悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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56 裏切り者?

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「お嬢、旦那が連れて行かれた!」


血相を変えてコナーが窓から入ってきた。


1ヶ月前ローレン隊長の奥様が他の騎士達の奥様達を説得してくれ、奥様達は隣国へ向かった。


『妃殿下付きの近衛の奥方達全員で、それはもの凄い怒りようで隣国のジェイデン殿下に助けを求めに行ったらしいぞ』

『そりゃそうだろ、毎日騎士達を部屋に連れ込んで家に帰さなかったらしいしな。俺の奥さんも怒ってたくらいだ。あんまりだとな』

『子供まで連れて行ったらしいからこれは全員離縁だな』

『それも仕方がないさ。奥方よりも妃殿下の方が良いんだろ。そんなに妃殿下は良いもんなんだろうか、一度俺も相手してもらいたいよ』

『ハハッ、やめとけやめとけ、被害者が増えるだけだ。それに隊長も騎士達も妃殿下が王妃でなくなったらどうなるか分からないぞ。落ちぶれるのが目に見える』


廊下を通る騎士達の声。

上手く周りを騙せたみたい。私の悪名も王宮の中で広まっている。後は私がアルバートに離縁されて離宮へ送られるだけ。

そうすればお兄様は離宮へ来る。お父様と伯父様、伯母様を連れて帝国へ。ローレン隊の騎士達の待遇が悪くなるようなら騎士達もその家族も一緒に帝国へ移り住めば良い。

お兄様は受け入れてくれる。

伯爵のお父様の護衛騎士としての道もある。兄様達の部下になる道もある。兄様達は生まれた国ではなく腕で人を選ぶから。


そう思いながら1ヶ月過ごした。

なのに!


「どういう事!」

「謀反がどうとか」

「謀反?お父様が?そんなのあり得ないわ」

「当たり前だろ。旦那は謀反なんかしない。あのクソがクソでもな。あのクソを見限っていても愛国心は強い」

「そうよ、だからお兄様が何度も帝国へと誘ってもこの国から離れる事はしなかったわ。今だってこの国を守る為に、

もしかして…、それが徒となったの?」

「多分な」

「そんな……」

「だからあいつはクソなんだ!何も分かっちゃいない!お嬢の気持ちも旦那の気持ちも何一つ分かっちゃいない。自分の気持ちには理解してほしい寄り添ってもらえると思っていても相手を理解する事も寄り添う事もしない。だからクソなんだ!」


コンコン

「妃殿下、タイラー殿がお見えです」

「入って」


タイラーが部屋に入ってきた。


「コナーもここに居たんだね。ならもう話は伝わっているか」

「タイラーどういう事なの」

「父上も連れて行かれた」

「伯父様も?どうして…」

「父上も謀反に加担したと言われたよ。僕にも見張りが付いてる」

「どうしてタイラーに見張りが付いてるのよ」

「僕も謀反の計画を知る一人だからじゃない?」

「計画も何も、」


誰か裏切り者がいる、って事?公爵家の使用人には考えにくい。お父様を心から崇拝している。そのお父様を裏切る訳がない。

なら?

ローレン隊?

それも考えにくい。例え私を裏切ったとしてもお兄様がこの国に攻めてきたら終わり。そして攻めてくるのは時間の問題だと分かっているはず。その為に今騎士達には動いてもらっているんだから。

私が助かってほしい者達への連絡役として。

騎士達の奥様達や子供達が安全に隣国へ行く為にウイング侯爵とウエスター男爵に協力を頼んだ。同じ時期に領地へ行ってほしいと。その時奥様達や子供達が乗る馬車も一緒に向かってもらった。

公爵家の騎士達は半分になった。公爵家の護りは今手薄。公爵家の騎士達に奥様達の護衛をお願い出来ない。

当主が領地へ行くのなら護衛は数人付いていく。奥様達の馬車も後ろを付いて行った。騎士達がいる馬車を襲う馬鹿はいない。

細かな連絡のやり取りはローレン隊の騎士達がしていた。

ローレン隊の騎士の誰かがもし裏切ったとして奥様や子供達が人質としてこちらにはいる。

それなのに裏切る?

なら…誰?


「コナー」


私は目配せした。

コナーは天井にいる影を下から引っ張った。コナーが羽交い締めにし私の目の前に連れて来た。


「どういう事かしら?」

「俺は何も知らない」

「そんな訳がないでしょ。貴方の奥さんと子供には常に見張りを付けてる。私の監視下にあるのよ?私が命令すれば直ぐに殺せるわ。

貴方の知ってる事を話して」

「……公爵は帝国を抱き込みたかった。自分が動かせる駒の一つにしたかったんだ。だけど帝国にはルヴェンド公爵を変えるつもりはないと言われたらしい。

公爵はルヴェンド公爵を罠にはめたいと言っていた」

「それが謀反という訳なの?」

「ルヴェンド公爵が地位を失えば自分が帝国との取り次ぎ役になれると思っている」

「なら罠にはめるつもりだけで謀反と言って捕らえたの?」

「公爵は目の上のたんこぶのルヴェンド公爵を処分したい。ルヴェンド公爵がいるから自分が日の目を見ないといつも言っていた」

「それでも謀反の事実がないのにどうするつもりなの?」

「こう言ってはあれだが、陛下は公爵の言う事を全て信じている。公爵は陛下の事を扱いやすい駒だと言っていた。馬鹿は馬鹿なりに使えると」

「そう」


処分を下すのはアルバート。そのアルバートが公爵の手のひらで転がされている。


「お父様は今どこに居るの?」

「……地下の牢屋だ」

「地下の、牢屋……?」

「ああ」


私は膝から崩れ落ちた……



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