70 / 107
61 夜の地下牢
しおりを挟む夜になりローレン隊長が迎えに来た。
「妃殿下、行きましょう」
「ええ」
目立たない色のワンピースを着ているとはいえ、誰かに会っても面倒。
「牢屋までの経路は?それに最近イーサンが私の部屋の前をウロウロしているの」
「そう思い友人に夜の警備をイーサンと変わってもらいました。牢屋までの経路を伝えこの時間は騎士に会わないように頼んであります」
「信用できるの?」
「幼馴染みで信用できます。もし裏切ったのなら迷わず始末します」
「私はローレン隊長を信用しているから大丈夫ね」
「行きましょう」
若い騎士を二人私室の前に残しローレン隊長の後を付いて行く。
地下の牢屋までの道のりで騎士に会う事はなく無事地下の牢屋に着いた。
牢屋の前ではテオやルーク達が待っていた。
「全員眠らせておきました」
「ありがとう。テオ達は入口をお願い。誰も通さないで」
「分かりました」
ローレン隊長の後を付いて地下の牢屋に入って行く。階段を降りた先。
「お父様…」
私は速歩きで近寄った。
「リリーアンヌ」
「お父様お怪我は?」
「大丈夫だ」
見た目だけ見ても大丈夫そう。
「伯父様は?」
「あっちだ」
お父様の視線の先、奥の牢屋に伯父様がいた。私は伯父様の元に行った。
「伯父様お怪我はありませんか?」
「リリーアンヌか、私は大丈夫だ。私よりもライオネスの方が酷い」
「え?」
ローレン隊長が私の横に立ち私の耳元で話した。
「妃殿下、拷問をする際服で隠れる所にします」
「そう…」
お父様は平気な顔をしていたけど服の下は酷い拷問の後が残っているのね。酷い怪我でもそれを顔に出さず私に心配をかけないようにしている。
「伯父様必ず助け出しますから、それまで辛抱して下さい」
「ああ」
伯父様の優しい顔。伯父様も服の下は酷い拷問の後が残っているはず。それでも私に向ける顔は優しい顔…。
フォスター公爵はなんて事をするの!謀反の証拠もないのに。それにアルバートは書簡の事で相談したいだけだったのに。
私はお父様の牢屋の前に行った。
「お父様、どうして謀反をしていないと訴えないのです」
「なぁリリーアンヌ、人の心は誰にも縛る事は出来ない。
俺を担ごうとする者の心もな」
タワーム公爵が言っていたお父様を王に
「ですが謀反はやめさせました」
「今やめさせてもまた必ず謀反を起こす。今度は違う者を祭り上げてな。
王の采配に異を唱える者がいなくならない限りそれは続く」
「ですがお父様が犠牲になる必要はありません」
「人は王に結果を求める。だがな、王も人だ。結果が思わぬようにいかない時もある。
父上もそうだった。己を祭り上げる者達を守る為に己の命をかけた。
俺も己を祭り上げる者達を守る為に己の命をかける。
これは血なのかもな。
リリーアンヌ、お前とライアンだけは俺が守る。お前やライアンが祭り上げられないように、謀反を起こしても意味がないと、己の命で分からせる」
お父様の強い意志を瞳から感じる。
「なぁリリーアンヌ、完璧な人間なんていない。王とて人だ、完璧な人ではない。それでも人は王に完璧を求める。自分達を導く人なら完璧だと、間違いを起こす訳がないと、そう思う。
王には完璧を求めたいんだ」
「それは分かりますが」
「王が間違いを起こした時、本来なら間違いを正し、これからの王の行末を見守ろうとする。それが忠誠だ。
だがな、完璧を求める人にとって一つの間違いは王としての素質無し、それに繋がる。忠誠心が強い分落胆も大きい。
落胆した心は新たな王を求める。新たな王なら完璧だとな。
だがな、王の成長を見守るのも臣下の努めなんだ」
「はい」
「実際父上を祭り上げる者は多かった。伯父上は兄弟で争いはしたくないと子は一人しかもうけなかった。
相談役として俺がいてもあいつは一人で背負うには負担が大きいと子には兄弟をもうけた。
伯父上もあいつも苦しんだんだ。
リリーアンヌ、お前は父上の孫で俺の娘だ」
「はい」
「お前が誰を心で思おうとお前は王の妻になる定めだった。王になるのがアルバートだろうがジェイデンだろうが定めの中でお前の心は関係ない。
リリーアンヌを王の妻に、それが一番都合が良かった。それは分かるな?」
「……はい」
「だがお前はアルバートを好きになり王にした。王の器としたらジェイデンだったが、お前はジェイデンを排除した。アルバートにとってジェイデンは脅威だ。アルバートが王になった時、ジェイデンを王にと祭り上げる者が必ず出た。
お前はそれらを先に排除したんだ。
だがジェイデンは王配として隣国へ行った。次に白羽の矢が立ったのは俺だが、父上も俺も王座に何の興味もない。
なぁリリーアンヌ、人の心は縛れない。お前の心が縛れないように謀反を起こす者の心も縛る事は出来ない。
人の心はその人のものだ。
アダムの心もアダムのものだ。お前が何をしようともな。
正解も不正解も人それぞれ違う。アダムの正解はリリーアンヌには不正解だろう。
だがそれも定め、神が導く定めなんだ。父上の死も、俺の死も…。
そしてアルバートの死も、な」
17
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる