悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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71 それでも進むしかない

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朝日が出る前、まだ辺りが薄暗さを残す中私達は街の近くで身を隠した。

コナーは黒いマントを頭から被り、私も銀色の髪を隠した。

街を行き交う人混みに紛れ進む。人が度切れると一度路地裏を通り、また人混みに隠れる。


「姫、この先に騎士がいます」

「ありがとう」


街ゆく人混みに紛れ私の情報屋が教えてくれる。

路地裏で身を隠し時が過ぎるのを待つ。


「おい、そっちには居ないか?」

「ああ、こっちには居ない」


情報屋の一人で騎士、


「今はここに居るのね」

「はい。街の騎士団にも声がかけられました。貴女を血眼になって探しています」

「でしょうね」

「どうしますか」

「夜に抜けるしかないわね。夜の警備は?」

「今は日夜問わずです」

「そう…」

「抜け道があるとすれば荷の中に隠れるくらいですが、荷を念入りに確認します。ただ…」

「なに?」

「死者を乗せた荷馬車だけはそこまで念入りに確認しません。死者を冒涜する行為ですから」


神から与えられた命が尽きた時、魂を神に返す。命あるものは神が与えた器。魂の抜けた亡骸は弔い土へ返す。

今までご苦労さまでした、ありがとう

と、亡骸を眠らせる。亡骸は残される遺族に贈られる神からの最後の贈り物、そう言われる。神からの贈り物は神聖なもの、神聖なものを穢す事はしない。


「そうね…」

「お嬢、今は形振り構ってる時じゃない」

「だけど」

「ここは俺の出番だろ?」


気配なく現れたのは、


「コークス」

「俺に任せろ。裏にいけば遺体はゴロゴロある。浮浪者や名もなき者はまとめて葬られる。この先にそういう者達をまとめて葬る墓地がある」

「貴方…まだそんな事をしているの?」

「俺は生きる為に何でもやる。まあ、どうせ裏側に片足突っ込んでんだ、俺には神とか関係ない。

逃げるんだろ?手伝うぞ」

「逃げないわよ」

「だけどここから動きたいんだろ?どうせ捕まればあの世行きだ。俺もお前もな」

「それもそうね」


捕まれば私は名もない亡骸。捨て置かれるものになる。墓などない。まとめて葬られるもの。

コークスが用意すると言った遺体と同じ。


「コークス、お願い」


コークスは次の日、荷馬車に遺体を乗せて身を隠していた裏路裏にやってきた。

荷馬車に毛布に包まり寝転がる。ミーナとマイラは一緒に毛布に包まった。毛布に包まった私を護るように抱きしめたコナー。タイラー、ボビー、ジルも寝転がり布がかけられた。私達の上に遺体が置かれ荷馬車が走り出した。

途中途中、騎士達にコークスは止められ、遺体を見せた。墓地へ着き私達は降りる。


「ありがとうコークス」

「気をつけろよ。また何かあれば手を貸してやる」

「ええ、その時はお願いね」

「俺を捕まえないのか?」

「あら、私も今は罪人よ?」

「それもそうだな。生きてたらまた会おう。じゃあな」


墓地へ来た事で道がそれた。それからは人目を避けて進む。離宮へ向かう一本道の手前の領地。


「ここからは私とコナーだけで行くわ。この領地を越えたら離宮がある領地に入る。そしたら騎士達しかいないと思う。落ち着いたら必ず呼ぶから、だから今は身を隠して。ボビー後はお願い」

「分かりました」


皆、一緒に行きたいのは分かってる。それも伝わってくる。


「足の早い馬を調達しないといけないわ」

「それはもうご用意してあります」

「ボビー?」

「協力を頼める方から直々に早馬を調達しました」

「ウォルダー子爵だよ」


タイラーの声に私はタイラーを見た。


「私に手を貸せば子爵だって」

「それは大丈夫だよ。事情を話して間に商人を挟んだ。子爵は商人に売り、僕達は商人から買った。子爵は僕達が買ったとは知らなかった、そういう手筈はすんでる。

リリーアンヌ、これは君が今までしてきた事に対する皆の気持ちなんだ。アルバートが何を語ろうとリリーアンヌを慕う皆の気持ち。

“必ず生きろ”

それが皆が望む共通の気持ち。だから僕達は身を隠す。本当は一緒に付いて行きたい。でも足手まといなのも分かってる。リリーアンヌを護る為なら身を呈して命を差し出す覚悟もある。足止めくらいにはなるから。でもリリーアンヌは望まない。

僕達が斬られればリリーアンヌは足を止める。だから僕達はここで待ってる。僕達の事は気にしないで自分の事だけ考えてほしい」

「ええ」


私はタイラーを抱きしめた。


「必ず迎えに来るから、それまで待ってて。いつも私を支えてくれてありがとう。タイラーがいたから私はここまでこれたの」

「気をつけて」

「タイラーも。

ミーナ、マイラ、二人も気をつけて。いざとなったら逃げて」

「お嬢様も気をつけて」

「リリーアンヌ様、必ず呼んで下さい。それまでお待ちしています」

「ええ。ボビー、皆を頼めるかしら」

「はい、今は亡き私が最も敬愛するお方の姫君の頼みです。私が3人を護ります」

「お願いね。ジル、貴方には別に頼みたい事があるの。ローレン隊長に話していたのを聞いていたわよね。探し出して今の状況を兄様に伝えてほしいの。きっと騎士が多くて兄様達も足止めをされてるわ。探し出すのは困難かもしれない」

「分かった」

「気をつけて」

「あんたもな」



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