悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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70 策

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マックス隊長と騎士達が去って行き、私は剣を鞘に戻した。

怒気を纏ったコナーの姿。


「阿呆が!戦いの場で背を向ければ死だと言われただろ!」

「ごめんなさい…」

「お前に剣を振る資格はない!とっとと剣を捨てろ!」

「次はしない」

「本当なら次はない。ジルに感謝しろ」

「うん、分かってる」


コナーは私を抱きしめた。


「お嬢が無事で良かった」

「うん、ごめんねコナー」

「剣を振るなら背は向けるな」

「うん、もう絶対にしない」

「で、どうすんだ。俺は逃げた方が良いと思うけどな」

「それは同感よ。もう一度練り直さないと」


タイラーは地面に座り地図とにらめっこを既に始めていた。


「ジル、さっきはありがとう、助かったわ。でもどうしてここに来たの?また私の監視?」

「違う、早く耳に入れた方が良いと思ってな」

「何かあったのね」


ボビーも加わりジルの話を聞く。


「皇帝からの書簡、実は4通目があった。あんたには見せなかったけどな」

「4通目には何て書いてあったの」

「王と第二夫人の首を落とす、そんな内容だ。それでだ、あの男はあんたの首を皇帝に差し出し手打ちにしようとしている。阿呆は今、あんたを殺す事しか頭にないからちょうど良いんだろう」

「子だって医師に見せれば直ぐに分かる事だわ。まぁ、その医師も狸の手の内なら偽装するのも造作もない事だけど」

「ああ」

「これは捕まったら最後ね。離宮へ行かなくても最後、行っても最後」

「お嬢どうすんだ」

「今はタイラー待ちね。マックス隊長は元々ジェイデン付きの騎士。ジェイデンはタイラーを一目置いていたから、その事は頭に入ってるはず。タイラーの裏をかいてくるわ」


今はタイラーを待つしかない。


「リリーアンヌ」


タイラーの声に皆タイラーの所に集まった。


「先ず、ミーナとマイラ、リリーアンヌの為に死ねる?」

「「勿論です」」

「ちょっとタイラー」

「リリーアンヌ、これしかないんだ。一度聞いてからリリーアンヌが判断すれば良い」

「分かったわ」

「向こうもここで僕達が待機するとは思ってない。今までは虱潰しに探していたのが探す場所が狭まり探しやすくなった。僕達がこのまま狩場を進むとは思えなくても、きっと狩場を探す隊を送る。

そしてきっと僕が次に進むとしたら馬を諦めて人が入らない道、獣道を進む。獣道を進めば離宮がある領地には入れるから。向こうも獣道を探す隊を送ると思う。

でも、木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中。人の中が一番隠れやすい。

ただ、リリーアンヌを確実に進ませるには囮が必要なんだ。コナーはその目立つ赤髪でリリーアンヌと行動を共にするのは危ない。だからコナーには獣道を行ってもらう。リリーアンヌの代わりとしてミーナかマイラを連れて。獣道を進む事は命がけだ。きっと一番騎士を多く割く。

で次にボビーは馬でミーナかマイラを乗せて違う道を行ってもらう。行商が使う道だ。そこにも騎士はいるだろうけど騎馬が多いと思う。囮になれば良いだけだから馬を走らせ駆け抜けてくれれば良い。

で僕とリリーアンヌは街の人混みに紛れる。いざとなったら僕が足止めするから、ジルと言ったよね?ジルがリリーアンヌを護って。僕は見捨ててくれて構わない。

それにジルとリリーアンヌなら気配を消せるだろ?人混みに紛れるのは造作もないよ」

「駄目よ!こんなの皆の命が危険だわ!」

「リリーアンヌ、なら離宮に行くのをやめる?僕はやめても良いよ。でもリリーアンヌは違うだろ?無実だと訴えるためにも離宮へ行こうとしてるんだろ?

ねぇ、リリーアンヌ、離宮へ行ってもきっと僕達は殺される。無実でも処刑されるって、僕達はもう身を持って知ってるじゃないか。なら最後の最後まで足掻きたい。

リリーアンヌを護る為に最後まで足掻きたい。リリーアンヌの無実を訴える為に僕達は命をかける」


タイラーの真剣な顔…。

タイラーの気持ちも、皆の気持ちも、そんなの、分かってる…。

皆、私の為に命をかける。

そんなの、分かってる。そんなの私が一番分かってる。


私は目を瞑った。涙を隠す為に目を、瞑った…。

皆の視線を感じる。私の答えを待っている。タイラーが考えた策は危険。でもこれしかない策。


だから

私一人で良い。犠牲にする命は私だけで良い。皆、今まで私に付いてきてくれた大切な人達だから。

だから

私一人で良い……



私は目を開けた。


「これでいきましょう」



私は皆が寝静まるまで待った。


ごめんね、ありがとう…


私は一人で行く。皆の命を危険に晒す訳にはいかない。


「リリーアンヌ」


後ろから声がかかり振り返る。


「どうして…」


皆が立っていた。


「リリーアンヌが考える事くらい分かるよ」

「タイラー…」

「リリーアンヌ、リリーアンヌはどうしたい?」

「皆を危険な目に合わせたくない。タイラーの策が危険だけど一番良い策なのは分かってる。でも、私一人の命で済むなら私だけで良い。だって、皆、私の大切な人だもの…。これからも生きてほしい、人、だもの……」

「うん。でもそれは僕達も一緒だよ?リリーアンヌは僕達にとって大切な人。そしてこれからも生きてほしい人。

だからリリーアンヌが後悔しない方が良い。僕達はリリーアンヌと運命を共にしたいんだ。だから死ぬ時は一緒だよ?」

「なら…」

「ん?良いよ、言ってごらん」

「なら…、皆と、一緒が良い。私の命が尽きる時、私は皆と一緒が良い」

「うん、そうしよう」


タイラーは私を抱きしめた。

私の瞳から涙がこぼれ落ちた…。



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