悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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67 弔い

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朝になり私は寝室の扉を開けた。


「ミーナ、マイラ」


ミーナとマイラはずっと扉の前に居てくれていた。


「ありがとう…」


私は客間に向かった。


コンコン


扉を開けたのはコナー。


「タイラーは大丈夫そう?」

「なんとかな」


私はタイラーの横に立った。真っ赤な目をしたタイラーが私を見上げた。


「タイラー、もう送り出しましょう。いつまでもここで眠らせていても伯父様も伯母様も安眠できないわ。安らかに眠ってもらう為にもきちんと弔いましょう」

「……うん」

「コナー、騎士達が来たらまた穴を掘ってほしいの。お父様の分と伯父様と伯母様が二人で眠れるように」

「分かった」


騎士達が来て使用人達の亡骸を昨日掘った穴に眠らせる。

コナーはお父様、伯父様伯母様を眠らせた。


邸に入ってきた馬車。オーガス侯爵が来たのだろうと思っていた。

馬車から降りて来たのは、


「タワーム公爵、どうして?」

「妃殿下、昨日夜遅く妻と息子に会いに来た者がいました。その者が言うには今日亡き人を自分達の手で送り出すと。ならば私もその一人になりたい、そう思いました」

「ありがとう公爵」


ありがとう、ジル…。


「今日は古くからの友人を一緒に連れて来ました」


馬車から降りる一人の男性。


「彼は今は息子に譲り隠居した身ですが、神に仕える教会にいました」

「だけど、」


男性は私の言葉を手で制した。


「どのような方であれ、どのような死に様であれ、生として産まれた以上死は皆同等に訪れます。そして私は神が与えた命を神に返す為に導きをする存在。

例え寿命であれ、罪人であれ、無実の罪であれ、神が命を授けた以上、弔い、神に返さないといけません。

魂を彷徨わせる事は出来ません」

「皆をお願いします…」

「ええ、それが私の役目ですから」


男性はお父様、伯父様伯母様、使用人達に弔いの言葉をかけた。


神のお導きを…、感謝致します……。


コナーがお父様の上に土を被せた。それから伯父様伯母様。騎士達は使用人達の上に土を被せている。

コナーはお父様の眠る所にお父様の愛用の剣を刺した。伯父様と伯母様の眠る所には狩りを趣味としていた伯父様の矢を、そして伯母様が付けていたネックレスを矢に巻き付けた。



「妃殿下、これから旅立たれるのですか?」

「ええ、これで心残りはないわ。

ありがとう公爵。貴方の友人を連れて来てくれて、本当にありがとう」

「妃殿下、これは私の意志。そして私に教えてくれたのも彼の意志。友人も己の意志。

貴女を助けたい、ただその思いだけです。皆、貴女に救われ、貴女に惚れた者です」

「でも彼は、」


私はまだお墓の前で祈ってくれている男性を見た。


「彼の教会が壊される時、幼い貴女が助けたんですよ」

「私が?」

「幼い貴女はお父上と一緒によく地方へ行っていましたよね?」

「ええ。お父様はいつも私を連れて行ったわ。何事にも自分の目で見て知れ、それがお父様の教育だったから」

「地方に行った時、寂れた教会を貴女の一言で救いました。

『ここは壊しては駄目よ、」

「「女神様が今心を休めているから。壊したら女神様の安らぐ所が無くなってしまうわ」」

「思い出したわ。教会に入った時、女神様がとても優しい顔で横になっている姿が見えたの。あの地を守る女神様が居なくなればあの地は荒れ地になる。そしてそこに住む者はそれを恐れていた。女神伝説が根強く残る地だったわ、確か」

「ええ、その通りです。貴女の一言で壊してはいけないと、今も寂れたままですが、それでも壊れずに立っています」

「あそこは壊れないわ。女神様の力が一番宿る場所だもの」

「彼はあれから貴女をずっと探していた。女神様から好かれた少女。そして私と縁があり少女が貴女だと知った。

皆、貴女と関わった者は自然と貴女を慕うようになる。貴女の言葉の力が皆の心を変えてしまう。貴女を救う為ならこの命さえ、そう思わせる。

上に立つ者の素質。導く者の器」

「公爵」

「ええ、分かっています。それは私の夢物語。貴女が望まない事はしません。貴女の望みを叶えるのが私が唯一出来る事ですから。

そしてそれは陛下への忠誠」

「ええ、そうよ」

「ならば私の思いも叶えて下さいませんか?」

「なに?」

「私に貴女と繋がる何かを、助けられる何かを、私に授けて下さい」

「貴方は貴方のままで、でもそれは貴方の望む答えではないのよね?

なら、タワーム公爵、貴方に私の願いを聞いてもらいます。

ルヴェンド公爵家、シャドネー公爵家、両家の領地を領民を貴方が私の代わりに守ってほしい。それが私の望む事です」

「しかと承りました」

「領民達が気掛かりだったけど、貴方なら任せられるわ。お願いね」

「はい」


お父様達の事、領民達を公爵に託し私は北の離宮へ向けて旅立つ。

もう戻る事が出来ない邸

最後に目に焼き付け、お父様達ともお別れをし、馬車に乗り込んだ。


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