
「そう」
私室の前にイーサンがいた。
「妃殿下、先程までお楽しみだったようで」
「ええそうね、楽しませてもらったわ。もしかしてそれだけを言うために、わざわざ、待っていたの?イーサンも暇なのね」
「ええ、夜の警備と言っても妃殿下以外は部屋から出ませんから。警備をしている以上妃殿下が部屋に戻るまではこちらも警戒しないといけません」
「あら仕事熱心なのね。でももう良いわ。貴方が私室の前にいると私は部屋に入る事が出来ないわ。お疲れ様」
テオが私室の扉を開け中に入ろうとした時、イーサンが声をかけてきた。
「妃殿下、いつかご自分でご自分の身を滅ぼしますよ」
「あら警告?それとも助言?どちらかしら」
「さあ、どちらでしょうか」
「ふふっ、有り難く受け取っておくわ」
私は顔だけイーサンに向け真っ直ぐ見つめた。
「あっ、そうそう、もうそろそろ産まれるかしら。男児か女児か、無事に産まれたら私にも抱かせてもらいたいわ。
ねぇ、イーサン、貴方からもナーシャ様に頼んでもらえる?
楽しみだわ、待ちに待った子の誕生だもの、ねぇ?」
「……余裕でいられるのは今だけですよ。いずれ、近い未来立場が逆転します。その時妃殿下はどうするんですかね」
「そうね、その時は離宮にでも行こうかしら。御役御免になった元王妃には離宮がお似合いでしょ?」
離宮、王族が離宮へ移る事は幽閉されるのと同じ。完全に俗世と遮断され死ぬまで離宮の中だけで過ごす。離宮には騎士達が配備され監視される。抜け出す事も出来なければ誰かを招く事も出来ない。
「話はそれだけ?ならもう私は部屋に入るわ。疲れたの」
イーサンはまだ何か言いたそうだったけど私は部屋に入った。
イーサン、貴方はまだまだね。言葉につまるようでは私には勝てないわ。
それにナーシャ様は妊娠していない。それを貴方は私に教えたのよ?もし本当に子が出来ていたならアルバートの第一子が産まれるのを心待ちにするはずだもの。
貴方は子の事は何も触れなかった。それが答え。
マイラが言っていた事は本当だったのね。
『王妃様、先程ナーシャ様を見かけたんですが、ナーシャ様は本当に妊娠しているのでしょうか』
『本当の所は私も分からないの。でも妊娠したから第二夫人になったのは確かよ。アルバートの好意は別としてね』
『妊娠したら女性は体つきが変わります。ドレスだと分かりにくいので確かな事ではありませんが、ナーシャ様は妊娠していないと思いました』
『そうなの?』
『女の勘ですが、私も妊娠し出産したので妊婦はなんとなく分かるんです』
『でも私が見かけた時はお腹が大きかったわよ』
『そんなのは何とでも出来ます』
マイラは手に持っていたシーツを丸めてメイド服の中に入れた。
『こうすれば良いだけです』
『確かにお腹が大きくなるわね』
『平民が着る服なら不自然に思えますがドレスはある意味それを隠せます』
『そうね、ドレスは装飾で何とでも出来るものね。レースでお腹を隠す夫人もいるもの』
『はい、布がしっかりしているドレスなら簡単です』
マイラが言っていた事は本当だったみたいね。
イーサン、貴方は悟られてはいけない人に悟らせた。
私には悟らせてはいけなかったのよ?
マイラの話、イーサンの態度、それが意味する事、
ナーシャ様は妊娠していない
第二夫人を賛成した貴族達は子の誕生を楽しみにしている。その子が産まれないと分かったら賛成した貴族達はどうするのかしら。
「王妃様、考え事ですか?」
「少しね」
部屋の中にいたマイラが話しかけてきた。
「お疲れのようなので軽く湯浴みをしてお眠り下さい」
「ありがとう」
「最近お疲れも取れないようですし一度医師に見て頂きませんか?」
「寝れば大丈夫よ。マイラは心配性ね」
「ですが」
「今日は疲れたから早く寝ましょ」
マイラは心配そうな顔をしながら湯浴みの準備に向かった。
6
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる