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62 出ていく準備
しおりを挟む地下の牢屋でお父様に会ってから一週間後、非公開処刑が行われた。
お父様と伯父様は謀反を企てた発起人として毒杯を飲んだ。
ルヴェンド公爵家とシャドネー公爵家の使用人達はお父様や伯父様と同刻、毒を飲んでこの世を旅立った…。
シャドネー公爵家には伯父様と離縁した伯母様も毒を飲んで使用人達と一緒にこの世を旅立った…。
伯父様と過ごした夫婦の寝室で伯母様の亡骸は発見された。
伯母様に頼まれたコナーはタイラーを力づくでシャドネー公爵家から連れ出した。
今は身を隠す為にミレの娼館にいる。
私の私室に訪ねて来たのはタワーム公爵。
「申し訳ありません」
タワーム公爵は私に会うなり両膝を床に付け額も床に付けている。
「公爵、これで分かりましたね。謀反を起こそうとすれば誰かが犠牲にならないといけません。犠牲には死が付きものです。
公爵にとってアルバート王は頼りないと思うでしょう。ですが臣下として見守る心を、成長を見届ける心を、貴方の広い心でアルバート王の行末を見守って下さい。
お父様と伯父様の死を無駄にしない為にも、アルバート王を支える臣下としてこれからは生きて下さい」
「分かりました。妃殿下はこれからどうするおつもりですか」
「身内が処刑されたのに王妃ではいられないわ。私は北の離宮へ行くつもり」
「どうして…」
「公爵、これで良いの、これで良いのよ。約束は覚えている?」
「はい」
「一応備えだけはしておいて。そして皆を守って」
「分かりました」
タワーム公爵が出て行き私はローレン隊長を呼んだ。
「ローレン、貴方の隊に王妃として最後の命令をします。
この手紙をある人へ届けてほしいの」
私は二通の手紙を渡した。
「人から目立たない道を選んで辺境まで向かって。きっと途中である部隊とぶつかるわ。そしたら戦う意志はないと降参して。そしてレガンス隊長とお目通り願いたいとまずこっちを渡して。そしてレガンスに会ったらこっちを渡してほしいの」
「分かりましたがレガンス本人とどう確認すれば良いんですか?」
「レガンス兄様は白の鬼神、そのままよ。兄様は白い髪なの。あと、そうね、『居眠りして木から落ちる』そう伝えて。兄様なら絶対に笑うわ。
ふふっ、兄様とのかくれんぼで私は居眠りして木から落ちたの。その時兄様に笑われたわ。隠密の才能はないなって。
『例え木の上で寝ていても落ちる馬鹿はいない。そんな馬鹿はお前くらいだ。お前には影の才能はないな』
って呆れられたわ。それから私は落ちて痛がってるのに大爆笑よ?
それからも思い出しては笑っていたの」
「分かりました」
「貴方達は奥様と子供達を迎えに行かせたと私は伝えるわ」
「その間の護衛はどうしますか?」
「王妃でもなくなる私に護衛は必要ないわ。それに護衛はコナーがいるから大丈夫」
「分かりました」
ローレン隊が王宮を出たら私は北の離宮へ向かうつもり。ローレン隊長に言えば送り届けると必ず言うから。
私との接点を切る為にも奥様と子供達を迎えに行った、その方がこの先も近衛隊として王宮勤めが出来る。
「帝国がどう出るか分からないけど落ち着くまでは奥様も子供達も辺境にいた方が良いと思うの。
それからレガンス兄様に手紙を渡したら必ず迎えに行ってね?王宮にはその後で帰ってくれば良いから」
「分かりました」
ローレン隊長は私が北の離宮へ行くとは知らない。教えるつもりもない。
それからレガンス兄様に渡す手紙、その内容はお父様の事。お父様は自らの意志で命をかけた。アルバートに殺されたのではなくお父様の意志。それをアダムお兄様に伝えてほしいと。それから私は北の離宮へ行くと書き記した。
お兄様は王宮ではなく北の離宮へ必ず来る。
お父様の死を知った時、お兄様は手の付けられない悪魔になる。アルバートを許さないとアルバートの首を奪いに来る。
だから私は
『お兄様が直ぐに迎えに来ないなら私もこの世を旅立つわ』
こう記した。
アルバートの首か私の命か、天秤にかけた時、お兄様なら迷わず私の命を取る。
私は最後までアルバートに生きてほしいと願った。
「ミーナ、貴女は私が信用している人に預けるわ。そこでメイドとして働けるように頼むわね。
マイラ、貴女はマークの所に行きなさい。帝国でお母様のメイドとして働いて」
「私は嫌です!私はリリーアンヌ様と共にと約束しました。今更私を捨てるのですか」
「マイラ、北の離宮はとても危険なの。噂では賊の住処になってると聞くわ。それに閉鎖された離宮ではマークと連絡を取り合う事も出来ないの」
「私もマークも心からお慕いする主の為に尽くす。私は私の主の為に、マークはマークの主の為に、そうお互い心に誓いました。私は最期までリリーアンヌ様と共に、そこは譲れません」
「分かったわ」
「私もです」
「ミーナ、貴女まで?」
「私もお嬢様に救われてからお嬢様の為に尽くそうと思ってきました。お嬢様が王宮へ嫁ぐ時も側から離れないとあれだけ言ったではありませんか」
「王宮と離宮とでは違うの」
「王宮も離宮も私には一緒です。お嬢様が居る場所が私の場所です」
「二人共…。分かったわ、一緒に行けるようにアルバートに頼んでみるわ」
「「ありがとうございます」」
「ミーナ、マイラ、ありがとう…」
二人が一緒なら心強い。私も本当は一人で不安だったの…。
本当にありがとう……
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