悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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66 夜更けの訪問者

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夜が更け私は動きやすい格好に着替えた。


「コナーお待たせ」


玄関で待つコナーの姿。


「タイラーは?」

「伯母様と一緒にいるわ。マイラにタイラーの側にいてもらうように頼んできたわ」


伯母様は客間のベッドに移した。タイラーは伯母様が眠るベッドから離れない。


邸を出ようとした時。


「お嬢、誰か来た」


コナーは剣を鞘から抜いた。私も腰に下げている剣を鞘から抜いた。

暫くして馬車が止まる音が聞こえた。

邸の中には緊張感が漂う。


「ミーナ、私の後ろに隠れて」


私はミーナを庇うように剣を玄関に向ける。


コンコン コンコン


「誰だ」


コナーの低い声。


「俺だ、ジルだ、開けてくれ」

「こんな夜更けに何の用だ」

「王妃に届けものを持ってきた」

「何をだ」

「王妃の父親の亡骸だ」


その声にコナーと私は目を合わす。私は頷きコナーは剣を構えながら玄関を開ける。

コナーは一人で外に出ていった。


閉められた玄関の扉が開き、コナーと一緒に入って来たのは私を監視していた影だった。


「貴方」

「あんたの父親の亡骸を持ってきた」


私はコナーに視線を移した。頷くコナー。


「どうして貴方がそんな事をするの?」

「気まぐれだ」

「そう、でもとてもありがたいわ。ありがとう。でもこんな事をして知られたらどうするの?」

「変わりの遺体を置いてきた。それにどうせ捨て置かれていただけだ。捨てたものを拾った、ただそれだけだ。

あの男は遺体には興味もない。だから知られる事はない。

それにあんたは俺の妻と息子を助けてくれた。俺の家族を助けてくれた代わりに俺があんたの家族を助けた。それだけだ。これで貸し借りは無しだ」

「ええ、そうね」


コナーは剣を鞘にしまい外に出て行った。

布に包まれた亡骸を抱きかかえ戻ってきた。


「寝室へ寝かせて」


コナーは階段を上っていった。


「本当にありがとう。今から行こうと思っていたの。でも私がここにいるってよく分かったわね」

「王宮から後をつけていた」

「そう」

「俺はあんたが王都を出るまでの監視を頼まれた。あの男には王都を出て行ったと伝える。できるだけ早く出て行ってくれ」

「ええ、明日皆を埋葬したら王都を出て行くわ。私の手で皆を送り出したいの」

「分かった」


コナーはまた外に行き布に包まれた亡骸を抱きかかえ戻ってきた。


「シャドネー公爵だ」


コナーは私が聞く前に答えた。

私は影を見た。


「伯父様も?」

「俺はあんたの家族をと言った」

「そうね、本当にありがとう。

コナー、伯父様は、」

「分かってる」


コナーが階段を上り少したってから、タイラーの泣き声が静かな邸の中に響いた。

私はワンピースをギュッと掴み握った。


「これで俺の用は済んだ」

「ありがとう。気をつけて帰って」


私は外まで見送った。

荷馬車の御者席に座った影は私を見下ろした。


「何かあれば手を貸す」

「貸し借りはもうないわよ」

「俺個人的に手を貸したい。だから俺はあの男の側にいる。何かあれば直ぐに教える」

「それは危険だわ、だからもう良いの。私は北の離宮で大人しく暮らすわ。だから貴方も奥様と息子さんを悲しませる事だけはしないで、良い?」

「ああ、分かってる」

「ジル、ありがとう。貴方がいて本当に良かった」


荷馬車が動き、闇に消えるまで見送った。


「お嬢」

「コナーはタイラーの側にいて。勿論、お父様とお別れした後で良いから」

「分かった」


私はコナーと一緒に邸の中に入った。


「ミーナ、貴女も疲れたでしょ?もう休んで」

「いえ、私はお嬢様の側にいます」


私はお父様の眠る寝室に入った。

ベッドの上に寝かされ、布に覆われたお父様の亡骸。ベッドのすぐ横に椅子を持ってきて座り私は祈った。

私には祈る事しか出来ない…。


お母様にも知らせの文は送った。お母様も覚悟をして帝国へ行った以上、この国に帰ってくる事はない。

それでもお母様の愛しい人を奪ってしまった…。お母様の兄を奪ってしまった…。


この日、人気のない邸の中で悲しみの声が響き、重苦しい空気が漂った。

皆が己を責め、己の力の無さを悔い、何も出来なかった己を許せなかった。

この先も自分を許す事はない。

何の罪のない人を死に向かわせ、自分は生きている。

私の手元に残った者は絶対に守る。

この命にかえても…




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