悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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61 夜の地下牢

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夜になりローレン隊長が迎えに来た。


「妃殿下、行きましょう」

「ええ」


目立たない色のワンピースを着ているとはいえ、誰かに会っても面倒。


「牢屋までの経路は?それに最近イーサンが私の部屋の前をウロウロしているの」

「そう思い友人に夜の警備をイーサンと変わってもらいました。牢屋までの経路を伝えこの時間は騎士に会わないように頼んであります」

「信用できるの?」

「幼馴染みで信用できます。もし裏切ったのなら迷わず始末します」

「私はローレン隊長を信用しているから大丈夫ね」

「行きましょう」


若い騎士を二人私室の前に残しローレン隊長の後を付いて行く。

地下の牢屋までの道のりで騎士に会う事はなく無事地下の牢屋に着いた。

牢屋の前ではテオやルーク達が待っていた。


「全員眠らせておきました」

「ありがとう。テオ達は入口をお願い。誰も通さないで」

「分かりました」


ローレン隊長の後を付いて地下の牢屋に入って行く。階段を降りた先。


「お父様…」


私は速歩きで近寄った。


「リリーアンヌ」

「お父様お怪我は?」

「大丈夫だ」


見た目だけ見ても大丈夫そう。


「伯父様は?」

「あっちだ」


お父様の視線の先、奥の牢屋に伯父様がいた。私は伯父様の元に行った。


「伯父様お怪我はありませんか?」

「リリーアンヌか、私は大丈夫だ。私よりもライオネスの方が酷い」

「え?」


ローレン隊長が私の横に立ち私の耳元で話した。


「妃殿下、拷問をする際服で隠れる所にします」

「そう…」


お父様は平気な顔をしていたけど服の下は酷い拷問の後が残っているのね。酷い怪我でもそれを顔に出さず私に心配をかけないようにしている。


「伯父様必ず助け出しますから、それまで辛抱して下さい」

「ああ」


伯父様の優しい顔。伯父様も服の下は酷い拷問の後が残っているはず。それでも私に向ける顔は優しい顔…。


フォスター公爵はなんて事をするの!謀反の証拠もないのに。それにアルバートは書簡の事で相談したいだけだったのに。


私はお父様の牢屋の前に行った。


「お父様、どうして謀反をしていないと訴えないのです」

「なぁリリーアンヌ、人の心は誰にも縛る事は出来ない。

俺を担ごうとする者の心もな」


タワーム公爵が言っていたお父様を王に


「ですが謀反はやめさせました」

「今やめさせてもまた必ず謀反を起こす。今度は違う者を祭り上げてな。

王の采配に異を唱える者がいなくならない限りそれは続く」

「ですがお父様が犠牲になる必要はありません」

「人は王に結果を求める。だがな、王も人だ。結果が思わぬようにいかない時もある。

父上もそうだった。己を祭り上げる者達を守る為に己の命をかけた。

俺も己を祭り上げる者達を守る為に己の命をかける。

これは血なのかもな。

リリーアンヌ、お前とライアンだけは俺が守る。お前やライアンが祭り上げられないように、謀反を起こしても意味がないと、己の命で分からせる」


お父様の強い意志を瞳から感じる。


「なぁリリーアンヌ、完璧な人間なんていない。王とて人だ、完璧な人ではない。それでも人は王に完璧を求める。自分達を導く人なら完璧だと、間違いを起こす訳がないと、そう思う。

王には完璧を求めたいんだ」

「それは分かりますが」

「王が間違いを起こした時、本来なら間違いを正し、これからの王の行末を見守ろうとする。それが忠誠だ。

だがな、完璧を求める人にとって一つの間違いは王としての素質無し、それに繋がる。忠誠心が強い分落胆も大きい。

落胆した心は新たな王を求める。新たな王なら完璧だとな。

だがな、王の成長を見守るのも臣下の努めなんだ」

「はい」

「実際父上を祭り上げる者は多かった。伯父上は兄弟で争いはしたくないと子は一人しかもうけなかった。

相談役として俺がいてもあいつは一人で背負うには負担が大きいと子には兄弟をもうけた。

伯父上もあいつも苦しんだんだ。

リリーアンヌ、お前は父上の孫で俺の娘だ」

「はい」

「お前が誰を心で思おうとお前は王の妻になる定めだった。王になるのがアルバートだろうがジェイデンだろうが定めの中でお前の心は関係ない。

リリーアンヌを王の妻に、それが一番都合が良かった。それは分かるな?」

「……はい」

「だがお前はアルバートを好きになり王にした。王の器としたらジェイデンだったが、お前はジェイデンを排除した。アルバートにとってジェイデンは脅威だ。アルバートが王になった時、ジェイデンを王にと祭り上げる者が必ず出た。

お前はそれらを先に排除したんだ。

だがジェイデンは王配として隣国へ行った。次に白羽の矢が立ったのは俺だが、父上も俺も王座に何の興味もない。

なぁリリーアンヌ、人の心は縛れない。お前の心が縛れないように謀反を起こす者の心も縛る事は出来ない。

人の心はその人のものだ。

アダムの心もアダムのものだ。お前が何をしようともな。

正解も不正解も人それぞれ違う。アダムの正解はリリーアンヌには不正解だろう。

だがそれも定め、神が導く定めなんだ。父上の死も、俺の死も…。

そしてアルバートの死も、な」



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